【ヴァン クリーフ&アーペル】詩情豊かに時を奏でる、天体と旅をテーマにした最新腕時計

  • 写真:渡邉宏樹(LATERNE)
  • 文:柴田 充
Share:
2026年の新作時計として登場した「ミッドナイト ジュール ニュイ ファーズ ドゥ リュンヌ ウォッチ」(左)と「ミッドナイト ユール ディシ エ ユール ダイヨール ウォッチ」(右)

「ポエトリー オブ タイム」という独自の時計制作の理念を掲げるヴァン クリーフ&アーペル。詩情が紡ぎ出す時のアートは天体とメティエダールへのロマンをかき立てる。天体の運行を幻想的に描く「ミッドナイト ジュール ニュイ ファーズ ドゥ リュンヌ ウォッチ」と、ふたつの時を優雅に結ぶ「ミッドナイト ユール ディシ エ ユール ダイヨール ウォッチ」。詩情と技巧が響き合う2本のタイムピースを紐解く。

天空と地上の重層に表現する、美しき時の深遠

vca_02_085ok_1-1.jpg
ブラックの艶やかな「ムラーノ アヴェンチュリン ガラス」に、ゴールドに精細なギョーシェ装飾で仕上げた太陽をあしらう。拡散する光の粒子も美しい。

大いなる天空の動きは、人類に時間の概念をもたらした。果たしてそれはロマンに満ちた時の始まりでもあったのだ。

ヴァン クリーフ&アーペルはこの壮大なスペクタクルに畏敬と創出の念を抱き、数多くのタイムピースを生み出してきた。独自の詩的な時の表現を追求するポエティック コンプリケーションでは、初期の2008年に「ジュール ニュイ」を発表し、太陽と月の動きを文字盤上でダイナミックに再現した。

そして一昨年のリニューアルに続き、最新作「ミッドナイト ジュール ニュイ ファーズ ドゥ リュンヌ ウォッチ」はこれをさらに進化させた。

068ok-b.jpg
月面を彫金で表現したケースバックには、マイクロローターにサファイアクリスタルを配し、エナメルやミニアチュールペインティングで地球や惑星を彩り、月からの視点を描く。

多層構造の文字盤は、太陽をアベンチュリンガラスの回転ディスクにゴールドで、月をマザー・オブ・パールで表現し、24時間で1周することで昼夜を示す。そして新たな機能として月の表示にムーンフェイズを加えた。月の満ち欠けの周期に合わせて、夜空に浮かぶ美しい月相が楽しめるのである。

さらにこの趣向はオンデマンドでも味わえる。8時位置のボタン操作によって、約10秒間で文字盤が1回転し、デイタイムでも隠れていた月が姿を現すのだ。

文字盤には、はるかな宇宙と時分針の指す地上の時間が重層する。そこに交錯し、刻み続ける時の深遠を感じることだろう。そんな思いを馳せる豊かな時間こそメゾンの本懐に違いない。

vca_01_051ok.jpg
ミッドナイト ジュール ニュイ ファーズ ドゥ リュンヌ ウォッチ/自動巻き、18KWGケース、ケース径42㎜、パワーリザーブ約36時間、アリゲーターストラップ、30m防水。¥26,532,000/ヴァン クリーフ&アーペル(ヴァン クリーフ&アーペル ル デスク)

---fadeinPager---

3層のディスクで表現した、神秘的な天体の動き

モデル名の「ジュール ニュイ」は、フランス語で「昼夜」を意味する。文字盤は、マザー・オブ・パールにギョーシェ装飾を施してグラデーションのペイントで地平線を表現した層と、太陽と星々を描いた回転ディスク、月相を表示するディスクの3層からなる。時刻設定やムーンフェイズの調整はリューズひとつで操作でき、シンプルさの裏に複雑機構を秘める。

vca_03_2026_Craftsmanship_VCARPESA00-07.jpg
底面には、MOPに星々をアクリルで描いたスポットを配し、24時間16分27秒で1回転して月相を表示するディスクを設ける。
vca_04_2026_Craftsmanship_VCARPESA00-9.jpg
その上に24時間で1回転する昼夜表示のディスクを配する。 
vca_05_2026_Craftsmanship_VCARPESA00-10.jpg
さらに3層目に地平線のプレートを重ねる。摩擦を抑え、スムーズに回転させるため、ディスクの重量を極限まで抑え、各層を極薄に仕上げることで全体の一体感を生み出す。ムーブメントの完成には4年がかけられた。

ミッドナイト ジュール ニュイ ファーズ ドゥ リュンヌ ウォッチの詳細はこちら

---fadeinPager---

ふたつの時を同時に示し、旅情を誘う美しきエナメルのアート

vca_08_072ok_1-1.jpg
アンバーブラウンのエナメル文字盤とローズゴールドが美しく調和する。一編の詩のような流麗な書体で綴られたモデル名が、詩情へのオマージュを注ぐ。

刻み続ける時間が永遠性を象徴するのと同様に、アートのもたらす感動も時を超越する。そしてそれは、飽くなき人間の創造性や卓越した技によって生まれることはいうまでもない。ヴァン クリーフ&アーペルのメティエダールは改めてそのことを教えてくれる。

今年装い新たに登場した「ユール ディシ エ ユール ダイヨール ウォッチ」だが、そのオリジナルは2014年に発表された。文字盤に対角状に設けたふたつの小窓には異なる時間帯をジャンピングアワーで表示し、その間には60分計測のレトログラード表示針を備える。

モデル名の「ユール ディシ(ここの時間)」と「ユール ダイヨール(あちらの時間)」は、この機能に由来する。新作は、旅心を誘う機構を継承し、これまでの42㎜から38㎜にケースをサイズダウンした。凝縮したフェイスを美しく彩るのが、伝統装飾のエナメル技法だ。 

vca_12_088ok_1-1.jpg
対角線上に区切った半円には、光輝く太陽とちりばめられた星々を背景にした月の姿がエングレービングされている。

エナメルの文字盤外周に放射状に広がるギョーシェ装飾と、中央部にはメゾンのホールマークであるひし形に由来するピケモチーフを配し、自社のエナメル工房でアンバーブラウンの半透明エナメルを施す。

特に中央のレリーフ状のモチーフを表現するため、吹きガラス技法を応用し、光の当たり具合で冷たさや温かみといった多彩な表情を見せる。同時に存在するふたつの時を表現するメティエダールなのである。

vca_07_022ok.jpg

ミッドナイト ユール ディシ エ ユール ダイヨール ウォッチ/自動巻き、18KRGケース、ケース径38㎜、パワーリザーブ約65時間、アリゲーターストラップ。¥8,250,000/ヴァン クリーフ&アーペル(ヴァン クリーフ&アーペル ル デスク)

---fadeinPager---

吹きガラスの技法に着想を得た、新発想のエナメル装飾

ジャンピングアワーをダブル搭載し、第2時間帯を表示するユニークな機構は、2014年に「ピエール アーペル」コレクションに初搭載された。18年に機構はそのままに、ミッドナイトのケースで発表。これをアップデートした新作はケースを小型化し、ムーブメントも自社設計に刷新した。吹きガラス技法から着想を得て新たに開発したエナメル装飾を注ぐ。

vca_09_VCARPEVI00_T3016_V3001_B0003_-17.jpg
中央のピケモチーフのエナメル装飾は、吹きガラス技法から着想を得た。
vca_10_VCARPEVI00_T3016_V3001_B0003_-21.jpg
まず均一に発色させるため、エナメルを500度以下で30時間以上熱し、その後、高温と1000度を超える超高温での2回の焼成を行うことで気泡を取り除き、成形に適した状態に整える。
vca_11_VCARPEVI00_T3016_V3001_B0003_-32.jpg
これに手作業で金型を押し当てて成形。さらに焼成を加えて完成する。ガラス装飾とエナメル工芸という双方を融合させた技術だ。

ミッドナイト ユール ディシ エ ユール ダイヨール ウォッチ詳細はこちら



Image_006.jpg

柴田 充(時計ジャーナリスト)

1962年、東京都生まれ。自動車メーカー広告制作会社でコピーライターを経て、フリーランスに。時計、ファッション、クルマ、デザインなどのジャンルを中心に、現在は広告制作や編集ほか、時計専門誌やメンズライフスタイル誌、デジタルマガジンなどで執筆中。

 

ヴァン クリーフ&アーペル ル デスク

TEL:0120-10-1906
www.vancleefarpels.com

関連記事