船を舞台にしたクルーズ旅というと、どんなイメージを考えるだろうか。
「優雅そう」「老後の楽しみ」「いつかは乗ってみたい」「リタイアしてから」——。 そんなふうに、非日常感あふれる憧れの旅として思い描く人は多いはずだ。でも同時に、「自分にはまだ早いかな」と感じている人も、きっと少なくないだろう。
日本でもっとも知られている飛鳥クルーズは、日本のクルーズを語るうえで欠かせない存在。2025年に就航した最新の飛鳥Ⅲは、乗客約680名を誇る日本最大客船。とはいえ、飛鳥Ⅱより大きくなっただけではない。パーソナライズされた客室と、適度に行き届いたサービスが、客船クルーズの現在を教えてくれる。今回は、「神戸発着 初夏の週末 蒲郡」クルーズに参加してきた。
短い航海でも、船の魅力はしっかり伝わってくる
神戸港を出発し、蒲郡に寄港して神戸港へ戻る3泊4日のクルーズ。クルーズとしては短めだが、船内の設備やホスピタリティを知るには十分な内容だった。
6つのダイニング、9つのラウンジ&バーを備える飛鳥Ⅲ。バーやカジノなどのエンターテインメント施設に加え、プール、大浴場、サウナ、テニスなどができるマルチコート、ジムまでそろっているので退屈な時間はほとんどない。むしろ、食事やエンターテインメント、ウェルネスを心ゆくまで楽しもうとするなら、3泊4日では物足りないくらいだ。
今回は、飛鳥Ⅲならではの体験を3つの要素である「食」「客室」「寄港地観光ツアー」から紹介したい。
イタリア現地さながらの一皿(食)
優雅な客船の旅において、食はやっぱり欠かせない楽しみのひとつだ。飛鳥Ⅲには全部で6つのレストランがあり、夕食時に予約が必要なのは4つ。割烹「海彦(うみひこ)」、フレンチの「ノブレス」、イタリアンの「アルマーレ」、グリルレストラン「パペンブルグ」。このうち海彦とアルマーレは席料(¥11,000/ひとり)がかかる。いずれも人気が高く、4日間のクルーズでは乗船前に予約が埋まってしまうことも珍しくない。ただ、乗船後にキャンセルで空きが出ることもあるので、こまめにチェックしておくのがおすすめだ。
今回のクルーズでは「アルマーレ」を体験することができた。テーブルウエアの多くはジノリ製が使用されていて、料理が出てくる前から、まるでイタリア現地の素敵なリストランテにいるような気分になる。コースは全8品で構成されていて、好きな量を好きなだけオーダーできる(ワインなどのアルコールは別料金)。オマール海老や鮑、ハタといった素材(クルーズによって異なる)を目の前で見ながら、どれにしようかと迷う時間も、また楽しいもの。イタリアのオーセンティックなリストランテが洋上で楽しめるのである。
「フォーシーズンズ・ダイニングルーム」「エムスガーデン」(共に予約不要)では朝食・昼食・夕食は楽しめる。
部屋からの海景が、時間を変える(客室)
飛鳥Ⅲの客室は、すべて海側に面しているプライベートバルコニー付き。航海中にバルコニーから眺める夕日や水平線、波の音——これが移動の時間を「無駄な時間」から「贅沢なくつろぎの時間」へと変えてくれる。
客室は全9タイプ。ひとりでも泊まれる「ソロバルコニー」から、114.8㎡(バルコニー込み)もの広さを誇る最上級の「ロイヤルペントハウス」まで、幅広いラインアップが。今回は、船尾両サイドに位置する「パノラマスイート」を体験。リビングとベッドルームが分かれた間取り。バスルームも含め、どこからでも海を眺めることができる。そして船尾を見渡せるバルコニーに出ると、大海原に続く航跡が見え、船の側面に雄大な自然を残す淡路島に美しい夕陽が沈んでいった。こんな経験は船旅でしか味わえない特別なものだ。客室は静かで上質なプライベート空間。高級ホテルに滞在しているような心地よさで船の揺れもほとんど感じない。
地元の文化を特別体験(寄港地観光)
クルーズ船の楽しみは、寄港地の名所をめぐることにもある。飛鳥Ⅲのクルーズでは寄港地観光ツアーが企画されていて、今回のクルーズでも蒲郡港では3つのツアーが用意されていた。そのひとつ「豊川稲荷と竹島・パワースポットめぐり」は、商売繁盛や開運で知られる豊川稲荷と八百富神社を、チャーターバスでめぐるツアー。昼食後に下船してバスに乗り込み、夕方には船内に戻るというゆったりとした行程。
フルアテンドというわけではなく豊川稲荷に着くと、ほどよいタイミングで自由行動になる。その後向かったのは、港近くにあるもうひとつのパワースポット、八百富神社。竹島にある弁財天だ。竹島にはほかにもいくつかもの神社があり島全体をのんびりめぐることができた。船に戻るのは17時ごろ。ディナーの前にシャワーを浴びて身支度を整えるのにちょうどよいタイミング。夕食が始まる直前の19時には、東三河に伝わる伝統文化「手筒花火」が岸壁で披露され、夕食前の参加者たちがデッキに勢揃いした。
「いつか」ではなく、「今」味わってほしい!
今回の旅程は船内を楽しもうと思うと、想像していた以上に忙しく感じた。すべてのレストラン、エンターテインメント、スポーツ、プログラムを体験しようとするなら、1週間ほどのクルーズでも、あっという間だろう。
日本の客船の旅を、新しいラグジュアリー体験としてやさしく味わわせてくれる飛鳥Ⅲ。船旅が少しでも気になっているなら「いつか歳をとって余裕ができてから」と先送りにせず、ぜひ今のうちに体験してみてほしい。飛鳥Ⅲは船旅の初心者からベテランまで幅広く満足させるコンテンツに満ちている。