
クストスは昨年創業20周年を迎えた。21歳にしてブランドを立ち上げた若き創業者サスーン・シルマケスに、その節目の年から1年が経ったいま、新たな取り組みの成果である新作について伺った。1本目は「チャレンジ ジェットライナー “アート” テツジ アオヤマ」。日本人アーティスト、青山哲士とのコラボレーションだ。
心を揺さぶるアートが、唯一無二の腕時計に昇華する
「青山さんとはオンラインでは話していたのですが、その後、銀座でk家族全員と食事を共にする機会がありました。そこで話が盛り上がって、ぜひやってみましょうということになりました」
しかし当初、青山は原画をそのまま複写できると思ったが、うまくいかなかった。それは50色以上のカラーを使った細かい絵だったからだ。
「青山さんにとっては初めての時計のコラボレーションでしたからね。私たちも自分たちが得意とする、ラッカーを使ったクロワゾネ技法を用いたいと提案したところ、よりシンプルな作品を制作してくれたのです。私はそれを感性で選びました。もちろん作品にはフィロソフィーがあり、バックグラウンドにはストーリーがあります。しかしそれ以上にこの作品を見た瞬間に、何よりもその美しさに感嘆したのです。そして次にその感動をどうやって時計で表現するかということに集中しました」
はたして誕生した時計の反響は想像以上だったという。
「当初、日本市場だけに考えていたのですが、私たちのアンバサダーがぜひ自分たちも欲しいといったのです。日本のアーティストであり、世界的にまだ知られているわけではないのにも関わらず、こんなに反響が高いとは思わなかったので本当に驚きました」
スケルトナイズドした文字盤に浮かび上がった女性のモチーフが、時刻によってその手の位置が変わり、まるで感情を表すような違った印象を与える。
「そう、まさに生きる絵画なんです。完成までには、青山さん本人と我々のデザインチームの間で細かくステップバイステップで進めました。そのかいあって、創作とテクニックと製作の3つがうまく融合した結果になりました。そしてブランドにとって新しい門戸が開かれたことを実感しました」
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コラボレーションが、ブランドに豊かな振り幅をもたらす
そしてもう1本は「チャレンジ K. ハチャノフ カーボン」。テニスプレーヤーのカレン ハチャノフとのコラボレーション第2弾で、前回のアルミニウム合金に代わり、カーボンを採用した。
「カレンは時計が大好きで、企画のスタートからメッセージや画像のやりとりを続け、試作を何度も重ねてカーボンでやろうということに決まりました。ピュリティと名づけたメゾンムーブメントはブリッジに前回の真鍮から今回ルテニウムを使ってます。ムーブメントもエクスクルーシブですし、カーボンもそれぞれ固有のパターンなので、本当に世界に一本の自分だけの時計を実感できるでしょう」
それも限定生産するコラボレーションの醍醐味なのだろう。
「新しいマーケティングの方針としても、コラボレーションするそれぞれのパートナーが自分の時計だという意識を強く持つということを大事にしています。カレンも自身が気に入っているからこそ毎日時計を着けているし、契約上そうしなきゃならないからではなく、好きだから愛用しているのです」
そうした中から新たな発想が生まれ、シリーズとして拡張していくのである。
これらの2本は、前者がアートの領域を強く打ち出すのに対し、後者はよりデザイン&テクニックな側面を追求した、まったく対称的な位置づけにあるといっていいだろう。コラボレーションはこうした豊かな振り幅をブランドにもたらしている。
ブランドの個性を際立たせる、多彩なパートナーシップ
さらに他には、シガーの新世代であるカバリエ・ジュネーヴとの「チャレンジ ジェットライナーⅡ P-S オートマティック カバリエ シガー」や、テキーラの最高峰ブランドのバラハスと組んだ「チャレンジ ジェットライナー テキーラ バラハス」など、ユニークかつ多彩なパートナーシップを展開している。
そこには、シルマケス自身の興味関心やプライベートなライフスタイルが強く投影され、価値観の共通するパートナーを引き寄せていることが伝わる。
「やっぱり人間関係はとても大事だと思います。お互いに共通点がなければなりませんし、熱量の違いがあったり、モチベートしていても相手がそうでもなかったら途中で頓挫します。グランドメゾンの場合、パートナーがオーナーと直接話し合える機会は少ないかもしれませんね。でも私たちは直接全員と頻繁にコミュニケーションを取り、人間関係を築く。それが彼らにとっても一つのモチベーションになり、プロジェクトの成功につながっていると思います」
20年というブランドの歴史は、スイス時計ではけっして長くはない。しかしシルマケスというひとりの人間が経験を培い、成長するのと歩みをともに、クストスも進化を続ける。コラボレーションもその涵養のひとつであり、マニュファクチュールとして発展したいまもそんな現在進行形の面白さがそこにあるのだ。
フランク ミュラー ウォッチランド東京
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