【アイスエスプレッソ革命】超音波で実現させた驚異の味。SAMMA_がコーヒーの旨味で業界を震撼させる

  • 写真・文:一史
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2026年6月2日(火)より、すべてのアイスエスプレッソドリンクを新製法に刷新したコーヒー店「SAMMA_」のシグネチャードリンク「ULTRA MILK FOAM」。¥1,100。
※記事内写真はすべて、1日(月)に開催されたお披露目イベントの様子。

目の前に出されたのは、薄くシンプルな透明カップに深く注がれた茶色の冷たいドリンク。平たく言い表わすなら、エスプレッソとミルクで作られたアイスカプチーノである。見た目はごく普通のドリンクだ。ところが手で持ち上げ、一口ごくりと飲んで驚いた。「これはアイスカプチーノなのか!? いや、確かにカプチーノなのだが!」。
なんという旨味なのだろう。ミルキーだのシルキーだのといった滑らかさの表現が陳腐に感じてしまう、これまで体感したことのない“とろみ”。エスプレッソとミルクが分離せず完全に一体化したドリンク。その絶妙な風味は飲み終わる最後まで続いていく。氷が溶けてもいわゆる“水っぽさ”がまったくない。ふわりとした夢心地に包まれたコーヒー体験だ。

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アイスエスプレッソドリンクの調理はエスプレッソの抽出からはじまる。SAMMA_は専用の新しいコーヒー豆も開発中だ。

飲み進めるうちに、優しい甘みにも気づいた。このドリンク「ULTRA MILK FOAM(ウルトラ ミルク フォーム)」の開発者であり、提供された一杯を作ってくれた藤岡 響さんに尋ねたところ、「毎日の抽出調整で使った廃棄されるエスプレッソと、パームシュガーを合わせたシロップを入れています」とのこと。
無駄をなくすサステイナブルな姿勢も息づくドリンクである。2025年10月に東京・三軒茶屋にオープンしたこのコーヒー店「SAMMA_(サマア)」が歩みを進める、「サードウェーブ」に続く「フォースウェーブ」のコーヒー文化がここにある。

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“抽出家”として活躍する藤岡 響さんが新製法の開発者。操作している黄色のマシンが超音波振動を発生させる「UP100H」。棒の先端から超音波を出している。

革新的な味のキモは、超音波の振動で液体を分子レベルで乳化させる機械「UP100H」。ドイツのヒールシャー・ウルトラソニックス社が製造したものだ。コーヒー豆の油分が残るエスプレッソやミルクを機械に掛けることで、混ざりにくい水分と油がとろりと滑らかな液体になっていく。
本来は薬の製造などに用いられるこの機械を、なぜ藤岡さんはコーヒーと結びつけたのだろうか。
「分子料理の探求をしていたとき、超音波の活用方法を知りました。超音波を使った最先端の料理が世界に存在するんです。そこからコーヒーへの応用を考えレシピを研究しました」
コーヒーやお茶などの“抽出家”の肩書を持つ藤岡さんの興味が、多分野に渡ることから着想された製造方法だ。アイスエスプレッソドリンクが抱えていた歴史的な問題の水っぽさが解消され、素材のポテンシャルも最大限に引き出された。

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「キャビテーション」と呼ばれる超音波物理現象により液体が乳化されて急冷する。この処理をしたエスプレッソを、氷と水を入れたカップに注げば濃い風味のアメリカーノ(この店でのメニュー名はBLACK2、またはBLACK4)ができあがる。

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記事冒頭に載せた「ULTRA MILK FOAM」では、エスプレッソとミルクを同時に超音波マシンに掛けて成分を一体化させる。

“超音波コーヒー”について少し調べてみた。コールドブリュー(水出しコーヒー)を超音波の機械で抽出した成功例が、オーストラリアのシドニー大学のShih-Hao Chiu、ニューサウスウェールズ大学のFrancisco J. TrujilloとNikunj Naliyadhara3名の共同研究により2024年6月に発表されている。
(出典:
https://www.sciencedirect.com/science/article/pii/S1350417724001330)
彼らが独自に製造した実験機械により、24時間掛かるコールドブリューの抽出時間をなんと3分まで短縮できたそうだ。味の実感はコールドブリューそのもののようである。
このように大学研究レベルではすでに超音波コーヒーがあった。しかし一般製品であるUP100Hを使いカフェ提供できるドリンク作りでは、SAMMA_がイノベーターになるだろう。

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お披露目イベント当日の店内風景。天井はリノベーションする前の日本家屋の長屋だった梁が活かされている。
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製造工程を見せて来場者たちに新しい試みをプレゼンテーションした藤田さん。

エスプレッソ単体、ミルク単体、エスプレッソ&ミルクの複合など超音波での乳化は自在である。味のまろやかさを生む秘訣について、SAMMA_代表の村上雄一さんに答えを求めた。
「従来の製法ですとミルクをフォーム状にするのに、氷を加えてシェイクしたり、ブレンダーで泡立てていました。超音波で振動させれば水などの余計な要素がミルクに足されることなく、ミルクの特性を最適に引き出すことができます。ナノバブルと呼ばれる細かな空気の気泡が派生することも、滑らかな食感を生みます。エスプレッソも同様に抽出したままの風味を保てます」

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新製法のお披露目イベントで登壇した、SAMMA_創設者で代表の村上雄一さん。ブルーボトルコーヒーに日本上陸時から24年まで勤めた経歴の持ち主。

エスプレッソの水割りドリンクであるアイスアメリカーノも、抽出したてのエスプレッソを超音波処理することで乳化・急冷させ風味をキープ。氷に熱いエスプレッソを注ぐ一般的な作り方とはまったく異なる独自製法だ。氷の溶け過ぎで薄まることがないから、濃い風味が飲み終わりまでずっと続く。この革新について村上代表が次のように語った。
「コーヒー業界は職人技が尊ばれる分野です。製法のセオリーを守りつつ、どれだけ優秀な技術を身につけられるかが競われます。その考え方に切り込んだのが、わたしたちの今回の試み。SAMMA_には世界中に支店を作る目標があります。コーヒー好きの人々に『アイスといえばSAMMA_だね』と言われる存在になりたい。超音波の機械はコンパクトですから、店舗が小さなコーヒースタンドでも同じ味を提供できます。SAMMA_を広げていく大きなチャンスと考えています」

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微炭酸のトニックウォーターにスパイシーなジャムウを混ぜ、超音波処理したエスプレッソを注いだ「SAMMA_ SONIC(サマア ソニック)」。
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この「SAMMA_ SONIC」も凄技のおいしさ。わかりやすく言えばジンジャーエールとエスプレッソを混ぜたような味だ。コーヒーの酸味と苦味、酒のように辛い風味がとろりと溶け合う、夏にぴったりな逸品。¥1,100。

超音波機械のUP100Hの販売価格は、最高峰コーヒー豆グラインダーと同程度である。「これならウチのカフェでも導入できる」と考えるコーヒー店がこの先に現れるかもしれない。しかしSAMMA_には藤田さんが生み出した渾身のレシピがある。そのセンスは見よう見まねでは習得できないはずだ。
SAMMA_ のミルク入りアイスエスプレッソドリンクの価格は、どれも一杯千円を越える。高価に思えても、飲めば見合ったクオリティに納得できるだろう。例えるなら、製造原価が1〜5%ほどとされる高級香水のようなもの。量産以前の完成に至るアイディアと開発に、手間とお金が掛かっているのだ(香水の場合は凝ったパッケージやブランド維持費も上乗せされているだろうが)。

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店内ではオリジナルのコーヒー豆や様々なグッズも販売中。
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再生素材の家具を見慣れた人ならひと目でそれとわかる椅子。店内に一歩足を踏み入れれば、サステイナブルな運営を大切にしている店であることが伝わってくる。
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椅子はインドネシアの河川で集められた500個のビニール袋から作られた「Muara Stool Pebble White」。製造国も同国で、河川廃棄物を再利用する会社「SUNGAI DESIGN」の製品だ。

東急・田園都市線&世田谷線の三軒茶屋駅から徒歩10分ほどの静かなエリアに、ひっそりと佇む古民家改装のSAMMA_。まだ知らぬ味を求めてわざわざ飲みに行く価値のある、今夏に注目すべき筆頭株のコーヒー店である。

SAMMA_

監東京都世田谷区上馬1-33-7
営業:9時〜22時
不定休
www.instagram.com/samaa_coffee/

 

高橋一史

ファッションレポーター/フォトグラファー

明治大学&文化服装学院卒業。文化出版局に新卒入社し、「MRハイファッション」「装苑」の編集者に。退社後はフリーランス。文章書き、写真撮影、スタイリングを行い、ファッション的なモノコトを発信中。
ご相談はkazushi.kazushi.info@gmail.comへ。

高橋一史

ファッションレポーター/フォトグラファー

明治大学&文化服装学院卒業。文化出版局に新卒入社し、「MRハイファッション」「装苑」の編集者に。退社後はフリーランス。文章書き、写真撮影、スタイリングを行い、ファッション的なモノコトを発信中。
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