選ぶクルマには、その人のライフスタイルや美意識が自然と表れる。
第一線で活躍するクリエイターと愛車の関係を紐解く本企画。今回は、写真や映像を主軸に活躍するフォトグラファーの河澄大吉。彼が日々の過酷な撮影現場から、プライベートでの作品制作、部署やフィールドへの移動をともにする相棒として選んだのは、スクエアなボディが目を引く往年の名車、三菱「パジェロ」だ。
小さな愛車たちと駆け抜けた独立初期
広告代理店のクリエイティブチームで働きながら写真を学び、約5年前にフォトグラファーとして独立した河澄。彼が最初に手に入れたのは、わざわざ福岡まで探しにいった1997年製の「フィアット・パンダ」。選んだ理由は、「王道から少し外れつつ、でも奇をてらっていない塩梅が好き」だから。その後、現在のパジェロまで貫いているクルマ選びの基準だ。
その後、雪道を行く機会が増えたことから、「スズキ・ジムニー シエラ」を増車。これもまた1990年製と、90年代の車が続いた。
「古くていまなお残っているものには、必ずそこに『残っている理由』があります。その背景にある普遍的な価値に惹かれるんです。カメラも同じで、仕事や作品撮りでも、20年前の中判デジタル『ハッセル H3D』や中判フィルムカメラ『PENTAX 67』を積極的に愛用しています」と、河澄の一貫したもの選びの哲学を教えてくれた。
タフさと積載力を求めてパジェロへ
独立当初は機材もまだ少なかったが、仕事の規模が大きくなるにつれて機材が増え、次第に積載力不足が課題に。さらに、パンダが撮影帰りに路上で故障し、立ち往生した苦いトラブルを経験したことから、より確実でタフな移動手段を求めるようになる。そうして行き着いたのが、現在のパジェロだった。
「予備の機材まで常に積載しておけるため、現場での想定外の事態にも即応できます。この安心感はプロとして仕事をしていくうえで大きいですね」
スクエアな荷室には突っ張り棒を渡し、ライトスタンドなどを機能的に収納。圧倒的な収納力を手に入れ、プライベートで仲間と出かけるキャンプやスノーボードも、よりアクティブに楽しめるようになった。パジェロは河澄にとって、クリエイティビティを支えるタフな機材車であり、日常を外へと広げる最高の相棒なのだ。
放置車両を探して。20万キロに及ぶ道程
パジェロの機動力は、河澄のライフワークとも言える個人的な作品制作にも直結している。全国の山奥や林道にひっそりと眠る「放置車両」を撮影するプロジェクトだ。
「放置されたクルマから感じる“そこに人がいた痕跡”に惹かれて撮り始めました。仕事で地方を訪れたタイミングなどを利用して、自分のセンサーを頼りに放置車両を探しています。今後はパジェロの機動力を活かして、車中泊なども取り入れながら旅と作品制作を融合させていきたいと思っています」
購入時に10万キロだった走行距離は、1年半で13万キロに達した。週のほとんどをクルマとともに過ごし、公私ともにクルマの重要度がますます高まっていると語る。
「古いクルマだから『不安はないの?』と聞かれることもありますが、そこまで大きな心配はしていません。70万キロを突破したパジェロもあると聞くので、手入れを怠らなければ、まだまだ走れるはず。まずは20万キロを目指して、大切に乗り続けたいと思っています」
日々の業務と、放置車両探しの旅。その両方を力強く支え続けるパジェロの走行距離は、これからも彼のクリエイティブな軌跡とともに着実に刻まれていくだろう。
河澄大吉 フォトグラファー/映像クリエイター
1995年生まれ。広告代理店でディレクター・プランナーとして経験を積みながら、2018年に本格的に活動を開始。2021年に独立し、音楽、ファッション、広告など幅広いジャンルで活躍。デジタル撮影だけでなく、中判フィルムを用いた作品制作も精力的に行う。

