日本に上陸した、ボルボの新しいフラッグシップSUV「EX90」。この3列7人乗りの大型EV、堂々としたサイズながら走り出すと意外にも扱いやすい。
EVらしく加速はスムーズで、車内空間は静か。東京・青山の一般道から首都高速まで走った限り、速さを主張するというより、ドライバーを疲れさせない穏やかさのほうが印象に残った。
それはEX90の安全に対する考え方とも関係している。
発表会でボルボが繰り返し伝えようとしていたことは、人は常に完璧な状態で運転できるわけではない、ということ。人は運転時間の約80%を前方に視線を向ける一方、残り20%はほかの場所を見ているという。わずか数秒目を離した瞬間に予期せぬことが起これば、反応が間に合わないこともある。
そこでEX90は、周囲だけでなくドライバー自身も見守る。「ドライバー・アンダスタンディング・システム」が視線やステアリング操作などからドライバーの状態を把握し、必要に応じて運転支援システムと連携する。
もちろん、ただ警告を増やせば安全になるわけではない。不必要な警告が続けば、ドライバーはシステムを信用しなくなり、最終的には機能をオフにしてしまう。そのためドライバーの状態も把握しながら、適切なタイミングでアテンションする。安全装備そのものだけでなく、それを使う人間の心理まで設計の対象としている。
もうひとつ象徴的なのが、子どもやペットの置き去りを防ぐ仕組みだ。“置き去り”は、疲労や心配事、急な用事などが重なることで、誰にでも起こりうる。そこで車内のレーダーが、眠っている子どもの呼吸による胸のわずかな動きまで検知。乗員を残したまま施錠しようとするとロックを止め、ドライバーに知らせてくる。
ボルボは、疲労そのものも安全に関わると考える。EX90では車体構造の段階から振動を抑え、ピラー内部にも吸音材を使用。安全性能の一部として、静かで快適な室内をつくっているのだ。
こうした思想はいまに始まったことではない。ボルボは1970年から実際の交通事故を体系的に調査し、そのデータを安全技術の開発に反映してきた。人がなぜ事故を起こし、なぜ負傷するのかを研究してきたのだ。
事故の瞬間に人を守るだけではなく、その手前ある人の弱さから考える。このフラッグシップは最新技術を誇示するものではない。ボルボが長年積み重ねてきた安全思想をアップデートした姿だ。
ボルボ・カー・ジャパン
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