ジャガー・ルクルトが2026年に掲げたテーマは「発明の渓谷」。スイス・ジュウ渓谷という過酷な土地が育んだ創意工夫と精度への執念を背景に、新作コレクションが披露された。クロノメーターの進化から超複雑機構、さらには工芸表現まで、6つの新作を通してその現在地を紐解く。
1.マスター・コントロール・クロノメーター


右:マスター・コントロール・クロノメーター・デイト /自動巻き、18KPGケース&ブレスレット、ケース径38㎜、パワーリザーブ約70時間、5気圧防水。¥9,240,000
精度というテーマを最もストレートに体現するのが本作だ。新たに導入された「HPG(High Precision Guaranteed)」は、従来の試験をさらに押し広げた独自基準。高度や衝撃、姿勢差、温度といった日常環境を複合的に再現し、精度を検証する点に革新がある。今回紹介するパーペチュアルカレンダーとデイトに加え、デイト・パワーリザーブを含む全3種で展開される新世代ムーブメントは、精度だけでなく装飾にも抜かりがない。ペルラージュや面取りが施された仕上げに加え、ブルーグレーやブロンズトーンのダイヤルがモダンな表情を添える。クラシックな外観に、現代の技術思想が静かに重なる一本だ。
2.マスター・ハイブリス・インベンティバ・ジャイロトゥールビヨン・ストラストフェア
精度追求の頂点として提示されたのが、3軸構造のジャイロトゥールビヨンだ。3つのケージが異なる速度で回転することで、あらゆる姿勢差を補正し、理論上98%の環境で精度を維持する。189個の部品からなるこの機構は、わずか0.78gという軽量化も達成。さらにシリンダー型ヒゲゼンマイを採用することで、振動の安定性を高めている。加えて、摩擦を抑えるセラミック製ボールベアリングの採用など、細部に至るまで精度向上のための工夫が凝らされている。ブルーエナメルとギョーシェ彫りが織りなすダイヤルの奥で、複雑機構が有機的に動く様は圧巻。技術と造形が完全に一致した、象徴的な一本といえる。
3.マスター・ハイブリス・メカニカ・ウルトラスリム・ミニッツリピーター・トゥールビヨン
超薄型とハイコンプリケーションの融合という難題に挑んだのが本作だ。厚さわずか8.25㎜のケースに、ミニッツリピーターとフライングトゥールビヨンを一体構造で収めるという離れ業を実現している。サファイアブリッジによるオープンワーク構造は、593個の部品が織りなす動きを余すことなく露出。さらにペリフェラルローターの採用により、巻き上げ効率と薄さを両立した。音響面でも、サイレント・タイムラプス・リダクション機能により、時・分を告げる打鐘の間に生じる無音の“間”を短縮し、チャイムの流れを滑らかに整える。視覚、音、構造のすべてが高度に統合された、まさに完成形と呼ぶべき一本だ。
4.マスター・グランド・トラディション・トゥールビヨン・ジャンピングデイト
伝説的キャリバー978を再解釈した本作は、過去の実績と現代的な美学を結びつけるモデルである。特徴的なのは、トゥールビヨン開口部を避けるように配置されたジャンピングデイト機構。日付が瞬時に切り替わる動きが、機構そのものの魅力を引き立てる。ブルーエナメルのバーリーコーン模様ダイヤルに、オープンワークの24時間ディスクが重なり、奥行きある構成を生む。さらにダイヤル各所に設けられた開口部からは、カレンダー機構や歯車の動きが覗き、視覚的なリズムを生み出す。60点の部品で構成されるケースや、手仕上げのブリッジが、伝統的な高級時計の美意識を強く感じさせる仕上がりだ。
5.レベルソ・トリビュート・エナメル・葛飾北斎 諸国瀧巡り – 東都葵ケ岡の滝
芸術性の領域に踏み込むのが、この北斎シリーズの完結編だ。本シリーズは、江戸後期の浮世絵師・葛飾北斎の連作から滝をモチーフに選び、絵画として時計に落とし込んだもの。ケースバックには『諸国瀧巡り』の名作が、グラン・フー・エナメルで再現される。わずか数センチ四方に描かれる風景は、80時間以上の工程を経て完成する。表ダイヤルには異なるギョーシェ模様を施し、半透明エナメルを重ねて深い色彩と奥行きを実現。なかでも「東都葵ケ岡の滝」は、水の勢いと静謐な構図の対比が印象的で、エナメルの層が奥行きを際立たせる。時計でありながら、芸術作品として成立する稀有な存在だ。
6.レベルソ・ワン・ハイビスカス・ローザ
自然の情景をテーマにした新カプセルコレクション「ラ・ヴァレ・デ・メルヴェイユ―神秘の谷」からは、詩的なモデルが登場した。「レベルソ・ワン・ハイビスカス・ローザ」は、南国の花をモチーフに、裏面にシャンルヴェ・エナメルで描かれた鮮やかなモチーフが広がる。さらにダイヤモンドとサファイアによる繊細なセッティングが重なり、光の粒子が舞うような立体感を生み出している。表ダイヤルにはマザー・オブ・パールを採用し、控えめながらも奥行きある光を放つ。自然の移ろいを閉じ込めたような表現は、ジュウ渓谷の風景ともどこか重なる。装飾と物語が静かに響き合う、レベルソの新たな一面である。
ジャガー・ルクルト
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