【日産キックス】かつての「パトロール」からインスパイアされた“台形デザイン”と“隠れメッセージ”

  • 写真&文:小川フミオ
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日産自動車が2026年6月に発売した新型「キックス」に乗った。優れたたデザインが印象的だが、乗ると「それだけでない」と感心させられる出来映えだ。

日産 新型「キックス」
アメリカンフットボールのヘルメットをイメージしてデザインしたというフロントマスク。

筆者が乗ったのは、前輪駆動(FWD)と「e-4ORCE(イーフォース)」と日産が名づけた4輪駆動システムを持つ4WDの2モデル。

感心したというのは、走りがいいのだ。それも加速とかコーナリングとか、一部の性能が突出しているのでなく、バランスがよい。

キックスは初代が2016年のリオデジャネイロ五輪のタイミングで発表されたグローバルカー。どこのマーケットでも使い勝手のよさで評価されることを目指して、コンパクトな車体と、それでいて広い室内というパッケージのよさがセリングポイントだった。 

日産 新型「キックス」
なだらかに下降していくルーフラインと、逆にキックアップしているリアクォーターパネルが躍動感を生んでいる。

今回の第3世代も、コンパクトさは引き継いでいる。全長は約4.3mと、日本の路上でも扱いやすいサイズ。

一方で、全高は1.55mが確保され、SUV感も演出。どちらかというと、ハッチバックとSUVの間のクロスオーバー的なディメンションだ。

「エクステリアのデザインの一番大事にしたかったのは、タフとアジャイル。タフとはすごく堅牢で力強い、アジャイルは俊敏でキビキビしたようなところ」

担当したグローバルデザイン本部のプログラムデザインダイレクターが、製品デザインのコンセプトを解説してくれた。 

日産 新型「キックス」
あえてブラックの要素をふんだんに用いクロスカントリー4WDのイメージを追求したリア。

プロポーションのよさを追求するのがデザインの目的。力強さを感じさせるため、車輪が車体の四隅に配されているようにデザインしたという。

そのためデザイナーは「コーナーに黒いグラフィック、縦のラインを入れて、寸法以上にフロントオーバーハングを短く見せ、リアにも同じような工夫」をほどこしたそうだ。

SUVらしさも第3世代では重要視したポイント。

黒のグラフィックをボディ下部に使うことで、色を使っている車体の部分が高い位置にあることを強調。これでやや背高の印象をつくりだし「SUVらしい姿勢」にしたと説明される。

日産 新型「キックス」 4WD
写真はe-4ORCE搭載の4WD「X」グレード。

筆者は新しいキックスのエクステリアデザインをとても好ましく思っている。とりわけプロファイル(側面)とリア。

ボンネットも、70年代のフェラーリのように(言いすぎ?)左右が豊かに膨らんでいて、それがとってつけた感がなく、おさまりよく全体と調和している。

リアは後輪をおさめるフェンダーのふくらみを強調さ。いまのクルマでいえば、アストンマーティンのDBS(言いすぎ?)を思わせるカムテールのように裁ち落とされたリアとうまくつながる。

「形のなめらかさだったりとか、リフレクションのつながりというところも非常にこだわっています」というデザイン担当者の言葉に納得だ。

リアが印象的なのは、デザイナーの目論見どおりだったそうだ。 

日産 新型「キックス」 4WD
あえてリアフェンダーの張り出し感を強調した造型で力強さを感じさせるリアビュー。

「リアは口の字型の黒いグラフィックをつくっていますが、これは(かつてのクロスカントリー型4WDの)パトロールのオマージュ」というのが興味深い。

「パトロールは、テールゲートにスペアタイヤを背負っていたんですが、そのイメージからインスパイアされて、(新型キックスの)台形のグラフィックをデザインしました」 

日産パトロール
日本では2代目「サファリ」として販売された4代目「パトロール」のリアビュー。写真:日産自動車

もうひとつ「デザインの隠れメッセージ」がボディの前後にあると、デザイナーはにやり。

「ボディ前後の3本のシグネチャーランプを『エレベーションライン』と呼んでまして、特にリアでは、上にいくにしたがって左右幅が広くなっているのは、(バッテリーの)エネルギーがチャージされていくイメージなのです」

実際のドライブ感覚も、設計者のこだわりのたまものといえる。「コンパクトで中身の詰まったクルマ」とは、日産による提供価値のひとつで、まさにそのとおりの印象だ。

特に後輪もモーターで駆動する4WDモデルは実に気持ちよい。加速もなめらかで、ストレスなく速度が上がっていくのが痛快。

きびきびとした動きにつながる操舵感と、カーブではしっかりと踏ん張るけれど、通常の走行では路面のショックをていねいに吸収してくれるサスペンションの設定も大変すばらしい。

日産 新型「キックス」
電動車ということでパワーインジケーターをイメージした縦3連のLEDシグネチャーランプがデザインの特徴。

日産独自のハイブリッドシステム「e-POWER(イーパワー)」はエンジンを、発電のためだけに使う。

かつてはエンジンが始動すると、耳障りだったが、新型キックスでは、始動しても、ほとんどわからない。音も振動もごく低く抑えられている。 

日産 新型「キックス」
日産 新型「キックス」リアシート
12.3インチのスクリーンが2連でそなわるパネルを使うが物理的スイッチも残している(写真は「X」グレード)。

筆者が乗った4WDモデルは「X」という中間グレードで、よいところはトップグレードより径の小さい17インチ径のロードホイールに合わせたタイヤを装着している点。

すこし径の小さいタイヤが、ゴツゴツ感を払拭してくれ、なめらかな乗り心地を実現。全体として外からのノイズはたいへん低く抑えられているので、コンパクトサイズのSUVとは思えない上質感だ。 

日産 新型「キックス」助手席
日産 新型「キックス」リアシート
室内は意外なほど空間的余裕があり後席は広々としている(写真は「G」グレード)。

ぱっとアクセルペダルを踏み込んだときの加速感などを考慮すると、筆者個人の推しは、FWDでなく4WD。

カーブを曲がるときも、直進での安定性も、後輪の駆動力と電子制御ブレーキを統合制御する4WDはより能力が高い。

FWDの価格は、オプションが選べない「Xシンプルパッケージ」(299万9700円)にはじまり、多くはオプションの「X」(325万9300円)、快適装備が豊富な「X+」(354万9700円)、そしてぜいたく仕様の「G」(389万8400円)。

対するe-4ORCEの4WDは、「X e-4ORCEシンプルパッケージ」(334万9500円)、「X e-4ORCE」(359万9200円)、「X+e-4ORCE」(389万9500円)、そして「G e-4ORCE」(424万8200円)となる。 

日産 新型「キックス」プロパイロット
車線のトレース性が上がったプロパイロットはブルーのアイコンのあるボタンで起動する。

カメラの画角が120度に拡大して機能拡張した運転支援システム「プロパイロット」は全モデルで標準装備。これはおおいに評価したいポイント。

あとはカタログとにらめっこして、自分の好みで仕様を決めることをたのしんでほしい。 

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日産 キックス X e-4ORCE

全長×全幅×全高:4365×1800×1610mm
ホイールベース:2655mm
車重:1550kg
1433cc3気筒ハイブリッド 全輪駆動
システム最高出力:72kW+105kW(Fモーター)+50kW(Rモーター)
システム最大トルク:115Nm+315Nm(Fモーター)+140Nm(Rモーター)
乗車定員:5名
燃費:21.5km@l(WLTC)
価格:¥3,599,200
www.nissan.co.jp