有元利夫から柳宗悦まで。ひとりの蒐集家が遺した“美の軌跡”をたどるオークションが開催

  • 文:Pen編集部
Share:

赤い三角形のような背景を従え、テーブルに頬を預ける人物。その静かな画面には、不思議な緊張感と詩情が同居している。

2026年11月21日に毎日オークションで開催される『Single Owner Collection 美の還流 次代へ繋ぐ審美眼の軌跡』の中でも、ひときわ目を引くのが有元利夫の作品『占いのテーブル』だ。1980年代の日本美術を代表する画家として知られる有元は、限られた活動期間の中で、夢と現実のあわいを漂うような独自の世界を築いた。この作品にも、どこか物思いに沈むような静寂と、時間が止まったかのような気配が宿る。

【使用画像】有元 利夫《占いのテーブル》.jpg
有元利夫『占いのテーブル』1979年 ©YOKO ARIMOTO

今回のオークションは、そんな注目作品を手にすることができる貴重な機会となり得る。これは、とあるひとりのコレクターが半世紀にわたって蒐集してきたコレクション約140点を出品するシングルオーナー・セールだ。しかし単なるコレクション放出ではない。毎日オークションが掲げるテーマは「美の還流」。人から人へ、時代から時代へと作品が受け継がれていく循環そのものに焦点を当てている。その審美眼の幅広さは、出品作の並びからも見えてくる。

受け継がれる多彩な美の名品たち

「民藝」という思想を世に広めた柳宗悦の『拜ム』、河井寛次郎の代表作『呉洲碗』、そして民藝の美を体現する『イタ(盆)』。用の美に宿る豊かさへ向けられた眼差しがある一方で、井上有一の力強い書『愛』のように、表現のエネルギーを凝縮した作品も収集してきた。

【使用画像】柳 宗悦・河井寛次郎・イタ.jpg
左:柳宗悦『拜ム』1960年 右:河井寛次郎『呉洲碗』、そして『イタ(盆)』

さらに、現代工芸の領域では池田晃将『百千流氷香合』や黒田辰秋『金根来捻四稜茶器』も登場する。最先端のデジタル表現を背景に持つ池田の作品と、漆芸の名手である黒田の仕事が同じコレクションに並ぶこと自体、この蒐集家の関心が時代やジャンルの枠に収まらないことを物語っている。

【使用画像】池田晃将・黒田辰秋.jpg
左下:池田晃将『百千流氷香合』2023年 © Terumasa Ikeda 右上:黒田辰秋『金根来捻四稜茶器』 

興味深いのは、本セールが「リザーブなし(最低落札価格なし)」で実施される点だ。作品の価値を市場に委ね、新たな持ち主との縁ある出会いを優先する。その姿勢にもまた、美術品を所有物としてではなく、次代へ託すべき文化として捉える意思が感じられる。

収益の一部は若手アーティストの支援に

加えて注目したいのは、オークション収益の一部は若手アーティストの支援に充てられる予定という点だ。過去の芸術家が生み出した作品が、新たな愛好家へ受け継がれ、さらに未来の表現者を支える力になる。今回の「美の還流」というテーマは、単なる理念ではなく、具体的な循環として示されることになる。

【使用画像】オークション風景.jpg
活気に満ちたオークションの雰囲気を味わうだけでも楽しめる。

11月19日から21日まで行われる下見会では、出品作品を一堂に展示。事前申し込みは不要だ。ひとりの蒐集家が半世紀をかけて築いた美の地図を、実際に辿ることのできる貴重な機会となるだろう。オークションに馴染みのない人にとっても、美術品との新たな出会いの場となるはずだ。

【使用画像】美の還流 次代へ繋ぐ審美眼の軌跡.jpg

 

『Single Owner Collection 美の還流 次代へ繋ぐ審美眼の軌跡』

開催日:2026年11月21日(土)
下見会:2026年11月19日(木)~21日(土)
開催場所:毎日オークション 東京本社
東京都江東区有明3-5-7 TOC有明ウエストタワー5F

主な出品作品
有元利夫『占いのテーブル』/井上有一『愛』/柳宗悦『拜ム』/河井寛次郎『呉洲碗』/池田晃将『百千流氷香合』/黒田辰秋『金根来捻四稜茶器』/ルーシー・リー『白釉青線文鉢』/ハンス・コパー『THISTLE FORM』 ほか。

www.my-auction.co.jp