針も文字盤もない“異端の時計”を日常の相棒に。ユリス・ナルダンの新世代「フリーク X」が切り拓く新境地

  • 写真:宇田川 淳
  • 文:柴田 充
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ケースとフェイスをワントーンで統一した「フリーク X グレー」(右)、文字盤をブルーのグラデーションで彩る「フリーク X ブルー」(中)、ブラックとのコントラストがシックな「フリーク X ゴールド」(左)。

21世紀が幕を開け、さまざまな技術革新によって伝統的な機械式時計も飛躍的な進歩を遂げた。先鞭をつけた傑作の一つが、ユリス・ナルダンの「フリーク」だ。その誕生25周年とともにユリス・ナルダンの創業180周年を飾り、「フリーク X」の新作が登場した。それは「フリーク=異端」というコレクションに新世紀を拓く。

異端のスタイルに革新への情熱を込めて

「フリーク」は2001年に誕生した。「天文三部作」と呼ばれる超絶技巧を凝らした天文時計の連作を手がけ、ユリス・ナルダンの頭脳とも称えられる天才時計師、ルートヴィッヒ・エクスリン博士がそれまでの既成概念を覆し、発明した野心作だ。

針も文字盤もリューズもない。そのあまりにも革新的なスタイルは、古典的なカルーセル機構の再解釈と、時計で初めて本格採用した先進素材シリコンの融合から生まれた。さらに従来のリューズではなく、回転ベゼルによって巻き上げや時刻調整をする独創的な機構とデザインでその個性を演出したのである。

以来、「フリーク」は35件の特許と17種のキャリバーを生み出す。その系譜に2019年に加わったのが「フリーク X」だ。リューズレスというシンボリックなスタイルから、あえてリューズを備えることで、コレクションの可能性をさらに広げた。そして初代「フリーク」誕生から四半世紀を経た今年、2年以上の開発期間をかけ、初の全面リニューアルを遂げたのだ。

かつてマリンクロノメーターで世界を席巻したユリス・ナルダンは、"UNSTOPPABLE"をブランドの精神に掲げる。UNはブランドのイニシャルであり、それはまさに“止まることのない”革新への情熱にほかならない。

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日常使いを追求し、ケースをダウンサイジング

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フリーク X ブルー/中央から広がる美しいブルーのグラデーションは大海原を思わせ、ユニークなフライングカルーセルの動きが楽しめる。新採用の一体型ブレスレットとケースには80%リサイクルスティールを採用し、素材においても未来志向の先進性を追求する。自動巻き、SSケース&ブレスレット、ケース径41㎜、パワーリザーブ約72時間、シースルーバック、100m防水。¥6,765,000

「フリーク X」は、フライングカルーセル機構を継承しつつ、なぜリューズレスという象徴的なスタイルを採用しなかったのか。目指したのはユニークネスとデイリーユースの両立という新たな挑戦だ。

リューズは1840年代に発明され、それまでの鍵巻き式から懐中時計の利便性は飛躍的に向上した。以来、改良を重ねた技術は完成の域にあり、腕時計になったいまも受け継がれる普遍的なスタイルだ。「フリーク X」がリューズを備えた理由もそこにある。

新作では日常使いをさらに追求し、ケースサイズを従来の43㎜から41㎜にダウンサイジングした。コンパクトになったケースは腕にも馴染み、袖下にも収まりやすい。

またガラスボックス型のサファイアクリスタルを採用し、ドーム状のフォルムを全面に広げることで、小径化しながらも時刻表示の動きをよりダイナミックに演出する。滑らかなカーブからはクラシックの気品が漂い、そこにもコレクションが標榜する伝統と先進が共存するのである。

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滑らかなドーム状の風防はケース本体の厚みを抑え、さらに全面に広げることで文字盤をより強調する。ケースは、従来のモジュラー式からモノブロック構造を採用し、堅牢性の向上とともに、手首に伝わる機械的振動を最小限に抑える。ケースサイズも2㎜ダウンした。

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刻々と変化するダイヤルの表情を、繊細な仕上げでより豊かにする

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フリーク X グレー/新設計のオシレーターブリッジを始め、ムーブメントはより洗練された印象になった。自動巻き、SSケース、ケース径41㎜、パワーリザーブ約72時間、シースルーバック、カーフレザーストラップ、100m防水。¥6,556,000

翼の断面のような舟形をしたオシレーターブリッジが1時間で1回転し、楔形のマーカーとともに時分を差す。その計時のインパクトは「フリーク」の真骨頂だ。新作は、時刻によってまったく異なる印象を与える文字盤を新たな装飾で飾る。

この「フリーク X グレー」は、アワーインデックスとミニッツスケールを立体化したレイヤー構造に、ベースの文字盤をシルバーの梨子地で仕上げる。この粗いテクスチャー感に対し、構成パーツには手作業による面取りを施し、メタリックを強調した絶妙なコントラストを生む。そして全体をシルバーのワントーンで統一することで、ひけらかさずとも構築的な美しさをアピールするのだ。

これまでアワーインデックスに並んで12時位置に掲げられていたブランドのロゴもミニッツスケールの下方に移された。そのさり気なさも洗練された個性を際立たせている。

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まるで繊細な線のようなシリコン製の大径テンワやヒゲゼンマイは、同じグループであるシリコン研究所のシガテックで製造された。アプライドのアワーインデックスにはホワイトのスーパールミノバを塗布し、暗所では仄かな光が浮かび上がる。

ユリス・ナルダン「フリーク X」の詳細はこちら

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マイクロローターやDIAMonSIL脱進機を"初搭載"し、スペックも向上

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フリーク X ゴールド/レッドゴールドのケースとブラックダイヤルの組み合わせで、ドレッシーな印象に。自動巻き、18KRGケース、ケース径41㎜、パワーリザーブ約72時間、シースルーバック、アリゲーターストラップ、100m防水。¥10,175,000

小径化には、フライングカルーセル搭載のムーブメントも刷新されたことはいうまでもない。注目すべきはコレクション初のマイクロローターの採用だ。これまでのフルローターに比べてコンパクトになり、一体設計により巻き上げと伝達も高効率化した。さらに「フリーク X」では初のDIAMonSIL製脱進機を採用し、精度、効率性、耐久性の向上とともに、ハイテク表面処理によって硬度と耐性も併せ持つ。

こうした最新鋭の設計と先端素材に加え、高度なマイクロエンジニアリングシステムによって、調速機構全体のノイズと摩耗を低減し、エネルギー効率を最適化していることも見逃せない。結果、従来と変わらぬ72時間の駆動時間を実現したのである。

より多用途な日常使いのため、クイックリリース式のストラップシステムを導入し、季節やスタイルに合わせて容易に交換できることも魅力的だ。メタルブレスレット、ラバーやレザーのストラップなど9種類のラインナップを揃え、シーンを問わずフリークの世界が味わえるだろう。

いかに高度な複雑機構であっても、いまや日常使いのできる実用性は不可欠な要件になっている。「フリーク X」はそうした時代の趨勢に応え、コレクションの可能性をさらに広げる。それは愛好家のみならず、より多くの時計ファンを魅了するに違いない。その進化は止まらない。

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新設計のキャリバー「UN-232」は、RG製マイクロローターをダブルブリッジで支える。香箱とのシンメトリックなデザインも美しい。左にはユリス・ナルダン独自の厳密な精度検査「UNサーティフィケーション」の刻印を施す。ラグの付け根にある丸いボタンを押せば、クイックにストラップを交換できる。

ソーウインド ジャパン

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