見るからに素材の柔らかさが伝わってくるスリッポンシューズ。アウトソールがゴムの薄底で、あたかもロープロファイル・スニーカーのようでもある。見た瞬間に「いま履きたいフットウェア!」と感じた人は多いのではないだろうか。1970年代前後のビンテージのような佇まいも洒落心をくすぐる。
近ごろの男性のファッションシーンでは、スニーカーからレザーシューズへの移行が声高に叫ばれている。人気のファッションユーチュバーたちが異口同音に「ローファーを履きましょう」と薦めているほど。確かにスニーカーの快適さに慣れた身で、レザーシューズを選ぶならスリッポンシューズが最適かもしれない。
ただそのとき提案される「ローファー」というアイテム名に、違和感を感じる大人もいるのではないだろうか。特にアメトラを知る世代で、学生時代の制服がローファーだった人ならなおさら。どうしても大昔のアイビーやトラッドな服装と印象が結びつき、普段よく着る黒をベースにしたスポーティーモダンな服と相性が悪く思えてしまう。今季2026-27年秋冬は60年代のプレッピーが世界的なトレンドのひとつではあるものの(特に女性に)、服装をがらりと変える挑戦的な大人は限られるだろう。
そこで強い惹きを放つのがここに紹介しているスリッポンである。ベルトがないローファーともいえる“ヴァンプシューズ”。ベルトの代わりにオーヴァル型のヴァンプ(甲)が、足下に動きのあるグラフィック図案を与えている。
この一足ならアークテリクスのマウンテンパーカのようなテック系のアウターにもしっくり馴染みそうだ。人気が続くトラッカージャケットなどの短丈ブルゾンでもばっちり。パンツはルーズなワイドパンツでも、裾がフレアなブルーデニムでもイケる。最近復活してきた細身のブラックデニムもなんのその。ここには生真面目なローファーでは得難いスタイリッシュさ、色っぽさがある。
さらに物欲を刺激されるのが、カカトの芯を省いたスリッパ仕様であること。潰してクロッグサンダルのようにも履けるのだ。このクールなビジュアルにして近隣散歩のワンマイルシューズにも使え、職場で足を休められる実用性を併せ持つ。
手掛けたブランドはフランスをルーツに持つ復刻系のマルボー。日本のシューズデザイン界の雄である竹ヶ原敏之介が再始動させたブランドである。軍に納品してきたメーカーらしいトレーニングシューズのような味わいも表現された現代のスリッポン。竹ヶ原氏の仕事という所有する満足感も得られる。
ソフトなレザー素材のミニマルシューズは、厚底ダッドシューズやY2K復刻ランニングシューズでマンネリ化してきた我々の服装をアップデートさせる嬉しい存在。ほしい人は服装が軽快な秋に早く手に入れて存分に楽しむのが正解だ。
オーセンティック シュー&コー
Mail:info@authenticshoe.jp
www.instagram.com/marbot_neuvic_official/

ファッションレポーター/フォトグラファー
明治大学&文化服装学院卒業。文化出版局に新卒入社し、「MRハイファッション」「装苑」の編集者に。退社後はフリーランス。文章書き、写真撮影、スタイリングを行い、ファッション的なモノコトを発信中。
ご相談はkazushi.kazushi.info@gmail.comへ。
明治大学&文化服装学院卒業。文化出版局に新卒入社し、「MRハイファッション」「装苑」の編集者に。退社後はフリーランス。文章書き、写真撮影、スタイリングを行い、ファッション的なモノコトを発信中。
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