デザイナーが1970年代にフランスで出逢ったラガーシャツが、このブランドのボーダーTシャツの始まりとなった。やがてこのTシャツはブランドを象徴するアイコンとなり、上質で上品なフレンチカジュアルの着こなしに欠かせないアイテムとして、女性にも男性にも長く愛され続ける、ブランドを代表する名品となった。
「大人の名品図鑑」アニエスべー:ボーダーTシャツ編 Podcast
普遍の名品を、その歴史や周辺のカルチャーとともに徹底解説していく『大人の名品図鑑』の音声版。ここでは、動画や記事で紹介できなかったエピソードを中心にトークを展開する。案内人を務めるのは、フリー編集者の小暮昌弘とスタイリストの井藤成一。毎月上旬に公開。
映画『ヌーヴェルヴァーグ』が映し出す、ボーダーTシャツの魅力
『勝手にしやがれ』でジャン=ポール・ベルモンドとともに主演を務めたのは、ジーン・セバーグ。“セシルカット”と呼ばれるショートカット、アンクル丈のジーンズ、そしてボーダーTシャツを披露、この映画によって一躍世界的なトップ女優の地位を獲得した。『ヌーヴェルヴァーグ』で、ジーン・セバーグを演じたのは、ゾーイ・ドゥイッチ。リンクレイター監督とは『エブリバディ・ウォンツ・サム!! 世界はボクらの手の中に』(16年)以来のタッグで、ゾーイはセバーグを彷彿とさせるスタイルと演技を見せる。
今回取り上げる名品は、両作品に印象的に登場したボーダーTシャツだ。多くのブランドがボーダーTシャツを手がけているが、その代表としてフランスを代表するアニエスベーのボーダーTシャツを紹介しよう。
ラガーシャツから生まれた、ブランドを象徴する一枚
アニエスベーというブランドが生まれたのは1975年。名品のボーダーTシャツが生まれたのは、創業から2年後の1977年。同ブランドのHPには、フランスでラガーシャツを製造する業者との出会いが書かれている。
「ラガーシャツはボーダーの厚いコットン地を裁断してつくられていますが、アニエスベーは、その生地を特別な色で染め、襟なしのTシャツをつくろうと思いました」
つまりスポーツ用のユニフォームから発想されたのがアニエスベーのボーダーTシャツで、現在でも本物のラガーシャツに近い厚いコットン地で、洗濯しても型崩れしない素材を使って仕立てられている。
ブランド誕生前から育まれていた、ボーダーという発想
2024年に出版された『アニエスベー ストーリーズ』(青幻舎)を読むと、実はボーダーTシャツの誕生の前日譚が載っている。デザイナーのアニエス・トゥルブレは、自分のブランドを立ち上げる前の1966年、『ポリー・マグお前は誰だ』という映画のための衣裳の制作を依頼される。この作品は有名ファッションカメラマンとしても知られるウィリアム・クラインが監督、1960年代のパリのモード界を風刺的に描いた意欲作で、モデルが太いボーダー柄のTシャツを着用して登場する。このTシャツこそ、彼女が映画のためにデザインしたものだ。のちにブランドのアイコンとなるボーダー柄のTシャツは、彼女がブランドを立ち上げる以前から温め続けていたアイデアだったのだろう。
1980年代、フレンチカジュアルの定番へ
2016年に出版された『アニエスベー スティリスト』(青幻舎)には、「アニエスのとても私的なスタイルがいつしか普通の女性たちのスタイルにはなったのは、1980年代のことだ。(中略)1980年代に彼女がデザインした服のほとんどは、いまでもクローゼットから出して着たくなる……」と書かれている。
藤原ヒロシも魅了された、時代を超える一枚
一枚着こなしに取り入れれば、たちどころにフレンチの香りをもたらす彼女のボーダーTシャツに魅了されたのは、女性だけではない。フランスや日本だけでなく、世界中の男性にも愛用された。日本のストリートファッションを牽引してきた藤原ヒロシもそのひとりだった。前述の『アニエスベー ストーリーズ』には「1986年頃、当時はスケートボード用として着ることが多かった。というのも、海外の雑誌でスケーターたちがボーダーのTシャツを着ているのを見て憧れていたから」と書いている。
ラガーシャツから生まれたアニエスベーのボーダーTシャツは、フレンチカジュアルを象徴する一枚となり、映画からストリートまで、時代を超えて愛され続けている。
『ヌーヴェルヴァーグ』
全国ロードショー中
© 2025 ARP - Detour Development LLC
配給:AMGエンタテインメント
https://nouvellevague-movie.com
アニエスベー
TEL:0120-744-800
https://www.agnesb.co.jp










