【スイス・チューリッヒ探訪】街のシンボル、フライターグ「前編」。街スナップ&工場がある本社の潜入レポ<着る/知る Vol.207>

  • 写真・文・編集:一史
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スイスの大都市チューリッヒにて。フライターグを背負った女性。

「フライターグ(FREITAG)と一緒に暮らすことは、ひとつの生き方の表明なのかもしれない」
ポップな色が印象的なこのバッグブランドの奥深さに気づいたのは、スイス最大の都市であるチューリッヒを訪れた2026年8月末だった。

チューリッヒ空港にほど近いターミナル駅であるチューリッヒ中央駅から電車に乗り、わずか5分で最寄り駅に着くフライターグ本社と製造工場。同じくチューリッヒ中央駅から歩いて巡れる旧市街と新しいカルチャーエリア。そこには自転車が好きなスポーティで健康的な人々がいた。歴史上で一度も国王がいたことがない共和国ならではの、民衆が築いてきた質素な街並み。豪華でラグジュアリーな“気取り”は、この都市の本分ではないようだ。

グラフィックアートなフライターグが、グレイッシュな街並みに彩りを添える。愛用者の心を笑顔にするおもちゃのようなグッズ。「お洒落に持たねば」などと迷う必要はないのだろう。どんな服装のときも荷物を詰めてガッと肩に突っ掛ればOK。フライターグは持ち運べる日常の道具箱だ。

このバッグがスイス人に愛されるもうひとつの理由。それはリサイクル素材で作られていること。薄汚れた使用済みのトラックタープ(荷台の幌)が、立派な新品に生まれ変わっている。道路沿いに衣類のリサイクルボックスが設置され、スーパーにオーガニック食品が並ぶ同都市の住人が誇りを持てるブランドに違いない。

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上写真2点ともチューリッヒの街中を走るトラック。荷台を覆っている幌が防水性が高いターポリン素材。デザインを仕事にしていたフライターグ兄弟が、日々目にしていたトラックからバッグ作りのアイディアを思いついた。

このたびのフライターグ及びチューリッヒ紹介記事は、前編・後編の2回でお届けする。今回の前編<街スナップ&工場がある本社のレポート>は、フライターグが息づく街の風景と製造工程に迫る。後編はクリエイティブ・ディレクターへのインタビューに加え、チューリッヒの観光ガイドも添えた。
なお掲載の各写真には、とくに注釈が必要なケースを除きキャプションをつけていない。皆さんがインスタグラムのごとくお好きに解釈していただくことを願って。

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フライターグ×チューリッヒ

フライターグがある都市風景。愛用者たち、直営店、取り扱い店、フライターグの社員……。

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オフィス、倉庫、製造ファクトリー

フライターグ本社があるエリアは、工場が立ち並ぶ工業地帯。“お洒落な”土地を拠点にしないのが彼ららしいスタンスだ。東京で例えるなら、あたかも芝浦の倉庫街。都市中心部からもほど近い。
リサイクル素材を使う1点もの手作りバッグに必要なほぼすべての工程がここで行われている。ただし縫製だけは近隣諸国への発注。縫うまでの生地の裁断、できあがった製品の発送(日本からのネットオーダー品もここからの発送!)も自社で手掛けている。

●トラックタープを解体する

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フライターグの年間製造量は、スモールグッズも含め約40万点にも及ぶ。必要なトラックタープの量は約130トン。消耗品として定期的に廃棄されるトラックタープをヨーロッパ各地から集めて活用。
原材料のストックルームで主に行われるのは解体作業。金属のバックルやハトメなどの使えない箇所を切り離す。その後の洗浄の工程にスムーズに進めるように、横長の幅を短くカットするのもこの部屋。

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●バッグに合う素材を選ぶ

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バッグの型にもっとも合う素材を見つけ出す工程。有害物質の検査もしっかりと行ったあとに解体されたトラックタープがここに運ばれる。
上写真でロール状に巻かれた布の棚の上部に位置するのが、この素材を使うバッグの型。

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フライターグの製品はアップサイクル品なため、素材を選ぶ時点でデザインが始まっている。

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●汚れを洗う

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洗ったトラックタープを吊り下げて乾燥させる。

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解体されたトラックタープを洗うのも大切な工程。1回で約10枚洗える巨大洗濯機を何台もフル稼働させている。使う水は地下にあるプールのような貯水タンクに溜め込んだ雨水。汚れが落ちやすいように温めて使っているが、CO2排出量に配慮されたエネルギーミックスに基づく電力を利用。社会を守っていくSDGsの考え方はフライターグにとって当たり前の常識のようだ。

●手作業で切り出す

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トラックタープの切り出し方で、図案のニュアンスが大きく異なってくる。バッグの型を生み出すのは企画担当者の役割であっても、この部署で働く職人たちは1点もの製品における実質的なデザイナーと呼んで差し支えないだろう。
手作業での切り出しは、縫い代の線が描かれた透明樹脂の型紙を置きカッターを動かす。製品にはゴムでできたブランドロゴのタグも縫い付けられるため、その位置も計算して作業される。

●レーザー照射でマーキングして切り出す

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特殊な構造を持つ一部のバッグでは、裁断用にハイテクのマシンも使われる。スタッフが目視しつつ緑色のレーザー照射でマーキングして、その形が自動でコンピュータープログラムされる。その後に刃がついたマシンによる自動制御で裁断。
上写真でモニタの赤く塗られた箇所が、バッグに使われるもの。実に無駄なく配置されている。元は廃棄されるはずだった布を再利用する製品作りであっても、さらに無駄をなくすのがフライターグの流儀だ。

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自動裁断されたパーツは、巨大なヘラのような道具で回収。こうして生み出された本体と、ファスナーやベルトなどのパーツが提携の縫製工場に送られる。
なお縫製国は、ポルトガル、チェコ、ブルガリアといったバッグ製造ではあまり耳馴染みがない国ばかり。スイスから距離が近いことが理由のようで、運送で排出されるCO2を削減している。

●客の愛用品を修理する

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長く使うことをモットーにしているフライターグは修理部門にも力を入れている。日本にも併設している店があるが、スイス本社にも導入されている。手慣れたスタッフが壊れた縫製、空いた穴などを直していく。レンタルサービスや客同士の交換イベントなどを企画し、モノとの付き合い方を大切にする同社らしいアフターサービスだ。

●皆で一緒に笑い合う

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社員食堂のカフェにやってきた、25年に就任したばかりの現CEOのジャニーン・ワイズ=ビューラー(Janine Weiz-Bühler)(左)、創業者兄弟の兄マーカス・フライターグ(Markus Freitag)。

フライターグを物語る要素で欠かせないのがユーモア。社内にはあらゆるところで社員のパーソナルなお遊びの私物が見つかる。オフィシャルなユーモアは、世界発信するビジュアル表現にて。その素晴らしく楽しいビジュアルやイメージ戦略については、この記事の後編である<クリエイティブ/スイス観光編>にてお届けしよう。現クリエイティブ・ディレクターであるトーマス・ウェイクフォード(Thomas Wakeford)のインタビューをぜひご一読を。チューリッヒ観光局に教えてもらったお墨付き観光スポットも見逃しなく!

→後編に続く
ttps://www.pen-online.jp/article/022309.html

FREITAG

https://freitag.ch

チューリッヒ観光局

www.zuerich.com/en


スイス政府観光局

www.myswitzerland.com/ja

高橋一史

ファッションレポーター/フォトグラファー

明治大学&文化服装学院卒業。文化出版局に新卒入社し、「MRハイファッション」「装苑」の編集者に。退社後はフリーランス。文章書き、写真撮影、スタイリングを行い、ファッション的なモノコトを発信中。
ご相談はkazushi.kazushi.info@gmail.comへ。

高橋一史

ファッションレポーター/フォトグラファー

明治大学&文化服装学院卒業。文化出版局に新卒入社し、「MRハイファッション」「装苑」の編集者に。退社後はフリーランス。文章書き、写真撮影、スタイリングを行い、ファッション的なモノコトを発信中。
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