【厚さ10㎜以下の薄型パーペチュアルカレンダーの腕時計3選】ヴァシュロン・コンスタンタンからオーデマ ピゲ、ジャガー・ルクルトまで、デイリーに使いこなす複雑機構

  • 写真:渡邉宏基(LATERNE)
  • 文:並木浩一
Share:

いま注目すべき腕時計をデザインの視点から切る、雑誌『Pen』で好評連載中の「並木教授の腕時計デザイン講義」。今回のテーマは「厚さ10㎜以下の薄型パーペチュアルカレンダー」。知性とエレガンスを内に秘めた、デイリーに使いこなす複雑機構“パーペチュアルカレンダー”に注目!

FB-watch_01_078ok.jpg

機械式時計の複雑機構は、長らく厚みと切り離せない存在であった。パーペチュアルカレンダーはその筆頭格。大小の月や閏年を自動的に判別し、1世紀にわたって修正を必要としないこの機構は、数百の部品が幾層にも重なる精緻な構造を持つ。そのためケースは必然的に厚くなり、重厚さこそが複雑時計の威厳とされてきた。

だが近年、この常識が鮮やかに書き換えられている。設計技術や工作精度の飛躍的な向上により、ケース厚が10㎜を切る薄型パーペチュアルカレンダーが次々と誕生しているのだ。複雑機構と薄型化という、一見相反する要素が見事に両立され始めたのである。

この変化がもたらすのは、単なる“記録更新”という技術競争の成果にとどまらない。薄型化されたパーペチュアルカレンダーは、これみよがしに誇示するための道具でも、コレクションケースにしまって眺めるだけの特別な存在でもない。袖口にすっと収まり、オフィスから週末のレストランまでデイリーに使いこなす相棒となる。外見は端正なドレスウォッチの佇まいでありながら、その内部には悠久の時を刻むインテリジェンスを秘める。静かな気品と奥行きを備えた、現代的なエレガンスといえるだろう。さらにスポーツウォッチの構造を採るモデルであれば、アクティブな場面にも平然と寄り添ってくれるはずだ。

技術革新がもたらした複雑時計の実用化は、文化的な解放でもある。重厚さを捨てて軽やかに時を纏う選択は、知性を備えた大人にこそふさわしい。

---fadeinPager---

1.VACHERON CONSTANTIN(ヴァシュロン・コンスタンタン)
トラディショナル・エクストラフラット・パーペチュアルカレンダー

FB-watch_01_078ok1.jpg
自動巻き、18KPGケース、ケース径36.5㎜、パワーリザーブ約40時間、シースルーバック、アリゲーターストラップ、3気圧防水。¥15,576,000/ヴァシュロン・コンスタンタン TEL:0120-63-1755

ケース厚わずか8.43㎜という驚異的な薄さの中に2100年まで調整不要な永久カレンダー機構を収めた。超薄型「Cal.1120 QP」を搭載することで、複雑機構でありながらも外観は端正。メゾンの伝統的なドレスウォッチの美学を崩すことなく、高度な機構を静かに共存させた。シャツの袖口に自然に収まる薄さは、日常のビジネスシーンでこそ真価を発揮する。

---fadeinPager---

2.AUDEMARS PIGUET(オーデマ ピゲ)
ロイヤル オーク パーペチュアルカレンダー

FB-watch_02_132ok.jpg
自動巻き、SSケース&ブレスレット、ケース径41㎜、パワーリザーブ約55時間、シースルーバック、50m防水。価格未定/オーデマ ピゲ ジャパン TEL:03-6830-0000

ラグジュアリースポーツのアイコン「ロイヤル オーク」に、パーペチュアルカレンダー機構を搭載した自社製「Cal.7138」を組み込み、ケース厚を9.5㎜に抑えた。スポーツウォッチとしての力強い造形を保ちながら、複雑機構を高次元で融合させている。5つの特許を保有するメカニズムにより、すべての表示をリューズのみで調整可能。まさに、デイリーに使える複雑時計の到達点だ。

---fadeinPager---

3.JAEGER-LECOULTRE(ジャガー・ルクルト)
マスター・ウルトラスリム・パーペチュアルカレンダー

FB-watch_03_094ok.jpg
自動巻き、SSケース、ケース径39㎜、パワーリザーブ約70時間、シースルーバック、アリゲーターストラップ、5気圧防水。¥4,928,000/ジャガー・ルクルト TEL:0120-79-1833

厚さ9.2㎜のスリムなケースに収められたのは、約70時間のロングパワーリザーブを誇るマニュファクチュール製「Cal.868」。週末に外していても、週明けに時刻を合わせ直す必要はない。カレンダー表示とムーンフェーズはケース側面のシングルコレクターで調整可能。整然とした表示と実用性を兼ね備えた設計は、ジャガー・ルクルトらしい技術力を静かに物語る。

namiki_photo.jpg

並木浩一
桐蔭横浜大学教授/時計ジャーナリスト

1961年、神奈川県生まれ。1990年代より、バーゼルワールドやジュネーブサロンをはじめ、国内外で時計の取材を続ける。雑誌編集長や編集委員など歴任し、2012年より桐蔭横浜大学の教授に。ギャラクシー賞選奨委員、GPHG(ジュネーブ時計グランプリ)アカデミー会員。著書に『ロレックスが買えない。』など多数。

関連記事