【全ページの原画を公開】『はらぺこあおむし』誕生の裏側に迫る、エリック・カール展|東京都現代美術館

  • 文:はろるど
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「エリック・カール展」展示風景、東京都現代美術館、2026年。会期中、3階のフォトスポットと1階は写真撮影ができる。※普段、会場にあおむしはいません。

アメリカの絵本作家、エリック・カール(1929〜2021年)の大規模な回顧展が、東京都現代美術館で開かれている。名作『はらぺこあおむし』日本語版の刊行から50年。世代を超えて愛され続ける絵本の魅力とともに、鮮やかな色彩と独創的なコラージュ表現などによって切り拓かれた、カールの豊かな創作世界に迫る。

全ページの原画を公開!『はらぺこあおむし』とダミーブックとは?

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左:『はらぺこあおむし』25周年記念アートワーク 1994年 エリック•カール絵本美術館 Photo:harold

『はらぺこあおむし』(1969年)は、グラフィックデザイナーとして活動していたカールが、自ら文章を手がけた最初の絵本。小さなあおむしが食べものを口にしながら成長し、やがて美しいちょうへと姿を変えるこの物語について、カールは「大人になることの希望の物語」と語っている。本展では、『はらぺこあおむし』全ページの原画を公開。さらにダミーブック『みみずのウィリーのいっしゅうかん』を紹介し、世界的名作が誕生するまでの創作の軌跡をたどっている。

このダミーブックには、どのような役割があったのだろうか。カールは絵本制作にあたり、まず物語の展開やページ構成、デザインのアイデアを練るため、絵コンテのような試作本を作っていた。それがダミーブックと呼ばれるものだ。会場では、過去に日本で開催されたエリック・カール展で最多となる12点のダミーブックを展示。最終版とは異なるストーリー展開や構図もあり、試行錯誤のプロセスを間近に見ることができる。

グラフィックデザインから絵本へ、カールの歩みをたどる 

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左:ビル • マーティン •Jr 文『くまさん くまさん なに みてるの?』 1992年版 表紙と裏表紙 1992年 エリック•カール絵本美術館 右:ビル • マーティン •Jr 文『くまさん くまさん なに みてるの?』1992年版 「ちゃいろい くま、あかい とり、」 1992年 エリック•カール絵本美術館 Photo:harold

カールが絵本作家になるまでの歩みにも着目したい。1929年にアメリカで生まれたカールは、6歳の時に両親の故郷であるドイツへ移住。友人との別れや言葉の違いに戸惑いながら、戦時色が強まるドイツでの暮らしは、少年時代に暗い影を落とした。そうしたなか、学校の教師が密かに見せてくれたクレーやマティスといった「退廃芸術」とされた画家たちの作品に出会うと、鮮烈な色彩に衝撃を受ける。この体験こそが、後にアーティストの道へ進む原点となった。

シュトゥットガルト州立芸術アカデミーでグラフィックデザインを学んだカールは、1952年にニューヨークへ戻ると、レオ・レオーニと出会いから、デザイナーとしてのキャリアを築いていく。そしてアートディレクターとしてポスター制作などを手がける一方、教育者・児童文学作家のビル・マーティン・Jrによる絵本『くまさん くまさん なに みてるの?』(1967年)のイラストレーションを担当したことをきっかけに、絵本作りに情熱を見いだしていくようになった。---fadeinPager---

「読めるおもちゃ」を目指した、“しかけ”に満ちた絵本たち

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左:『ごちゃまぜカメレオン』1984年版 「『もとの ぼくに なれたらなあ!』」 1984年 エリック•カール絵本美術館 右:『ごちゃまぜカメレオン』1984年版 「『ゾウみたいに つよくなれたら いいのになあ。』」 1984年 エリック•カール絵本美術館 Photo:harold

「遊べる本であり、読めるおもちゃでもある絵本」を目指していたカールの絵本の特徴は、読み手を絵本の世界へ引き込むさまざまな「しかけ」にある。『たんじょうびの ふしぎなてがみ』(1972年)では、丸い穴が開いていたり、階段状になっていたりと、ページそのものの形がプレゼントを探すための手がかりになっている。『ごちゃまぜカメレオン』(1975年)では、ページの端についたタブによって、カメレオンがどんな動物に変身しようとしているのかがひと目で分かる。

『とうさんはタツノオトシゴ』(2004年)では、海藻だけが透明シートに印刷されており、ページをめくりながら海藻に擬態した魚を探し出していく。『できるかな? あたまからつまさきまで』(1997年)は、読者自身が体を動かしながら楽しめる参加型の一冊。フリップブックやポップアップといった手法も、いまでこそ広く知られているが、当時としては斬新な試みであり、多くの子どもたちを夢中にさせた。

カールと日本、その創作を結んだ交流の軌跡

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「エリック・カール展」展示風景、東京都現代美術館、2026年 あおむしグッズをはじめ、コラボレーションなどが多く用意された特設ショップ。※普段、会場にあおむしはいません。

最後にカールと日本との関わりにも触れておきたい。彼の絵本が日本で最初に紹介されたのは、1970年刊行の『1、2、3 どうぶつえんへ』(1968年)。また『はらぺこあおむし』のアメリカ初版では、造本や印刷技術が難しかったことから、日本の印刷会社がその制作を担う。そして1985年に絵本原画展にあわせて初来日を果たすと、たびたび来日し、各地の絵本専門の美術館を巡る。その経験が、2002年に開館したアメリカ初の絵本美術館、「エリック・カール絵本美術館」へと結実した。

全27冊の絵本原画に加え、ダミーブックや、コラージュに用いられた色や模様をつけた紙など、約180点の作品や資料が並ぶ本展。ゆったりとした展示空間を巡っていくと、絵本作家としてだけではなく、カールの卓越した手仕事や、ものづくりへのまなざしまでが伝わってくる。そして鑑賞後に待っているのが、驚くほど充実した特設ショップ。会場限定のオリジナルグッズも数多くそろい、絵本の世界の余韻を、展覧会の思い出とともに持ち帰ることができる。

Eric Carle: Art, Books, and the Caterpillar is organized by The Eric Carle Museum of Picture Book Art, Amherst, Massachusetts, United States.

『エリック・カール展 はじまりは、はらぺこあおむし』

開催期間:開催中~2026年7月26日(日)
開催場所:東京都現代美術館 企画展示室1F/3F
東京都江東区三好4-1-1(木場公園内)
開館時間:10時〜18時(展示室入場は閉館の30分前まで)
休館日:月(7/20をのぞく)、7/21
観覧料:一般2,300円 他
https://ericcarle2026-27.jp

はろるど

アートライター / ブロガー

千葉県在住。WEBメディアを中心に、アート系のコラムや展覧会のレポートを執筆。日々、美術館や博物館に足を運びながら、作品との出会いや発見をSNSにて発信している。趣味はアートや音楽鑑賞、軽いジョギング。そしてお酒を楽しむこと。

はろるど

アートライター / ブロガー

千葉県在住。WEBメディアを中心に、アート系のコラムや展覧会のレポートを執筆。日々、美術館や博物館に足を運びながら、作品との出会いや発見をSNSにて発信している。趣味はアートや音楽鑑賞、軽いジョギング。そしてお酒を楽しむこと。