【パリ発、ファッション最前線】TAAKK、シュタイン、コモリ──。日本のメンズブランドが、いまヨーロッパで支持を集める理由

  • 写真・文:ジスマヌ・レベッカ(Pen International)
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日本のメンズファッションが、いま世界的な評価を集めている。縫製や素材、シルエットに宿る精度の高さは、ヨーロッパやアメリカのそれと並び、あるいは凌ぐ存在として語られ始めている。

背景にあるのは、単なる技術力だけではない。素材開発から着続けたときの変化に至るまで、服をめぐる考え方そのものが、いま改めて注目されている。

2026年秋冬パリ・メンズファッションウィークの公式カレンダーには、日本ブランドが15組参加し、全体の22%を占めた。ヨーロッパにおいても、日本は現代のメンズワードローブにおいて欠かせない存在となっている。精密なテーラリングと上質な生地は高く評価される一方で、ヨーロッパでは多くの工場が閉鎖され、生産体制は年々制約を受けている。

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2026年秋冬パリ・メンズファッションウィークで、TAAKKは高い創造性を感じさせるアイテムを発表した。左は立体的な刺しゅう、右はコットンからウールへとグラデーションのように変化する生地を使ったもの ©️Courtesy of TAAKK

また、こうした海外市場への広がりは、コム デ ギャルソン、ヨウジヤマモト、イッセイ ミヤケといった象徴的なブランドとはやや異なる文脈で進んでいる。パリのファッションウィークで発表されたTAAKKのショーは、その変化を示す一例だ。立体的な刺繍や、コットンからウールへと徐々に移ろうグラデーション生地など、革新性を保ちながらも、現実的な魅力を備えたコレクションが提示された。

2022年にパリでオープンしたセレクトショップ、ランデヴー ストア パリでは、メンズの取り扱いの約60%を日本のブランドが占めている。共同創業者のマルク・リョレンスは、「私たちにとってメンズファッションは日本にある」と断言する。顧客が特に惹かれているのは、他にはない素材や生地であり、たとえばキャプテン サンシャインの柔らかなカシミヤなどが挙げられる。

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卓越したテキスタイル職人の存在

日本のデザイナーは、職人技と伝統技術、さらに最先端のテクノロジーを併せ持つ素材メーカーに支えられている。素材は糸の段階から、仕上げや加工に至るまで丁寧に開発される。近年では機能性も重要な要素となっており、夏は涼しく冬は暖かいといった快適さが求められる。それらすべてを高い品質と繊細さで実現している点に、日本のテキスタイルの技術の高さが表れている。

もちろん、機能性や快適さだけでは、日本のファッションの魅力は語りきれない。ランデヴー ストアのもう一人の共同創業者、オリヴィエ・サレットは、そこに「感情」と呼べる要素が加わることが重要だと語る。日本のデザイナーはヴィンテージやワークウェアから着想を得ており、ヨーロッパの服に比べてややゆとりのある、現代的なシルエットを特徴とする。素材は時間とともに風合いを深めるよう設計されており、長く着続け、受け継がれていくことを前提としている。流行に左右されない服である。 

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ランデヴー ストアのコミュニケーションマネージャー、アヴェリー・ナマンはここで、スティル バイ ハンドの「Star Blouson」(490ユーロ)に、HATSKIのセルビッジデニム(335ユーロ)を合わせて着用。このデニムは自身で着込み、風合いを出している。足元はフランスのパラブーツ(300ユーロ)

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必ずしも容易ではない国際展開

とはいえ、すべての日本人デザイナーが海外進出を志向しているわけではない。多くのブランドが、その一歩を踏み出すまでに時間をかけている。コモリもその一例で、ランデヴー ストアの二人は2014年、フランス南部トゥールーズに最初の店舗を開いた数カ月後、日本でこのブランドに出会った。当時、世界でもごく初期の取扱店の一つだったが、最初のコレクションはわずか2週間で完売した。10年を経た現在も、コモリはスティル バイ ハンドや、近年加わったシュタインと並び、同店の主力ブランドであり続けている。

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ランデヴー ストア パリでは、世界各地の優れたデザイナーを丁寧にセレクトしている。ここでは、ロサンゼルス発のブランド、Lady WhiteのTシャツとジップアップのウールブルゾン(115ユーロと530ユーロ)に、シュタインのショーツ(420ユーロ)を合わせている。

 シュタインは、2026年のLVMHプライズのセミファイナリストに選出される以前から高い評価を得ていた。この人気についてマルク・リョレンスは、浅川喜一朗によるユニセックスな視点に理由があると見る。女性客がメンズのニットやコートを好んで購入するケースも多く、その流れを受けてレディースラインもパリ店に導入された。シュタインは2025年にファッション・プライズ・オブ・トーキョーを受賞しており、パリでのショーやショールーム開催の支援を受けている。この賞は、すでに一定の国際的評価を得ているブランドに贈られることが多い。 

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シュタイン2026年秋冬コレクションのファーストルック。女性モデルはニットとコートを着用しており、どちらもブランドの中でも特に人気の高いアイテム。女性の顧客にも広く支持されている。

一方、東京ファッションアワードは、まだ海外で広く知られていないものの、高い潜在力を持つ日本ブランド8組に毎年授与される。受賞ブランドは、パリ・ファッションウィーク期間中に開催される「showroom.tokyo in Paris」でコレクションを発表し、海外展開を目指す。2026年1月の展示では、ANTHEM A、kiminori morishita、MATSUFUJIといったメンズブランドが注目を集めた。

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新世代のクリエイターをどう伝えるか

年は初めて、これらのブランドのアイテムが、パリの老舗百貨店プランタン・オスマンのメンズ館にオープンしたコンセプトスペース「ELEVASTOR PRINTEMPS」で開催されたポップアップ「TOKYO FASHION AWARD POP UP EVENT in PARIS」として販売された。一般社団法人日本ファッション・ウィーク推進機構の事務局長、古茂田 博は、海外で成功するためには独自性だけでなく、実際に顧客と接点を持つことが重要だと話す。特に課題となるのは、日本と異なるサイズ展開や価格設定だ。

 

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2025年および2026年のTOKYO FASHION AWARD受賞ブランド8組によるポップアップ。2026年1月20日から31日まで、パリのプランタン・オスマンで開催された。©️Courtesy of TOKYO FASHION AWARD

「実際に店頭に並べてみると、予想以上に売れることもあれば、自信のあった商品が思ったほど反応を得られないこともある」と彼は言う。「バイヤーによる事前の買い付けだけでは見えない部分を、店頭での実体験を通して知ることができる。それが次に何を作るべきかを考える上で重要になる」

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一般社団法人日本ファッション・ウィーク推進機構の事務局長、古茂田 博。2026年秋冬ウィメンズファッションウィークの期間中、3月5日にパリで開催された「showroom.tokyo in Paris」にて撮影。

売上はブランドの認知度にも大きく左右されるため、「TOKYO FASHION AWARD POP UP EVENT in PARIS」は当初の目標には届かなかった。今後はコミュニケーション戦略がTOKYO FASHION AWARDの活動における重要なテーマとなる。業界関係者の間では、「showroom.tokyo in Paris」はすでに新世代の日本人デザイナーに出会う場として定着しているが、今後はポップアップにも同様の注目を集める必要がある。次回は2026年6月のファッションウィーク期間中に再び開催される予定だ。

それまでの間、美しい服を求める人はランデヴー ストア パリの店舗やオンラインショップを訪れてみるといい。マルク・リョレンスとオリヴィエ・サレットが長年培ってきた審美眼によって選ばれた新作が、毎週入荷している。

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ランデヴーストアの共同創業者、オリヴィエ・サレット(左)とマルク・リョレンス(右)。2026年3月、パリの店舗前にて撮影。彼らはセレクトの顔としても知られ、オンラインストア用の撮影にも頻繁に登場する。小規模なチームですべての制作を内製している。オリヴィエ:ベルグファベル(イタリア)のシャツ、YLÈVEのジーンズ、YOKO SAKAMOTOのシューズ。マルク:コモリのジャケットとTシャツ、ATONのニット、HATSKIのジーンズ(ブランド初期または2シーズン目のもの。本人が着込み風合いを出している)、ROTOTOのソックス、J.M. WESTON(フランス)のローファー。