今月のおすすめ映画①『ドラマなふたり』
愛する人の「最悪の過去」とは?“罪”を巡る新感覚のラブストーリー
結婚式を目前に控え、幸せの絶頂にいるカップルのチャーリーとエマ。付き添い人の親友カップルとともに出向いた、披露宴のメニューを決める試食会で、4人は酒も入りすっかり酔っ払ってしまう。そこで、これまでにしてしまった最悪の行いについて、ひとりずつ打ち明けていくゲームをすることに。最後に順番がまわってきたエマは面白い話を期待され、チャーリーさえ知らなかった衝撃の過去を話し始める。その場の空気は一変して凍りつき、チャーリーはこの日以降、エマに対して疑心暗鬼に陥っていく……。
本作のメガホンをとったのは、尖ったブラックユーモアを効かせた作風で知られるノルウェーの鬼才、クリストファー・ボルグリ。肥大化した承認欲求から破滅的な自作自演を繰り返す女性を描いた『シック・オブ・マイセルフ』(2022年)は、現代のソーシャルメディア社会を風刺した傑作として高く評価され、一躍注目を集める存在となった。ノルウェー人であるボルグリは本作で、外部からの冷静な目線で現代アメリカの抱える社会問題を観察する。それと同時に、愛する相手のことをすべて知りたいという欲求と、そのすべてを本当に受け止められるのかで逡巡する、恋愛における普遍的な感情も探求している。
ボストンの小洒落たカフェでエマとチャーリーが運命的な出逢いを果たす序盤から、弦楽器による不協和音が流れ、どこか不穏な雰囲気が醸し出される。一見ロマンティックなラブストーリーのルックを纏いながら、観客の心をゆさぶる演出が見事だ。前作『ドリーム・シナリオ』では「キャンセルカルチャー」をテーマのひとつとして扱った。本作でも、モラルや倫理を巡る意識が高まる現代において、「過去の罪をどう捉えるべきか」という問いを突きつける。

『ドラマなふたり』
監督/クリストファー・ボルグリ
出演/ゼンデイヤ、ロバート・パティンソンほか
2026年 アメリカ映画 1時間45分 8/21よりTOHOシネマズ 日比谷ほかにて公開
---fadeinPager---
今月のおすすめ映画②『左利きの少女』
iPhoneで台北の夜市を捉える!麺屋台を営む母娘3人の物語
5歳のイージンは、祖父から利き手である左手を「悪魔の手」と言われたことがずっと気になっている。一方、シングルマザーである母親は貧しい中で懸命に働き、ティーンエイジャーの姉は家族になにか秘密を隠しているようだ。iPhoneで撮影された臨場感あふれる映像は、台北の夜の街に生きる彼女たちの姿を活写している。第97回アカデミー賞作品賞を受賞した『ANORA アノーラ』のショーン・ベイカー監督が、共同脚本と製作、編集に名を連ねる。
『左利きの少女』
監督/ツォウ・シーチン
出演/ニーナ・イエ、マー・シーユエンほか
2025年 台湾・フランス・アメリカ・イギリス合作映画 1時間48分 8/14よりヒューマントラストシネマ有楽町ほかにて公開
---fadeinPager---
今月のおすすめ映画③『プライベート・ケース』
予期せぬ患者の死が導く、極上の心理サスペンス
パリで暮らすアメリカ人の精神分析医、リリアン。長年診ていた患者の突然の死を知るが、ある違和感から他殺を疑い出し、独自に捜査を始める。時を同じくして、なぜか涙が止まらなくなる謎の症状にも悩まされてしまう。やがて映画は虚実が曖昧となりながら、彼女の深層心理にも立ち入っていく。果たして、リリアンが最後にたどり着く真相とは? ハリウッドを代表する名優、ジョディ・フォスターが全編フランス語で演じ切った。
『プライベート・ケース』
監督/レベッカ・ズロトヴスキ
出演/ジョディ・フォスター、ダニエル・オートゥイユほか
2025年 フランス映画 1時間47分
新宿武蔵野館ほかにて公開中



