【世界遺産に宿泊】奄美大島の記憶から生まれた「SANU」の新建築「ARC」がオープン

  • 文:今井未央
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奄美大島に誕生した、新たな建築モデル「ARC」。

海に向かって弧を描く屋根が、奄美の空に浮かぶ。メンバーシップ制セカンドホームサービスを手がける「SANU 2nd Home」が、新拠点「SANU 2nd Home 奄美大島1st」を開業。新たな建築モデル「ARC」が姿を現した。

「SANU」といえば、蜂の巣を思わせるハニカム構造をモチーフにした「BEE」、木の実から着想を得た「MOSS」、光を取り込む開放的な空間設計を備えた「RAY」など、国産木材を可能な限り使用した特徴的な木造建築を手がけてきた。

今回誕生した「ARC」は、自然との共生をテーマに活動する建築ユニットSUEP.とともに設計。奄美に息づく伝統的な知恵を生かしながら、自然環境への負荷を最小限に抑える設計を軸に、風や湿度といった土地固有の条件に応答する高床式建築を実現した。

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奄美大島の“知恵”を受け継ぐ、高床式の新建築「ARC」

「ARC」モデルの起点は、「高倉」と呼ばれる奄美大島の伝統的な高床式倉庫にあるという。亜熱帯の気候に属するこの地では、湿気を避けるために床を持ち上げ、通気性を高める工夫がなされてきた。今回「SANU」はこの知恵を採用。窓から望む海の景色を織り込みながら、高いもので4mに及ぶ高床構造を取り入れた。地面との距離を確保することで、地表の植生や環境への負荷を抑え、周囲の自然と共存する構造となっている。

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奄美大島の伝統的な高床式倉庫。

台風の通り道でもある奄美大島では、屋根の形状が建物の強度に直結する。そこで行き着いたのが、弧を意味する「ARC」という名の由来にもなった、緩やかな曲線を描く屋根。SUEP.が得意とする環境シミュレーションを用い、60に及ぶケーススタディを経て導き出されたこの曲線は、風圧を受け流しながら室内のエネルギー効率を高める最適解だという。

海に向かって弧を描くその大胆なフォルムは、島に浮かぶ船やサーフボードの曲線とも呼応し、存在感を放ちながらも自然と風景に調和する。 

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緩やかな曲線が特徴的な「ARC」

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心地よい風が抜けるキャビンとアウトドアリビング

敷地内に佇む全9棟のキャビンは、Small・Medium・Largeの3タイプから選べる。

一人旅にもちょうどいいサイズのSmallは、自分と向き合う時間に最適だ。目の前には、南国の植物を望むグリーンビューが広がり、読書や書き物の手も進む。Mediumは海を眺めるテラス付き。昔ながらの島の食卓を思わせる掘りごたつ式の「ローワーリビング」を備え、くつろぎと団欒を両立する。Largeは最大6名まで泊まれるメゾネット型。2つのベッドルームを配し、互いの時間を保ちながらひとつの空間を共有できる。ロフトは、この地でひときわ高い位置からオーシャンビューを望み、低めの天井高が、隠れ家のような親密な空間をつくり出す。

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Mediumには、掘りごたつ式の「ローワーリビング」を備える。
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高い位置からオーシャンビューを望む、Largeのロフト

MediumとLargeのキャビンへは、地上階のピロティから潜り込むようにアプローチする。それは、まるで童心に帰る“木登り”のような感覚だ。事前チェックインで受け取ったパスワードを入力し、いざ中へ。足を踏み入れた先には、視界いっぱいの“奄美ブルー”が現れる。

「エアコンに頼らず、自然の気流で生きる建築を目指した」と、SUEP.代表であり建築家の末光弘和は語る。湿気の多い奄美の気候において風通しを最優先に設計された空間には、大小さまざまな窓や開口部を配置。開け放てば、心地よい風が室内を通り抜ける。

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Mediumの掘りごたつ。床をスライドすると隙間から心地よい風が吹き込む。
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キャビンの下に広がるピロティー。テーブルとベンチをしつらえ、アウトドアリビングとして利用できる。

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資源とエネルギーが巡る、滞在のかたち

キャビンが佇む一帯から細い道を抜けると、その先には穏やかな海が広がる。滞在中、思い立ったときに海辺へと足を運べるのも、この場所ならではの魅力だ。

海から上がった後は、屋外に設置されたシャワーブースへ。木材をブリック状に組み上げたドーム型のブースは、「ARC」建設時に生まれた木の端材を活用したもの。「建てることで出るロス」を建築資源に変える試みとして、末光が准教授を務める九州大学との共同プロジェクトにより実現した。

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建設時に生まれた木の端材を活用したシャワーブース。

さらに「SANU 2nd Home 奄美大島1st」では、これまで「SANU」が力を注いできた環境共生型建築からさらに一歩踏み込み、拠点内でエネルギーの循環を完結させる仕組みも初めて導入した。屋根一体型の薄型ソーラーパネルと蓄電池を備え、電力の自立を目指す。また、拠点内にはEV充電器も完備。LEXUSのBEVレンタカーと連携し、滞在から移動までをゼロ・エミッションでつなぐ。 

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LEXUSのBEVレンタカーと連携。移動も含めて地球にやさしい滞在に。

自然の力を制御するのではなく、応答する。奄美大島に新しく誕生した「ARC」は、自然とともにある“暮らしのあり方”を更新し続ける「SANU」の思想を体現する。

SANU 2nd Home 奄美大島1st

鹿児島県大島郡龍郷町赤尾木松崎620番1
https://stay.sa-nu.com