2012年、若手バレエダンサーの登竜門として世界的に知られるローザンヌ国際コンクールで17歳の時に1位に輝き、一躍時の人となった菅井円加。日本人離れした、たぐいまれなるフィジカルの強さと自然体の演技力を持ち味に、14年に名匠ジョン・ノイマイヤー率いるハンブルク・バレエ団に入団。19年からは最高位のプリンシパルとして圧倒的な存在感を放っていただけに、昨秋ボストン・バレエ団へ電撃移籍を果たした時にはバレエ界に激震が走った。
「芸術監督のジョン(・ノイマイヤー)の退任をきっかけに、私も冒険したいという想いが湧き起こったんです。大好きなバレエのはずなのに全然ハッピーじゃなくなってしまって。自分が楽しくないと踊りにも表れてしまうから、これはもう外に出るサインだなと」
ダンサーとして円熟期になる30代で守りに入ることなく、あえて新天地で挑戦することを選んだ。
「入団してまだ4カ月ですが、いろんなことに挑戦させてもらえて毎日が楽しいです。メンバーの雰囲気もよく、みんなハードワーカー。リハーサルに時間をかけるカンパニーだから、始まりが早くて終わりも遅く、拘束時間が長い。慣れるまでが大変でした」
ハンブルク時代の恩師、ノイマイヤーは、人間心理を追求する作品を数多く手掛けているが、そんな彼からの教えは、現在でも表現者としてどう踊るべきかの軸に。
「ジョンは人間らしさをとても大切にしている人。日によって演じるキャラクターに対する解釈が変わることがありますが、ダンサーの感情の変化を尊重してくれる彼は、それを踊りに反映させるよう指導してくれました」
菅井の舞台でのリアルな感情表現は、その時々の自身の感情に耳を傾けることから引き出され、役を生きることにつながっている。
「彼の作品はストーリー性があるものが多く、それを表現するのがダンサーの醍醐味。アメリカではストーリーを伝えることはそこまで求められていないように感じますが、ハンブルクで培ってきた私らしさを活かしつつ、ボストンのスタイルも取り入れて、こんな踊り方もあるんだなと印象付けることができたらうれしいです」
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踊りで観客とつながった瞬間、自分が生きていると実感する
菅井の魅力を語る上で、忘れてはならないのが脚の強さだ。上体がしなやかであるほど、強靭な脚から繰り出される超絶技巧は深みを増し、唯一無二の個性になっている。余韻のある踊り方や、音の情感を表現する豊かな音楽性もまた彼女ならではのスキルだ。1月に客演したウクライナ国立バレエの新春公演『ドン・キホーテ』でも、高い跳躍と緩急ある脚さばきを披露して観客を大いに沸かせた。彼女ほど雄弁に脚で表現を試みるダンサーはいないが、菅井は必ずしも万能ではないと謙遜する。
「本当はピルエット(回転)に苦手意識があるのですが、少しでも舞台で思いきって楽しく踊れるよう日々のクラスを大切にしています。一度大きなケガをしたことがありますが、いまもたくさん踊り続けられることができているこの強い身体に生んでくれた、私の両親に心から感謝しています」

一方で、共感できる人物像を描く表現力は人間観察の賜物だ。
「人の表現の仕方を観察するのが好きで、普段のリハーサルはもちろん、映画やドラマも研究対象。目配せひとつでも印象が変わるから演技は奥深いです。インスパイアされた動きを実際に舞台に取り入れて試すようにしています」
活動の拠点をボストンに移してからは、『ジュエルズ』『くるみ割り人形』で大役を務め、早くも頭角を現した。バレエ団の公式ホームページでは、「踊りは素晴らしい言語」という菅井の興味深い言葉が紹介されているが、彼女にとって踊ること、表現することは人とつながるツールでもある。
「違う自分になって踊るのは最高に楽しい時間。観客の方とつながった瞬間、このために生きてきたんだと実感します。新しいレパートリーが控える今年は挑戦の年。日々自分に挑戦して、より進化した自分になりたいです」
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WORKS
舞台『ドン・キホーテ』

今年1月、ハンブルク時代の同僚アレクサンドル・トルーシュとともにウクライナ国立バレエの日本公演に再びゲスト出演。片手リフトなど高難度の技を多く組み込んだ、疾風感あるエネルギッシュな演出も大きな話題に。
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舞台『The Sleeping Beauty』
ボストン・バレエ団の2025〜26年のシーズン中、5月28日〜6月7日にはアシュトン版『眠れる森の美女』が3年ぶりに上演される(全12公演)。キャスティング詳細は、ボストン・バレエ団ホームページにて後日発表予定。
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舞台『パリの炎』
フランス革命が舞台の作品で、K-BALLET TOKYOの芸術監督・宮尾俊太郎による初の全幕プロダクション。菅井は6月13日、14日の東京公演に主役で出演する。東京Bunkamuraオーチャードホールにて5月23日より開幕。











