【出口夏希×蒔田彩珠が語る『ルックバック』】「地元の友達みたい」なふたりが演じた藤野と京本、是枝裕和監督との撮影秘話

  • 写真:濱田英明、筒井義昭 
  • スタイリング:佐藤里沙(be natural)、小蔵昌子
  • ヘアメイク:渋沢知美(beauty direction)、上野知香 
  • 文:細谷美香
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藤本タツキの傑作漫画を、是枝裕和監督が実写映画化した『ルックバック』。藤野と京本を演じた出口夏希と蒔田彩珠は、創作を通して惹かれ合うふたりの関係をどう捉えたのか。秋田での撮影や是枝組の現場を振り返りながら、ふたりがどのように役をつくり上げたのかを聞いた。

人はなぜ、映画に心を動かされるのか——。「映画」が我々の心をゆさぶり、震わせるのは、そこに宿る熱量、つまりは“想いの強さ”なのかもしれない。たくさんの人の想いが重なって紡がれる映画というメディア。そこにどんな“チカラ”が宿っているのか、一緒に見ていこう。

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右:出口 夏希(でぐち・なつき)●2001年、中国生まれ。モデルとしてキャリアを始め、19年に女優デビュー。昨年は『か「」く「」し「」ご「」と「』『万事快調〈オール・グリーンズ〉』で主演を務めた。『あの星が降る丘で、君とまた出会いたい。』が公開中。 ジャケット¥71,500、シャツ¥63,800/ともにオロヒー(オン・トーキョー ショールーム☎03-6427-1640) パンツ(参考商品)/マメ クロゴウチ(マメ クロゴウチ オンラインストア www.mamekurogouchi.com)
左:蒔田 彩珠(まきた・あじゅ)●2002年、神奈川県生まれ。7歳で俳優デビュー。12年に是枝監督が演出したドラマ『ゴーイング マイ ホーム』以降、是枝組の常連に。主演作に『ハピネス』『消滅世界』など。『BYE BYE LOVE探偵はBARにいる』が12月25日公開。 ドレス¥539,000、ベルト¥160,600(参考価格)、ピアス¥152,900/すべてジバンシィ by サラ・バートン(ジバンシィ ジャパン  TEL:0120-218-025)

真逆だからこそ惹かれ合う。出口夏希と蒔田彩珠が捉えたふたりの関係

ともに漫画を描きながら、藤野の背中を見つめる側の京本と、見つめられる側の藤野。出口夏希と蒔田彩珠は、変化していく関係性と距離感をどのように捉え、カメラの前に立ったのだろうか。

出口は、「本当に真逆なふたりがこんなにもお互いのことをずっと想っているって、すごいことですよね。藤野は自我が強くてなんでもはっきり言うけど、それを京本が受け入れてくれるから、ふたりの関係が成立しているのだと思います」と語る。一方で蒔田は、「藤野が引っ張っているようで、実は京本が引っ張っている。ちぐはぐなふたりだけど、お互いが自分に足りないものを補い合っている関係性だと思うんです。明るくてまっすぐな藤野には、背中を追いかけたくなるかっこよさがあるなと思いました」と話す。

LB_04_20250305_LB-KV3225-final.jpg『ルックバック』2026年9月11日公開 監督・脚本・編集/是枝裕和 原作/藤本タツキ 出演/出口夏希、蒔田彩珠、七瀬ふうり、岡田六花ほか 1時間39分©藤本タツキ/集英社 ©2026 K2Pictures・集英社

これまでNetflix『舞妓さんちのまかないさん』などで共演を重ねたふたり。『ルックバック』では才能への憧れや嫉妬、言葉にできない敬愛を抱え創作と向き合う藤野と京本を確かな実在感で立ち上げるが、実際の関係性は自然体だ。蒔田にとって出口は「いつでも会える地元の友達みたいな存在」。出口も「秋田から帰って、休みの日に東京でも会ってたよね。お芝居についての話をすることはほとんどないので、こうして改めて仕事の話をするのはちょっと照れくさい(笑)」と明かす。

互いの俳優としての魅力について話が及ぶと、蒔田は出口の集中力に驚かされたと振り返る。本番直前まであっけらかんとしていた出口が、相手の顔を見た瞬間にふっと涙を浮かべる。その切り替えの早さに、「私はそういうシーンがある日は朝から緊張しているタイプなので、すごいなと思っていました」と語った。そう聞いた出口は照れながらも、蒔田の佇まいに支えられていたようで、「緊張しているようには全然見えなくて、いつもすっと立っている感じがしました。余裕な顔でいてくれるから、私も緊張せずにお芝居できた気がします」と話す。

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是枝裕和監督と秋田・にかほで過ごした、撮影の日々

彼女たちの呼吸が自然に重なり合う芝居の背景には、是枝裕和監督が大切にしている、風通しのいい現場づくりがあった。「是枝監督はカメラが回っていないときの私たちの行動をよく見ていて、それを役に取り入れることがあるんです」と出口。蒔田も、「『さっきのテストと同じことをやってみてほしい』と言われても、意識せずに動いていたときには覚えていなかったりもして(笑)。台本があるのに全部アドリブみたいな現場でした」と振り返る。

そんな是枝監督を、出口は「近所のおじさんが見守ってくれるような温かい雰囲気」と表現する。緊張せずに話しかけやすい現場だったという言葉に、蒔田も頷く。「学校の帰り道に立っていて、『おかえり』って言ってくれるような存在というか。監督は現場をゆらゆら歩き回っていて、そこも好きでした」。出口も「うれしそうな顔をして、いつもたどり着くのはお菓子が置いてある場所でしたね」と笑う。

監督だけでなく、スタッフの支えも大きかった。蒔田は漫画の練習の日々を「私たちのスケジュールに合わせて漫画の先生方も時間をつくってくださって。なかなか難しいことなので、大きな愛を感じました」と振り返る。

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秋田県にかほ市で、四季を通して行われた本作の撮影。ふたりにとってそれは、まるで長い休みのような幸せな時間でもあったという。「おいしいごはんを食べて、たくさん寝て。ふたりでのんびり部屋で過ごした日もあります」と出口。夏にはスイカ割りや花火も楽しみ、心に余裕のある撮影期間だったと蒔田。そして、「なによりもこの作品の雰囲気をつくり上げてくれたのは、雪。にかほだからこそ、こんなに素敵な画が撮れたと思います」と続けた。

美しい春夏秋冬の景色と、音にも耳を澄ませてほしい。出口がそう語ると、蒔田は藤野と京本の子ども時代を演じた七瀬ふうり、岡田六花の存在にも触れ「あの子たちが始めた物語をぜひ映画館で見届けてほしいです」と話した。原作への敬意を礎に積み重ねられた時間そのものが、スクリーンに息づいている。

※出口と蒔田、是枝監督の撮りおろし写真と、三人が詳細に語った本作の魅力や制作現場の様子はぜひ本誌にてご覧ください。

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