いま注目すべき腕時計をデザインの視点から切る、雑誌『Pen』で好評連載中の「並木教授の腕時計デザイン講義」。今回のテーマは「グラデーションダイヤルのダイバーズ」。
実用時計に物語を与える、繊細に移ろう色彩の情景美に注目!

ダイバーズウォッチには、防水性はもちろん堅牢性や視認性を徹底して追求する「武骨な実用時計」というイメージが先行してきた。だが近年、その道具としての力強さに、より豊かな表情を与えるアプローチが目立つ。代表例が、色の濃淡や質感によって奥行きを生むグラデーションダイヤルだ。海中で使うための腕時計が、色彩の移ろいや立体的なテクスチャーを取り入れ、自然の情景やスポーティさを表現するようになっている。
その背景には、ダイヤルを装飾する技術の高度化がある。ラッカー塗装の重ね塗りや緻密な型打ちパターン、レーザー加工といった技術によって、光の反射や色の深みを繊細にコントロールできるようになった。かつては針やインデックスを読み取りやすくするための背景だったダイバーズウォッチの文字盤が、いまや腕時計の世界観を伝える重要な要素へと変化しているのである。
鮮やかなグリーンや青緑、あるいはクールなブルーといったカラーが、文字盤の内側から外側へと静かに深みを増していく。明るい中心部はそれぞれのキャラクターを際立たせ、外周へ向かう陰影は全体を引き締める。こうした階調が、装飾表現として腕時計のデザインに抑揚と洗練をもたらす。
現代のダイバーズウォッチは、武骨な実用時計という枠組みを超え、美と機能が高度に融合したエモーショナルなタイムピースへと進化している。都市生活の中でも、グラデーションダイヤルは個性やストーリーを宿し、感性を刺激し続けるのである。
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1.GRAND SEIKO(グランドセイコー)
Ushio 300 Diver SLGB025
島国・日本を取り巻く潮流の躍動感からその名が付けられたダイバーズウォッチ。澄んだ海の浅瀬の透明感を映し出すグリーンダイヤルは、潮の流れを思わせる型打ちパターンにカラーグラデーションを重ね、光の角度によって海の広がりや流れを感じさせる。視認性を高めつつ、強靭なブライトチタン製外装と、日本の美意識を融合させた一本だ。
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2.LONGINES(ロンジン)
ハイドロコンクエスト コモンウェルスゲームズ
国際総合スポーツ大会「コモンウェルスゲームズ」のオフィシャルウォッチとして誕生した記念モデル。最大の魅力は、大会カラーに着想を得たティール(青緑色)からブラックへと移り変わるラッカー仕上げのグラデーションダイヤルだ。鮮やかな青緑が深海を思わせる漆黒へと沈み込むさまは、堅牢なダイバーズに都会的で奥深い表情を与える。秒針のアクセントカラーも個性を引き立てる。
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3.MONTBLANC(モンブラン)
モンブラン アイスシー オートマティック デイト ゼロ オキシジェン
字盤には、モンブラン北壁にあるメール・ド・グラース氷河から着想を得た「スフマートグレイシャー模様」を採用。19世紀由来のグラテボワジ技法によって氷河のような質感を表現し、深淵をのぞき込むかのような立体感と、冷気を帯びたブルーのグラデーションが目を奪う。過酷な環境に耐える本格的な探検仕様を備えつつ、文字盤に紡がれた自然の物語が、芸術的な存在感を放っている。

並木浩一
桐蔭横浜大学教授/時計ジャーナリスト
1961年、神奈川県生まれ。1990年代より、バーゼルワールドやジュネーブサロンをはじめ、国内外で時計の取材を続ける。雑誌編集長や編集委員など歴任し、2012年より桐蔭横浜大学の教授に。ギャラクシー賞選奨委員、GPHG(ジュネーブ時計グランプリ)アカデミー会員。著書に『ロレックスが買えない。』など多数。
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