オーデマ ピゲと訪ねるクラフツマンシップ——“教えない教え”が生む茶碗。450年の伝統を一子相伝で未来へ繋ぐ【樂焼 十六代樂吉左衞門】

  • 動画ディレクション:TISCH(MARE Inc.)
  • インタビュー、文:小長谷奈都子
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約450年前、戦国の世に生まれた樂焼。その始まりは、千利休が「侘び茶にかなう茶碗を」と命じ、初代長次郎につくらせた一碗に遡る。当初は「今焼茶碗」「聚樂焼茶碗」などと呼ばれ、豊臣秀吉から「樂」の印を賜ったことで、その名が定着した。以来、樂家では一子相伝でその精神と美意識が受け継がれ、現在は十六代樂吉左衞門がその名を担っている。今回、オーデマ ピゲとともに京都の樂家を訪ね、十六代にその歴史や自身の創作、次世代への想いを聞いた。

「樂家の茶碗は、利休さんの侘び茶の思想が、姿や形だけでなく、茶碗の内側にまで込められている点がほかの焼き物とは異なる大きな特徴です。いままでにないものを生み出すエネルギーや創造性を大切にしながら、歴代がそれぞれの時代背景の中で自分自身がつくる茶碗について問い続けてきた。その連なりが樂家の伝統となっています」

樂家の継承において独特なのが一子相伝、そして“教えない教え”というあり方。型や技術を言葉で伝えるのではなく、歴代の茶碗や茶室、父の背中から自ら掴み取っていく。現在、十六代が取り組んでいるのが「今焼茶碗」と名付けた新しい試みだ。赤茶碗、黒茶碗という既存の枠をいったん外し、自然の土と窯の炎、そして人との関わり合いの中にある茶碗を問い直している。

「自然と人との間にあって、なにかとなにかをつなぐきっかけになれるような茶碗でありたい。土と炎の気配を宿しながら、畳の上にすっと存在できること。そして、長次郎の茶碗の中心にある、自分自身が感じている侘び茶の精神とも混ざり合う茶碗を目指して作陶しています」

窯の炎の前に立つ時、歴代が支えてきた時間の積み重ねを感じるという十六代。歴代の中で圧倒的な存在感を放つ初代長次郎、そして、なお炎のような情熱を燃やし続ける父・直入の背中を真摯に追いながら、その作品には三代道入にも通じるようなおおらかで柔らかな気配が漂う。その眼差しは、未来への継承にも向けられ始めた。

「茶室のあり方や窯の炎、自然光が生む陰影の美しさ、花の命。子どもたちにはそうしたものを押し付けないように、豊かに膨らんでいくように見せていきたいですね。僕らは使うために茶碗をつくっています。茶の湯の空間や自然、お道具、人、そのすべての関係の中に茶碗が存在していて、ある時ふっと、それぞれの距離感がひとつになる瞬間がある。それがお茶事であり、お茶を通して感じる豊かさなのだと思います。茶碗を通して、そういった心のあり方を一緒に広げていけたら嬉しいです」

初代が問い、歴代が向き合い続けてきた侘び茶の茶碗。その炎を、十六代樂吉左衞門はいま、次の世代へとつなぐために燃やしている。

オーデマ ピゲ ジャパン

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