【ベントレー コンチネンタル GTC マリナー試乗】「ベルサイユのばら」はどんな馬車を選ぶのか? 麗人オスカルが抜くサーベルのごときコンバーチブル 第247回東京車日記

  • 写真&文:青木雄介
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「コンチネンタル GT スピード」をベースに世界最高峰のコーチビルダーが手掛けた一台。

ベントレーのコンバーチブル旗艦モデル「コンチネンタル GTC マリナー」に乗った。マリナーとはもともと1760年創業の馬車製造会社(コーチビルダー)に由来する。自動車が普及してからはロールスロイス、ベントレーのビスポーク仕様によるインテリア架装で名を馳せた。その後ロールスロイスの買収を経て、ベントレーのコーチビルド部門(オーダーメイド)に名が引き継がれた。

かつての王族や貴族が競ってつくらせた馬車さながら、約460億通りから“世界に一台だけ”の仕様を実現する。このクルマも22インチの専用ホイールをはじめ、丹念なキルティングのレザーシート、天然石の特殊パネルなど、贅が尽くされている。

18世紀の美意識を、現代のラグジュアリーへ

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 工芸技術を尽くしたインテリア。サイドパネルのラインは、馬車の曲線を現代的に翻訳された。

その組み合わせには、マリナーからの提案が含まれている。陶磁器のような白に入れる挿し色は、ファンデーションのような肌色やリップカラーのような紫でフェミニンだった。『ベルサイユのばら』の王女なのに騎士としてふるまうオスカルのような、性別という境界線を軽やかに踏み越える美学が感じられるんだな。

運転席にいるだけでダージリンの香りもするし、チェンバロによる宮廷音楽だって聴こえてくる。現代の意匠の中に、クラシックの息吹が組み込まれている。走り出すとその印象はさらに濃度を増す。特にEVとして走るコースティング走行が素晴らしいのね。

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ブライトリングとのコラボによる専用クロック。 

アクセルを足さず、引かず、速度を落とさない。ドライブモードを「ベントレー」にして走ると、自分の重さを忘れたように前へ進んでいく。魔法の馬車が石畳を滑っていくような感覚があって、さらに路面から少し浮いているようなホバークラフトめいた滑走感がある。その滑る感覚に身体はゆったり包まれていながらドライバーの感覚はしっかり覚醒していて、クルマの輪郭がぼやけることもない。多くのGTにあるヨットのようなゆれも抑えられている。

優雅な馬車から、俊敏なスポーツGTへ

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マリナー・シートエンブレムの刺繍。カラーウェイに合わせたアクセントカラーで仕立てられる。

キャンバスルーフだから静音性は密閉されたクーペほど高くない。遮断された静けさではなく外世界のノイズがじんわりとにじんでくる。やがてバッテリーを使い切るとV8エンジンが主役になる。

エンジン音は遠くで鳴っている。それでもV8とわかる音に、モーターや遮音材や車体の厚みがレイヤーをかけていく。胸にしまいこむような密やかさがあり、ベントレーの歴史そのものを響かせる演出でもあり、古くからのオーナーへの敬意とも感じられた。

首都高速に上がりモードを「スポーツ」に入れると、当代きってのスポーツGTとしての顔をのぞかせる。コーナーでは剣技さながらに、狙ったラインを寸分違わずトレースする。重さは品と風格に言い換えられ、鉄の馬車が優雅に高架上を疾走していく。その二律背反は、マリナーの性別を超える二面性と呼応している。

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ソフトトップを閉じると後席にまわり込む美しいラインが浮かぶ。

オスカルが魅力的なのは、女性であることを隠したからではない。軍服を着ることでしか自由になれない、その矛盾を引き受けたからだ。「コンチネンタル GTC マリナー」も、これまでのベントレーがそうであったように、重さも装飾もクラシックさも全部引き受けて圧倒的に速い。そこに18世紀から現代に続く覚悟と哲学をも感じられるのだ。

ベントレー コンチネンタル GTC マリナー

全長×全幅×全高:4,850×2,015×1,425㎜
エンジン:V型8気筒ツインターボ+電気モーター
排気量:3,996cc
最高出力:782PS
最大トルク:1,000Nm
駆動方式:AWD(四輪駆動)
車両価格:¥50,000,000〜

ベントレーコール
TEL:0120-97-7797
www.bentleymotors.jp