【深圳に突如現れた“巨大な白い岩”】屋根の上を歩ける、規格外の文化施設

  • 文:宮田華子
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深圳/中国

 

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© Blackstation

ビル群を背景に、まるで風船かカプセルのような近未来的なオブジェが並ぶ不思議な光景が広がっている。

これはこのほど完成した、中国・深圳の海辺に位置する巨大な文化施設「深圳湾文化広場(Shenzhen Bay Culture Square)」だ。

設計を手がけたのは、建築家の馬岩松(マ・ヤンソン)が率いるMADアーキテクツ。約5万1000㎡の敷地に、延床面積約18万8000㎡の施設を有する。建物をひとつの巨大な箱として見せるのではなく、複数の建築ボリュームを地形のように配置し、屋根も公共空間として利用している点が特徴だ。

 

公園 MAD_Shenzhen Bay Culture Square_04_Zhang Chao.jpg
© Zhang Chao

深圳の都市風景のなかで、建築とランドスケープの境界を曖昧にしながら、強い視覚的インパクトを生み出す野心的なプロジェクトだ。

屋根が、そのまま公園になる

深圳湾文化広場は、深圳人才公園と深圳湾に面している。起伏のある緑化屋根は公園へと連続し、東側では道路を地下化することで、地上を歩行者のための空間として開放した。

訪れる人は敷地のさまざまな方向から入り、緩やかな斜面を上って屋上の小径を歩き、深圳湾を望む場所へ向かうことができる。さらに歩道橋によって屋上公園と都市の街路網もつながり、都市、広場、海辺が一続きになる。

 

水 MAD_Shenzhen Bay Culture Square_05_Chen Jiaqi.jpg
© Chen Jiaqi

9つの石のような建物を分散して配置し、内部のアトリウムや動線によって各空間をつないでいる。館内には展示ギャラリーや公共教育スペース、デザインライブラリー、多目的劇場などを備え、屋外ではパフォーマンスやアートマーケット、フェスティバルなども想定されている。

MADは、巨大な文化施設を都市のなかに孤立したランドマークとして置くのではなく、公共空間として都市と海辺をつなぐことを目指した。屋根の上を歩くルートや公園、広場などを連続させ、文化施設を利用する人だけでなく、散策や休憩を目的に訪れる人も受け入れる。

 

上から MAD_Shenzhen Bay Culture Square_03_Zhu Yumeng.jpg
© Zhu Yumeng

「太古の未来」を建築にする

この建築を理解するうえで重要なのが、MADが掲げる「Ancient Future(太古の未来)」というコンセプトである。

 

太古 MAD_Shenzhen Bay Culture Square_08_Zhu Yumeng.jpg
© Zhu Yumeng

現代的な都市と、長い時間をかけて形づくられてきた海辺の自然。そのふたつをデザインによって重ね合わせるという発想だ。建物の高さは内陸側から水辺に向かって段階的に低くなり、開放的な空間をつくることで、敷地を横切る視線も確保している。

外壁には天然の白い花崗岩を用い、細長く帯状に加工した石材を曲面に沿って連続的に配置した。地面から立ち上がる建物というより、海辺に置かれた巨大な石が風景のなかに現れたような姿である。

 

花崗岩 MAD_Shenzhen Bay Culture Square_10_Zhu Yumeng.jpg
© Zhu Yumeng

都市と海をつなぐ文化施設

このプロジェクトは、深圳の「新時代十大文化施設」のひとつとして2018年に始まり、約8年を経て完成した。場所は南山区・後海地区。高層ビルが集まる都市側と、深圳人才公園、深圳湾、マングローブ湿地が広がる海側の境界に位置する。

 

つなぐ MAD_Shenzhen Bay Culture Square_12_Zhu Yumeng.jpg
© Zhu Yumeng

深圳湾は、東アジア・オーストラリア地域を移動する渡り鳥の重要な中継地でもある。MADは建築を低く分散した形態とすることで、周辺の自然環境や渡り鳥の飛行経路にも配慮し、屋上の緑地には在来種を植栽している。

「太古の未来」という一見相反する時間軸を、海辺の自然と現代都市をつなぐ風景として表現した深圳湾文化広場。巨大な建築をつくりながら、その存在感を抑え、都市の人々が使う公共空間へと変えている。こうした設計手法は、これからの文化施設を考えるうえでも興味深い事例といえる。

 

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