YouTubeの音楽オーディション番組「第2回 音楽深化論 〜the battle〜」で審査員満場一致で優勝し、いま大きな注目を集めている古山菜の花。90年代に「さよなら人類」で世間を沸かせたロックバンド、たまに通じる奇妙な雰囲気から、〝令和のたま〟とも称される彼女だが、その世界観は独特だ。
「小学生の時、楽器を始めるきっかけとなったのが、母親が持っていた、たまのアルバム『さんだる』でした。『さんだる』にはさまざまなテイストの楽曲が詰まっていて、曲によって歌い手も違う。まるで〝おもちゃ箱〟をひっくり返したみたいで、子どもながらに衝撃を受けたのをいまでもよく覚えています」
その小学生時代にギターを始め、曲づくりをスタート。高校生になるとバンドも組んだ。本人いわく「私の声は、丸っこくて、バンドの音に混ざって遠くまで届きにくい」。そこで好きなシンガーを手本に、歌い方を研究した。
そうやって独自性を得た歌声に乗って届く、歌詞の世界もユニークでクセになる。音楽深化論で披露した「もののけはいないよ」は、祖母の家によく出るという幽霊が着想源。「嫌太郎」は、幼少期から嫌なことをなんでも聞いてくれるイマジナリーフレンドが主題だ。また「ラブホテルで働くということ。」では、ラブホテルの清掃員として働く自身の経験が歌になった(そのラブホテルでの仕事日記は、noteで公開中だ)。多くは自身の体験から紡がれる言葉。かつて、たまがそうであったように、日常に潜む奇妙で愛おしいものや瞬間を、古山はそうやって歌であらわにする。
少し変わった人と言われないか?失礼ながら、そう尋ねると「意外と、みなさんイマジナリーフレンドがいるようで、必ずしも私のようなタイプが少数派というわけではない気もします。実際に音楽深化論をきっかけに、たくさんの方に楽曲を聴いてもらえるようになりましたが、『私もそう!』みたいな声をよくいただきます。ラブホテルでのバイトの日々を歌にしたのも、そういった世界を底辺とみなすような社会構造を批判したいわけではなく、『こういう世界もあるんだよ』と紹介したかったから。肯定でも否定でもなく、純粋に出会ったものやそこで感じたことを伝えたいという気持ちで、歌をつくっています」
音楽は系統問わず、なんでも好き。JーPOPやKーPOPも聴くし、またアイドルソングにハマった時期もあったという。
「たとえば、でんぱ組・incとか。またマキシマム ザ ホルモンや、すかんち、クリープハイプにも憧れました。そういう意味では、いろんな人に影響を受けていると思いますし、ある日突然、でんぱ組のような歌を歌い出す可能性もあります(笑)。その時は『ああ、いまはそういうタイミングなんだ』と、一緒に楽しんでいただければ嬉しいですね」
自身のYouTubeチャンネルで公開しているリリックビデオでは、自作のアニメーションも取り入れている。昔から絵を描くのも好きで、幼少期には『ゲゲゲの鬼太郎』にハマり、グッズ代わりに自分で描いた絵を持ち歩いていたそうだ。
「CDなどのフィジカルなものにも憧れますが、こうした映像も、私の大切な作品。毎回、曲づくりと同じくらい時間をかけて制作しています。今年は新曲を月イチくらいのペースで発表していこうと考えていますが、できる限り、映像作品も一緒に見せていきたいと思っています」
高校の友人と結成したバンドのアホーエレクトロニクスでは、ソロとはまったく違った音楽性が表現されていて面白い。古山はたまのアルバムを〝おもちゃ箱〟にたとえたが、自身の音楽もまた、多様で豊かな広がりを見せる。古山菜の花という、令和に現れた新しい音楽の〝おもちゃ箱〟。その蓋は、まだ開いたばかりだ。
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PICK UP
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PERSONAL QUESTIONS
いま、ハマっていることは?
民族楽器を見ること。元たまの知久寿焼さんにお会いした時、知久さんがとても民族楽器に詳しくて。もともと興味があったものの、話を聞いているうちにハマってしまった感じです。
最近、感動して泣いたのは?
知久さんとはSNSで連絡をもらい親しくさせていただいているのですが、初めていただいたDMの文面が、本当に知久さんが喋っているように見えて。読みながら泣き崩れました(笑)
いま、会いたい人は?
ラブホテルの仕事で同僚の、80代のおばあちゃん(noteの「ラブホテルで働くということ。」では「黄瀬さん」の名で登場)。仲良しですが、シフトの都合で最近会えず。元気かなって。
改めて勉強したいことは?
バンドサウンドの基礎。構成や音づくりをきちんと勉強し直したいです。これまで友人たちと好きなようにやってきましたが、今後を見据えて、自分自身しっかり知っておくべきだと。
いま注⽬したい各界のクリエイターたちを紹介。新たな時代を切り拓くクリエイションと、その背景を紐解く。




