メルセデス・ベンツ新型「Sクラス」試乗、140年の技術を注いだ“最大規模の進化”とは

  • 文:島下泰久
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クルマ全体を構成するパーツの実に半数以上を刷新する。それが尋常なことではないことは容易に想像できるだろう。実際、メルセデス・ベンツSクラスの長い歴史の中でも、これは文句なしに最大規模のマイナーチェンジになるという。すでに日本でも発表となっている、この新しいSクラスにドイツ・ハンブルクで試乗した。

実車を前にすると、あるいは写真で見ている以上に、デザインの変化が大きく感じられる。ラジエーターグリルは面積が20%、更にヘッドライトユニットは40%も拡大され、押し出しを強めたフロントマスクは威厳たっぷり。フロントのデジタルライト、そしてテールランプなど、あらゆる部分にスリーポインテッドスターがあしらわれているのもポイントだ。メルセデス・ベンツはいま、この長年親しまれてきたブランドシンボルを、モノグラムとしてデザインに積極的に取り入れているところである。

メルセデス・ベンツ 新型 Sクラス
メルセデス・ベンツ新型Sクラスが発表された。

インテリアも先進感が更に引き上げられている。目玉は、センターメディアディスプレイとパッセンジャーディスプレイを1枚の大きなガラスで覆ったMBUXスーパースクリーン。しかもその中身は、最新の車載OSであるMB.OSをベースとする4世代目のMBUXへと進化しており、ボイスコントロール機能は更に自然な対話が可能。ChatGPTやBing、Geminiなど複数のAIを用いるヴァーチャルアシスタント、Google Maps活用のナビゲーションなども採用し、より一層、先進的な使い勝手を手に入れている。

メルセデス・ベンツ 新型 Sクラス
スリーポインテッドスターをイメージしたテールランプ。

もちろん走りにまつわる部分も、大幅なアップデートが行なわれている。パワートレインについては、日本仕様として設定されるS450d 4MATIC、そしてS580 4MATIC longを中心に印象を伝えたい。

直列6気筒3.0ディーゼルエンジンを積むS450d 4MATICは、新たに触媒コンバータの電気式ヒーターが搭載された。これは低温始動時などに触媒の温度を速やかに上昇させて、排ガスのクリーン化を推し進めるものだ。

メルセデス・ベンツ 新型 Sクラス
1枚の大きな画面が迫力を生むMBUXスーパースクリーン。

それでも走りの印象は従来と変わらず、ディーゼルとは思えないほどのなめらかな吹け上がりと、まさにディーゼルらしいトルクの余裕を堪能させてくれる。同じようになめらかで力強くても、BEVとは明らかに走りの印象が異なるのは、身体に伝わる内燃エンジンならではのビート感のおかげだろうか。走りは実に心地よく、流しているだけで癒やされるような気分になる。

AIRMATICサスペンションが醸し出す乗り心地も、やはりとろけるようだ。しかも快適なだけでなく、雨のアウトバーンでも矢のように突き進む直進性や、姿勢がピタッとぶれない安定感が、さすがSクラス。快適性のアップデートぶりも著しい。

メルセデス・ベンツ 新型 Sクラス
内燃エンジンならではのビート感を感じさせる走りは、実に心地よく、癒やしすら与える。

注目はS580 4MATIC longだ。V型8気筒4.0ℓツインターボのM177 Evo.ユニットは、実はその中身がガラリと刷新されているのである。

なにより驚かされたのは、フラットプレーンクランクシャフトの採用だ。難しい構造の話には踏み込まないが、これまで使われていたクロスプレーンクランクシャフトが優れた回転バランスにより振動を抑制できるのに対して、フラットプレーンはなにより高効率。純スポーツカーなどには積極的に採用されているのだが、一方で振動が大きいという難点がある。

メルセデス・ベンツ 新型 Sクラス
AIRMATICサスペンションにより乗り心地は快適。雨のアウトバーンでも矢のように突き進み、姿勢がぶれない。

メルセデス・ベンツは、振動を抑えるアイテムであるバランサーシャフトを搭載した上で、敢えてラグジュアリーカーの最高峰Sクラスのエンジンに、このフラットプレーンクランクシャフトを使ってきた。それは何より効率性を重視したこと、そして技術により弱点を克服できるという自信、プライドの賜物と言える。

実際、実用域ではエンジンの静けさ、なめらかさに不満を抱く余地はなく、質の高い走りっぷりを味わうことができる。嬉しくさせられたのは、更にアクセルを踏み込んだ時。高回転域での伸びのよい吹け上がり、レスポンスのよさは紛うかたなきフラットプレーンの美点であり、それがまさに運転の歓びを倍加させていたのである。

メルセデス・ベンツ 新型 Sクラス
更にアクセルを踏めば、運転の歓びをより感じることができる。

オプションとして用意されるE-ACTIVE BODY CONTROLは、4輪それぞれの車高調整機能を備え、前方カメラの映像や各種センサーから得た走行データにより車両姿勢を制御するもの。常に車体をフラットな姿勢に保ち、なんとコーナリングでもほとんどロールを感じさせることがない走りっぷりは異次元の感覚と言える。

しかも、側面衝突の危険を感知すると、衝撃を効果的に吸収するべく車体を浮かせる機能まで備わる。つまり快適装備であり、また安全装備でもあるというわけだ。

変更点はまだまだ多く、とてもすべてに触れることは難しい。ともあれメルセデス・ベンツのフラッグシップが、つまりはラグジュアリーカーのベンチマークが、一層の進化を遂げたことは間違いない。

実は今年は今年はカール・ベンツの最初のガソリンエンジン車登場から140年。自動車なるものを世に生み出したメーカーの矜持のようなものを感じさせる、新しいSクラスである。

メルセデス・ベンツ

www.mercedes-benz.co.jp