長年の愛用を経た服は、着る人自身を映す鏡である。大東駿介が語る服からは、生き方や自分らしくあることの大切さが伝わってくる。大東駿介が愛用するヨウジヤマモト プールオムのスカジャン。役者としてではなく、日常で自分を表現できる服とは———。
ファッションの楽しさは、最先端の美意識や価値観との出合いだけでは終わらない。むしろその後に続く長い時間にこそ、本当の醍醐味や価値があるはずだ。
2026秋冬ファッション特集
『いい服を、長く着る』
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ヨウジヤマモト プールオムのスカジャン
この刺繍を見るたびに、さまざまな記憶が蘇ってくる
「このスカジャンは10年ほど前、青山で購入しました。黒いシルク生地の品のよさと、そこに赤で鮮やかに刺繍が入っているのが魅力的で、ひと目惚れでした。スカジャンだけで5、6着は持っていますが、刺繍ならではの温かみと、それが入ることによってデザインが完成する感じが好きなんです。特にこだわりがあるわけではないのですが、ジャケ買いみたいなものですね」
いわゆるアメカジ、ヴィンテージ的な服の趣向というわけではないが、大東の話を聞くにつれ、彼の奥ゆかしい服との付き合い方が浮かび上がってきた。
「あまり服に固執することはないのですが、スカジャンだけは着ていた時のことを思い出すというか、服と一緒に記憶が蘇ることがあります。初めてスカジャンを買ったのは15年くらい前で、それを着て友人のライブに行った帰りに雨に降られて。あまり気にせず傘も差さず歩いていたんですが、1年後にそのスカジャンを見たら肩のあたりが色褪せていて、すごく色っぽかったんです。そう思うのと同時に、友人たちの顔が思い浮かんで、一緒に過ごした夜の記憶が鮮明に蘇りました。刺繍がほつれてきたとしてもそれが思い出に変わるというか、刺繍とともに時間が紡がれていく感覚が、僕にはあるんです」
服によってストーリーが紡がれ、その服がいつしか思い出のスイッチになる。大東はこれからも、スカジャンという服に人生のストーリーを重ねていく。
