【空海と真言の名宝展】33年に一度の秘仏も。密教美術の至宝が東京国立博物館に集結

  • 文&写真:はろるど
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国宝『五智如来坐像』 平安時代・9世紀 京都・安祥寺

弘法大師空海の生誕1250年を記念し、東京国立博物館では特別展『空海と真言の名宝』が開かれている。真言宗十八本山と関係寺院に伝わる国宝15件、重要文化財60件を含む寺宝、あわせて88件が一堂に会する、稀有な機会だ。会場を歩き進めるうち、空海が説いた教えが日本各地に浸透し、1200年もの歳月を経てなお受け継がれてきたことが、実感として胸に迫ってくる。

空海が伝えた、密教美術という「教え」

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国宝『五大尊像』 鎌倉時代・12〜13世紀 京都・醍醐寺 ※前期:不動明王、降三世明王

空海の生涯における最大の功績は、中国・唐で体系化された密教を日本へもたらし、根付かせたことにある。その定着の過程で大きな役割を果たしたのが、空海自身も密教の理解に欠かせないと説いた密教美術だ。本展でも十二天屏風や五大尊像といった、大画面かつ極彩色の名品を通して、空海が伝えようとした密教の世界の一端をうかがい知ることができる。

密教の仏たちの姿は、経典の注釈書などによって色や形が細かく定められており、それを正確に伝えるために「図像」と呼ばれる絵画が用いられてきた。別尊雑記や覚禅鈔は、そうした図像を収集・研究した成果として知られる貴重な資料。また唐本曼荼羅図像は、平安から鎌倉・南北朝時代にさかのぼる17点の密教図像のうちの1点で、唐から請来された図像を伝えている。極彩色ではなく白描でありながら、精緻で迫力ある表現も見どころだ。

東寺に受け継がれる、真言宗最高の法会 

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重要文化財『聖観音菩薩・梵天・帝釈天立像 (二間観音)』 鎌倉時代・13世紀 京都・教王護国寺[東寺]

後七日御修法(ごしちにちみしほ)ゆかりの寺宝が特別に出品されている。後七日御修法とは、1月8日から14日までの7日間、鎮護国家や五穀豊穣、玉体安穏などを祈願し、各派の山主らによって営まれる真言宗最高の法会のこと。空海が晩年に強く望み、宮中で始まったこの儀式は、今も京都・教王護国寺[東寺]へと受け継がれている。

なかでも目を奪われるのが、かつて宮中の仁寿殿にて天皇の無病息災を祈るために営まれた儀式の本尊「二間観音」だ。希少な白檀から彫り出された像本体には截金模様がほどこされ、華やかな色彩の台座、精緻な金属製の光背とあわせて、当代一流の技術が結集している。通常は厨子の中に安置されているが、さまざまな角度から拝観できるケースの中に展示。法会に参列してもその姿を仰ぐことはかなわないだけに、まさに一期一会の対面といえる。---fadeinPager---

名作絵巻が語る、二つの寺院の物語

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重要文化財『石山寺縁起絵巻』 巻第一(部分) 伝高階隆兼筆 鎌倉〜南北朝時代・14世紀 滋賀・石山寺 ※前期展示

後七日御修法をともに取り仕切る、真言宗各派総大本山会の寺院に伝わる名宝にも目を向けたい。信貴山縁起絵巻は朝護孫子寺の中興開山・命蓮の説話を描いた絵巻で、飛倉巻には命蓮が信貴山から鉢を飛ばして托鉢していたところ、それを渋った長者の蔵ごと空へ飛ばしてしまったという奇跡のエピソードが展開している。一人ひとりの台詞まで聞こえてきそうな生き生きとした表現を見ていると、院政期四大絵巻の一つとして名高い作品であることにも頷かされる。

石山寺縁起絵巻は、石山寺の創建と本尊如意輪観音の霊験を伝えるもので、巻第一には良弁による寺院建立の場面が描かれている。手がけたのは鎌倉時代後期に活躍した宮廷絵師、高階隆兼の工房だ。掘り出した銅鐸を良弁に見せる場面なども、鮮やかな彩色とともに表されている。奈良時代、聖武天皇の願いによって良弁が創建した石山寺は、平安時代前期に醍醐寺の聖宝が初代座主となり、真言宗の寺院となった。

約40体の仏像、そして扉の奥から、秘仏が姿を現す

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重要文化財『十一面観音菩薩立像』 平安時代・9〜10世紀 三重・観菩提寺

真言宗各派の貴重な仏像が約40体も一堂に会する中、とりわけ見逃せないのが、通常は厨子や扉の奥深くに大切に守られ、目にすることの叶わない各地の秘仏。実に9件11体もの秘仏が、この機会に公開されている。三重・観菩提寺本堂の十一面観音菩薩立像は、33年に一度しか開帳されない秘仏本尊。像高2メートルを超える大きさにも圧倒されるが、やや険しい顔の表情や頭部の大きいアンバランスなプロポーションも特徴とされる。

初期密教彫刻の代表作とされる、五智如来坐像が会場のラストを飾っている。五智如来とは、大日如来が備える5つの知恵を象徴する仏像のことで、5体揃って伝わる同像としては現存最古の例として知られている。またこの隣に展示された甲斐源氏ゆかりの平安仏、愛染明王坐像も強い存在感を放っている。両手で弓矢を持つのが定型だが、顔の前で弓矢を構える姿がとてもユニーク。こうした仏像とじっくり対峙する時間も、本展最大の醍醐味となりそうだ。

※会期中、一部作品の展示替えを行います。

弘法大師生誕1250年記念 特別展『空海と真言の名宝』

開催期間:開催中〜2026年9月6日(日)
※前期展示:7月14日(火)〜8月9日(日)  後期展示:8月11日(火・祝)〜9月6日(日)
開催場所:東京国立博物館 平成館
東京都台東区上野公園13-9
開館時間:9時30分~17時 ※毎週金・土は20時まで
 ※入館は閉館の30分前まで
休館日:月。ただし8/31は開館
 ※8/10(月)は本展は休館(東博コレクション展のみ開館)
 ※8/31(月)は本展のみ開館(東博コレクション展は休館)
観覧料:一般¥2,300
https://tsumugu.yomiuri.co.jp/kukai2026/

はろるど

アートライター / ブロガー

千葉県在住。WEBメディアを中心に、アート系のコラムや展覧会のレポートを執筆。日々、美術館や博物館に足を運びながら、作品との出会いや発見をSNSにて発信している。趣味はアートや音楽鑑賞、軽いジョギング。そしてお酒を楽しむこと。

はろるど

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千葉県在住。WEBメディアを中心に、アート系のコラムや展覧会のレポートを執筆。日々、美術館や博物館に足を運びながら、作品との出会いや発見をSNSにて発信している。趣味はアートや音楽鑑賞、軽いジョギング。そしてお酒を楽しむこと。