オランダ

オランダの著名な美術館の隣に、不思議な建物がある。丸みを帯びた形状で外壁は銀色に輝き、まるで鏡のように周りの景色を映し出している。近未来映画のセットと見間違うかのような建築だが、実は美術館の膨大なコレクションを収めると同時に内部を一般公開するために作られた、アートの巨大倉庫兼展示場だ。
見せる倉庫誕生!由緒ある美術館の斬新な試み
ロッテルダムにあるボイマンス・ファン・ベーニンゲン美術館は、美術品収集家が市に寄贈したコレクションを展示するために1849年に開館した。ピーテル・ブリューゲルの『バベルの塔』をはじめ、ゴヤ、ルーベンス、レンブラントなどの名作を所蔵し、175年以上に渡って集められたコレクションの数は15万点を超えるという。
ところが館内で深刻な水害が発生し、美術館は2019年から改装工事のため閉鎖されることになった。その際、所蔵品を郊外の別の場所に移動するのではなく、近くにデポ(収蔵庫)を建て、同時にそこで作品の一般公開もしてしまおうという案が浮上。これが採用されて、『デポ・ボイマンス・ファン・ベーニンゲン』が2021年11月に誕生した。

鏡張りの卵?街の景色を取り込む
設計を担当したのは、ロッテルダムを拠点とする建築事務所MVRDVの共同創設者ヴィニー・マース。前例のない建築タイプに求められる要件を満たすため、非常にユニークなデザインとなった。
高さ39.5メートル、7階建てのデポは、卵を横割にして下半分を残したような独特のフォルムを持つ。その形状により、地上部分の敷地面積は小さく抑えられ、上階へ行くほど広くなっている。中央部に作られたのは、階段が迷路のように交差する吹き抜け。最上階には木々で飾られたルーフガーデンが設けられており、ロッテルダムの市街を一望できる息を飲むような景色が楽しめる。
もう一つの特徴は、6609平方メートルを1664枚の鏡面パネルで覆った外壁だ。これらのパネルはロッテルダムの住民や文化機関から1枚1000ユーロの支援を受けて設置されたという。銀色に輝くファサードは、緑豊かな環境とロッテルダムのスカイラインを映し出し、デザインと周囲の環境との調和を生み出している。

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ディスプレイも独創的 全収蔵品を公開!
内部には様々な収蔵品が保管され、包装されたままラックに吊るされていたり、整理棚に置かれていたりと、倉庫ならではのディスプレイで来場者に公開されている。さらに吹き抜けに吊るされた13基の巨大な展示ケースには、厳選された美術品を展示。通路、階段、エレベーターなど、様々な角度から作品を見ることもでき、ガイドが同行すれば収納コンパートメントへのアクセスも可能だ。古い美術館の建物では、膨大なコレクションのうち展示できるのはわずか8%ほどだったというが、ここでは全収蔵品が公開されている。
このプロジェクトにより、コレクション全体が次世代のために適切に保存されるだけでなく、誰もがアクセスできるようになる。世界初の一般公開型収蔵庫であるデポは、まさにロッテルダムの新しいデザインアイコンであり、アートを身近なものにするための理想の空間と言えよう。


Webライター
早稲田大学第一文学部卒業。レコード会社に勤務した後に渡米し、コミュニケーション学の修士号取得。米ノースウエスト航空機内誌の編集を経て、日本航空の機内エンターテイメントの選定買付に携わる。夫の転勤で通算9年の東南アジア滞在後、帰国して世界のニュースを紹介するライターに。現在は関西の片隅で、仕事の合間にフランス語学習に奮闘中。
早稲田大学第一文学部卒業。レコード会社に勤務した後に渡米し、コミュニケーション学の修士号取得。米ノースウエスト航空機内誌の編集を経て、日本航空の機内エンターテイメントの選定買付に携わる。夫の転勤で通算9年の東南アジア滞在後、帰国して世界のニュースを紹介するライターに。現在は関西の片隅で、仕事の合間にフランス語学習に奮闘中。





