京都で餃子?と侮るなかれ。全国区のあの店も京都発祥だ。関西の底力をご覧あれ。
1. ぎょうざ歩兵/祇園四条
祇園で愛される、ショウガたっぷりのひと口サイズ
京都の花街・祇園の一角、情緒あふれる巽橋から四条通までの「切通し」と呼ばれる通りに、いま最もおいしいと噂の餃子店がある。それが「ぎょうざ歩兵」だ。
なかでも人気なのは、祇園の芸妓さんや舞妓さんが食べやすいよう、小ぶりでニンニクやニラの代わりに高知産ショウガを使った「生姜ぎょうざ」。多い日には一日3000個仕込むが、ショウガは繊維を残すためにすべて手でおろす。水切りしたキャベツ、白菜、豚ミンチの中にショウガをたっぷり入れ、餡に粘りが出て伸びるぐらいまで練り上げる。薄さ1.35㎜のきめ細やかな皮は、包んでいるうちに手の上で伸びていくほど。繊細な羽根を口に含めば瞬時に溶け、中からじわりと旨味が染み出す。
その餃子を京の白味噌や甜麺醤など、中華味噌を数種と酢、唐辛子をペーストにした味噌ダレでいただく。このタレにもおろしショウガが大量に入り、いいアクセントに。この味噌ダレだけでも酒のアテになりそうだ。
店名は将棋の歩にかけて。「全国的に有名な『餃子の王将』が京都発祥なので、一歩ずつ近づいていければと。歩は前にしか進めないですしね」と店長の西林巧さん。ときには王様の壁にさえなる駒の実力は、ひっきりなしにお茶屋から出前注文が入ることからも如実に物語る。
ぎょうざ歩兵
住所:京都府京都市東山区清本町373-3
TEL:075-533-7133
※店舗情報が変更となる場合があります。事前に確認をお薦めします。
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2. ぎょうざ処 高辻亮昌/中京区高辻
野菜から調味料まで京都産で揃えた、生粋の京餃子。
肉は霜降りの京の都もち豚、キャベツは伏見の中嶋農園、甘みのある伝統野菜の九条ネギと、すべて京都産で勝負している「ぎょうざ処 高辻亮昌」。
かつお出汁をベースに料亭御用達の山利の味噌を入れ、調味料にいたるまで地のものと徹底している。毎日1500個仕込むという餡は、肉と調味料を入れ、大きめにカットしたざく切りキャベツなど野菜を入れさらに練る。
「練りすぎてもダメなんです、ちょうどいいタイミングは音で聞き分けます」と店長の今西貴広さん。これを、業務用クリーニングアイロン台を扱っているナオモト製の厚さ15㎝の鉄板で焼く。200℃の高温で、やわらかなもち肌の皮が外側がカリッと、中はしっとりと焼き上がる。
つけダレには、京都の東山にある村山造酢の千鳥酢を使った酢醤油と羅臼産のカラリと揚げた揚げ昆布が入った自家製ラー油、そして黒煎り七味をはらりと。京女のようにはんなりと、でもピリリと辛い、京餃子が味わえる店だ。
ぎょうざ処 高辻亮昌
住所:京都府京都市中京区高辻通新町西入 堀之内町263
TEL:075-201-6175
http://mrmd.co.jp/sukemasa
※店舗情報が変更となる場合があります。事前に確認をお薦めします。
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3. 誠養軒/上京区新健町
職人技が冴える、つるんとしたのど越しがじわり記憶に残る。
北野天満宮の門前町に中華料理店を構えて46年。店主の高田敬さんは二代目になる。ひなびたのれんをくぐると、テーブル席が2卓とカウンター席が5席のみ。街場の大衆中華料理屋かと思えばさにあらず。先客はフランス人2人組で英語のメニューも用意され、先代から通い続ける常連客がラーメンをすすっている。
胸を高まらせて席に着くと、ジューッと香ばしい音とともに出てくるのは、キツネ色に焼かれ半透明な皮からニラの緑が透けている餃子。口に運べば焼き目はサクッ、次第に餡と渾然一体になって、つるんとのどにすべり落ちていく。ニンニクやニラも効いてるが一片種のニンニクなので匂いはマイルド。具は野菜と牛と豚の合い挽きだが、端を少し開け包むので余計な油は落ちる。
毎日、皮も具も手づくりする。ほんの少しつけると風味が増す辛みそも自家製だ。随所に工夫が凝らされているが、素っ気ないほど説明書きもない。しかし話せば含蓄ある話を披露してくれる職人気質の店主のように、じわりと記憶に残る餃子なのだ。
誠養軒
住所:京都府京都市上京区新建町10
TEL:075-462-5073
※店舗情報が変更となる場合があります。事前に確認をお薦めします。
この記事はPen 2016年4/15号「1冊まるごとおいしい餃子。」特集より再編集した記事です。