8月28日公開の『時には懺悔を』は、『嫌われ松子の一生』『告白』などを手掛けた中島哲也監督が、打海文三の同名小説を映画化した話題の最新作。中島監督が20年近く映画化を目指し続けた作品にかける思いとは――。
人はなぜ、映画に心を動かされるのか——。「映画」が我々の心をゆさぶり、震わせるのは、そこに宿る熱量、つまりは“想いの強さ”なのかもしれない。たくさんの人の想いが重なって紡がれる映画というメディア。そこにどんな“チカラ”が宿っているのか、一緒に見ていこう。
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人間の光と影を見つめ、映画の可能性を追求する
『時には懺悔を』は打海文三の同名小説を原作に、18年もの構想期間を経て完成した渾身の一作だ。『時には懺悔を』は打海文三によるミステリー小説に惚れ込んだ中島哲也監督が20年近く映画化を目指し続け、ようやくスクリーンへと送り出すことができた作品だ。
「この物語の登場人物たちはそれぞれ問題を抱えていて、欠点のない美しい人は出てきません。でもひとりの障がい児の存在によって少しだけ前を向いて生きていく決意をする。そんな希望のある話をどうしても映画として届けたくて、おもに原作の人間ドラマの部分を補強して脚本を書きました」
監督にとって障がいの当事者である子どもの起用は必然だった。理学療法士の安田一貴がスペシャルニーズスーパーバイザーとして参加。「この映画をつくるために絶対に必要な存在」と振り返る。
「安田さんには子どもたちのキャスティングの段階からお世話になり、現場にも帯同していただいて、あらゆることを教えてもらいました。ケアの仕方などをご両親にも見ていただき、嘘のないシーンになったと思います」
どのように撮影するか、いつも葛藤する現場
“人間”を捉えたいという思いから、「99%手持ちカメラで、俳優さんの顔のアップが多くなった」と、これまでの監督作とは異なるアプローチについて語る。
「今回だけに限らず、現場ではいつも葛藤しています。このシーンをどう撮影しようか、どんなことを俳優さんに伝えて演技のポテンシャルを上げてもらうかを毎日考え抜きますから、『今日は楽な一日だった』という日はないですね」
監督が映画というメディアの懐の深さを再認識した作品だと語るのが『ブルータリスト』。ホロコーストを生き延び、戦後に渡米した建築家の人生の光と影を描いた215分に及ぶ一大叙事詩だ。
「主演のエイドリアン・ブロディの芝居、撮影の仕方、音楽、すべてに衝撃を受けました。背景となる社会をきっちりと描きながら、声高になにかを主張するよりも、人に裏切られ、ときには裏切りもする主人公の生き方をリアルに切り取っている。人間のゴツゴツとした魅力をフィルムに焼き付けている作品だと思いました。久しぶりに、映画にはまだまだできることがあると感じさせてくれました」
劇場での上映と配信、それぞれの価値が語られる時代だからこそ、監督自身は映画づくりそのものに意識を向けている。
「スクリーンで映画の世界に触れる体験はとても特別なものです。その一方で、手の中にあるスマートフォンで観ることにも価値があるという意見がありますよね。映画をどのような環境で届けるのかは監督だけで決められることではなく、さまざまな立場の人たちが考えていくことなのかなと。僕自身は劇場用と配信用を意識して分けるのではなく、つくりたいと思う映画を撮り続けていけたらいいと思っています」
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