藤本壮介が語るガウディの魅力、“自然のありよう”に近づこうとした葛藤に共感

  • 写真:土田 凌
  • 文:久保寺潤子
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ガウディの手掛けた建築は、いつの時代もクリエイターの創造力を刺激してやまない。その魅力に出合った3人が、それぞれの立場から奥深い側面について語ってくれた。本記事では、Pen最新号『ガウディとサグラダ・ファミリア』から、建築家の藤本壮介が示唆したガウディの現代性について、一部抜粋して紹介する。

アントニ・ガウディが没後100年を迎える2026年、サグラダ・ファミリア教会のメインタワーがついに完成した。ガウディが残したメッセージを紐解くことが、大きな転換期を生きる我々にとって、未来への道標になるはずだ。

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世界の多様性と格闘した、ガウディの現代性

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藤本壮介●建築家。1971年生まれ。東京大学工学部建築学科卒業後、2000年に藤本壮介建築設計事務所設立。東京、仙台、パリ、深圳にオフィスを構え国内外の建築プロジェクトを手掛ける。25年、大阪・関西万博の会場デザインプロデューサーを務めた。

藤本が初めてガウディを知ったのは、中学生の時に父親の書斎で見た二川幸夫撮影によるモノクロの写真集『ガウディ』だ。

「写真集を見た時、建築というのは『人が設計してつくっているものなんだ』と認識したんです。そこには自分がまったく知らないクリエイティブな世界がありました」

その後、大学で建築を専攻した藤本は大学4年生の時にヨーロッパへ建築を巡る旅に出た。

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1966年に出版された写真家・二川幸夫による写真集『ガウディ』(鹿島研究所出版会)。藤本の実家にはいまも大切に保管されている。モノクロームで撮影された重厚な写真が、有機的で波打つようなガウディ建築の迫力を伝える。見開きになったサグラダ・ファミリア教会の写真(右)も圧巻。

「当時はコルビュジエやミース・ファン・デル・ローエといったモダニズム建築に興味があったので、ガウディへの熱い気持ちは収まっていたのですが、それでも主要な建築はひと通り巡りスケッチしました」

旅行中に持ち歩いていた膨大なスケッチブックの中には、コロニア・グエル教会やグエル公園などガウディ建築が描かれている。

「バルセロナのガウディ建築のなかでも、コロニア・グエル教会の半地下の空間が特に記憶に残っています。管理人に照明を消してもらい、自然光がつくり出す柱の陰影を眺めながら逆さ吊り模型のことを想像していました」

近代建築の流れのなかで、ガウディの存在は独自の存在感を放っていると藤本は続ける。

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大学生の時にフランス、イタリア、スペインなどヨーロッパ各地の建築を巡った際に描いた、ガウディ建築の装飾の詳細スケッチ(左)と、訪ねるべき建築をリストアップしたスケジュール表(右)。「ガウディ建築は、同時代の近代建築のメインストリームとは完全に一線を画していると感じました」

「造形と色彩が際立っていて、密度が濃い。逆さ吊り実験による懸垂曲線も、初期の建築は綺麗なアーチを描いていたけれど、次第に複雑な幾何学を交えて、荒削りにも見えるような有機的なものに変化していった。頭で考えているだけでは到底出てこない複雑さが内在しています」

改めてガウディの建築には、現代性を感じるという。

「近代は世界の複雑さを水平・垂直のシンプルなかたちによって整理しようとした時代です。合理的ではあるけれど、そこには取りこぼしてきたものがたくさんある。それこそが多様性であり、豊かさであり、現代の僕たちに課された問題なんです」

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コロニア・グエル教会のスケッチ。照明を消してもらい自然光で陰影を観察した。荒削りな造形に目を奪われたという。「ここで初めて逆さ吊り模型がつくられたことに思いを巡らせました」
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グエル公園のスケッチ。幾何学的な計算だけでは成り立たない複雑な様相に、自然と対峙するガウディの苦悩を見た。「デコボコした石の組み方には認識不可能なものとの格闘を感じます」

合理主義が世界を席巻している現代において、ガウディはその考えとは対極にいると藤本。

「ガウディは手を動かしながら世界と格闘して存在の真理をつかみ取ろうとしていた気がします。本当の意味での世界の豊かさや多様さ、認識不可能な自然の力を建築に落とし込もうとした。タイルを砕いたり貼ったりすることで、身体で知覚しながらその瞬間にしか生まれ得ないものに向き合っている姿勢を感じます」

自然の多様さや複雑さに比べると、人間のつくるものはあまりに単純であると藤本は感じている。

「ガウディは自然を表面的に模倣するのではなく、〝自然のありよう〟そのものに近づけないかと考えたはず。そこには建築家としての葛藤があり、僕も共感するものがあります」

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