【中世ヨーロッパを描く銭湯壁画をAIで修復】50年続いた浴場が「黄金湯 新宿店」に。サウナと露天風呂も誕生

  • 文:佐藤季代
Share:
庭を望むラウンジ。ソファなどの家具も新素材研究所が手掛け、杉本博司がデザインした松竹図襖絵が伝統芸能の舞台空間を想起させる。

東京・東新宿で50年にわたり親しまれてきた金沢浴場が、7月に「黄金湯 新宿店」として再生した。

1-1.jpg
銭湯絵を修復し、緑を基調に彩色した浴室。浴槽を拡張するとともに、アーチ天井が光を導き、包容力のある空間をつくり出している。photo: Omote Nobutada

設計を担当したのは、永山祐子建築設計。隣接するコインランドリーや事務所を取り込み、番台や共用部を拡張。サウナやバースペースを融合させ、新たな交流拠点へと更新した。永山は「新宿という街が持つ多層性を空間に活かし、浴場の記憶を次世代へと継承したいと考えました」と語る。

2.jpg
建物の低層部は、モノトーンを主体に現代的に刷新。半世紀にわたり地域に親しまれてきた浴場が、街に開かれた新たな表情を見せる。photo: Omote Nobutada

そうした考えは、建物に刻まれた痕跡を活かしながら、新たな素材や色、光を重ねる改修に表れている。その象徴となるのが、浴室の核となる中世ヨーロッパの風景を思わせるモザイクタイル壁画だ。欠損部はAIも活用して修復しつつ、浴室全体に新たに敷き詰めたタイルと緑を基調とした彩色により、全体が自然につながるグラデーションを描き出した。加えて、後年の改修で付けられた天井パネルを剥がし、創建当初のアーチ天井を復元。光を導くやわらかな曲面が、懐かしさと幻想性を併せ持つ空間をつくり出している。

また、新設されたサウナゾーンは、溶岩タイルを用いた男性用と、曲面に包まれるような女性用が、それぞれ異なる没入的な体験を生み出している。

記憶を尊重しながら新たな価値を重ねた交流拠点。失われつつある銭湯文化を次世代へつなぐモデルと言えるだろう。

3.jpg
バーカウンターやDJブースを新たに備えた番台。奥にはカウンター席を設けたラウンジが広がり、クラフトビールと音楽を楽しめる。photo: Omote Nobutada
4.jpg
サウナエリアに設けた男性用サウナ「THE ABYSS」。壁に貼った溶岩タイルと曲線的な造形が、洞窟へ潜り込むような没入感を演出する。photo: Omote Nobutada

 

5.jpg
地下水を利用した水風呂と外気浴スペース。半屋外に光を取り込み、左官仕上げの曲面壁と植栽が都心の住宅街に静かな余白を生む。photo: Omote Nobutada

 

黄金湯 新宿店

東京都新宿区新宿 7-22-11
金沢マンション 1F  


開場時間:12時30分〜翌9時30分
休館日:第1・第3火
料金:¥600(サウナ代は別途)

【設計者】永山祐子建築設計
永山祐子が2002年に設立。建築からインテリアまで幅広く手掛け、「ルイ・ヴィトン大丸京都店」「豊島横尾館」「東急歌舞伎町タワー」、大阪・関西万博のパビリオンなど多様なプロジェクトを展開している。