【マッハ5の飛行】ESAが開発、コンコルド超えの実験機。ロンドン〜シドニーを3時間で結ぶ可能性も

  • 文:宮田華子
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Image courtesy of European Space Agency

ロンドンからシドニーまで、わずか3時間で移動できる時代がやってくるかもしれない。

そんな未来につながる技術の開発を欧州宇宙機関(ESA)が進めている。研究プログラム「インヴィクタス(INVICTUS)」は、音速の5倍にあたるマッハ5での飛行を目指す実験機の開発を通じ、次世代の航空・宇宙輸送に必要な技術の実証を目指している。

コンコルドの次を見据えた、マッハ5の実験機

2025年7月、ESAは英国のエンジニアリング企業フレイザー・ナッシュ社(Frazer-Nash)とともに、「インヴィクタス」の研究プログラムを発表した。滑走路から水平に離陸し、極超音速で飛行できる再使用型の機体と、その統合システムの開発を目標にしている。プロジェクトには、航空機メーカーのスピリット・エアロシステムズ社(Spirit AeroSystems)やクランフィールド大学も参加する。

目指す速度はマッハ5。かつて超音速旅客機コンコルドが実現したマッハ2を大きく上回る。ただし、「インヴィクタス」は乗客を乗せて飛ぶ旅客機ではない。極超音速飛行を支える推進システムや機体技術を試験するための研究開発プロジェクトだ。開発を通じて得られる知見を、将来の再使用型宇宙輸送機などに応用することが期待されている。

高温に耐え、水素で飛ぶための技術

極超音速飛行では、空気との摩擦や衝撃波によって機体表面やエンジンに取り込まれる空気が非常に高温になる。この熱への対策は、実現に向けた大きな技術課題のひとつだ。

「インヴィクタス」では、水素燃料を用いた予冷式の空気吸い込み型推進システムを検証する。エンジンに取り込む高温の空気を短時間で冷却し、極超音速飛行に必要な推進技術につなげる構想である。この冷却技術には、英国のリアクション・エンジンズ社(Reaction Engines)が開発してきた技術が生かされている。 

また、機体は飛行試験を重ねながら、素材やソフトウェア、推進システムを交換・改良できる設計を想定する。ESAは、こうした試験を通じて、将来のスペースプレーンに必要な技術を実際の飛行環境で検証することを目指している。

ロンドン〜シドニー3時間は実現するのか?

では、ロンドンからシドニーまで約3時間という移動は実現するのだろうか。これは将来の極超音速旅客輸送を想定した数字であり、「インヴィクタス」は上記したとおり極超音速飛行技術の実証を目的とした研究開発プロジェクトだ。ただし、ここで培われる技術が将来、高速旅客機に応用される可能性もある。

ESAは2025年11月、英国のコーンウォール宇宙港とスコットランドのマクリハニッシュを、「インヴィクタス」の試験候補地に選定したと発表した。今後は推進技術に加え、耐熱性や誘導制御、再使用に関わる技術の実証が重要となる。

航空機のように滑走路から離陸し、将来的には宇宙へのアクセスにもつながる技術。その実現にはまだ検証すべき課題が多いが、「インヴィクタス」は欧州が次世代の高速飛行技術を切り拓くための重要な一歩となりそうだ。


ESA公式Instagramより。ピカチュウのぬいぐるみがESAの宇宙飛行士とともに宇宙へ行き、話題となった。 @europeanspaceagency - instagram