アートプロジェクトプロデュース集団「WATOWA GALLERY」が、新たにギャラリー・インキュベーションスペースをオープン【代表・小松隆宏インタビュー】

  • 写真:溝口拓
  • 文:Pen編集部

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現代日本のストリートカルチャーやファッション、独創的なテクノロジーや「ジャパニーズ・フィロソフィー」を取り入れた若手アーティストを中心に、アート・コミュニケーションの場を提供するアートプロジェクトプロデュース集団「WATOWA GALLERY(ワトワギャラリー)」が、東京台東区・今戸にギャラリー・インキュベーションスペース「WATOWA GALLERY / THE BOX TOKYO(ワトワギャラリー / ザ・ボックス・トーキョー)」をオープンした。杮落とし展として、アーティスト藤元明による個展「海のバベル」を開催中だ。

今回、オープンにあたってWATOWA GALLERY代表の小松隆宏にインタビュー。活動に懸ける思いについて、話を訊いた。

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2011年にWATOWAを設立し、ファッションショーやイベントのデザイナー・演出家として活動していた小松。2019年にWATOWA GALLERYを立ち上げ、これまでは特定の場所を持たないアートプロジェクトプロデュース集団として活動してきた。

「もともとはファッションショーの演出だったりイベント制作を行ってきたのですが、アートエキシビジョンやショーをする際に、そのショーやエキシビジョン、プレゼンテーションをファッションショーの演出家のようなポジションでプロフェッショナルに活動する集団としてWATOWA GALLERYを立ち上げました。当初はその活動をするのに場所を持つ必要はなかったんです」

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活動をしていくなかでアート業界を知れば知るほど、アーティスト活動において場所を持たないメリットをそんなに感じなくなっていったという。

「いろいろな場所でエキシビジョンなどをやってきたのですが、そもそも日本ではどういった場所で作品を発表するのがいいのかを検討するフェーズがあまりないなと。一方で、世界のアーティストは歴史的背景を踏まえてこの場所でやりたい、自分の作品を発表するならここがいいと、場所ありきで考えている。そういう場所は日本にはあまりないし、そういった場所をつくっていきたいという思いもありました。場所を持つことで地に足をつけて、WATOWA GALLERYの活動のひとつとしてアーティストのプロモーションやアーティスト活動を生み出していく拠点があるというのは、海外を含めいろいろな交流を持つ際に有効そうだとも思ったんです」

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オープンにあたり杮落とし展として企画したのは、アーティスト藤元明による個展「海のバベル」だ。社会現象や環境問題をモチーフにした作品展示やアートプロジェクトを行っており、海洋ごみによって生み出される作品の、エネルギー溢れる力強さが印象に残るはずだ。

今回の展示では、昨年WATOWA GALLERYプロデュースにより開催された展覧会「海ごみのあと」からさらに進化した大型作品や、フィールドワークがより伝わる映像、さらにこれから始まる“海のバベル”プロジェクトの根幹となる思想や設計を見ることができる。

「明さんは僕らのところだけでなく、昔からいろいろなところで活動をしていて。僕が20代の頃から知っている方で、交流を持ってきました。今回のようなコンセプトの作品以外にもこれまでさまざまな作品をつくられてきていて、その作品だったり活動だったりはどれも本当に素晴らしい。そのなかでも僕が一番グッときたのが海ごみの作品でした。作品をエキシビジョンで見せていただいたり、彼のスタジオに行って話を訊いたりするとめちゃくちゃ良くて、作品も買わせてもらって。これをちゃんと社会に伝えて、作品を買ってもらえる存在になったらいいなと思っていました」

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国内外で評価される主要なアートムーブメントの多くは、ミュージアムの外で多様なジャンルのアーティストと支援者との交流によって生まれているのだという。藤元明もそんなひとつのアートムーブメントとして世界で認められる存在になってほしいと語る。

「明さんは我々がサポートする作家のひとりだし、彼はいろいろなアーティストさんたちと連携を取りながら活動をしているので、ひとつのアートムーブメントとして認められるようにサポートしていきたいとプロデューサーとして思いますね」

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今回オープンしたスペースは、ギャラリースペースWATOWA GALLERYおよび、アカデミックなプロジェクトや新しいアートシーンを育むための実験的なアートプロジェクト・インキュベーションを行う施設「THE BOX TOKYO」が共存。掲げるスローガンは、“この世代から始めるカルチャーを”だ。

「あえてファッション業界からアート業界に来ている意味というのは、ずっと日本の美術教育を受けて育ってきた人たちじゃない動き方が僕にはできるのではないかと信じていて、客観的に見てもっとこうした方がいいんじゃないかと思うところ、僕のファッション的な感覚とかビジネス的な感覚が生かせるのではないかと思っています。日本にはインターナショナルに活動していこうというアーティストが本当に少ないですし、こういう場所をせっかく持ったので、ここから新たなムーブメントの始まり、きっかけづくりになればいいなと思っています」

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WATOWA GALLERYおよびTHE BOX TOKYOには、アートって近づきがたいと感じている人にもぜひ訪れてみてほしいという。

「僕もアートって小難しいなとか、足を踏み入れづらいなとか思っている時期がありました。離れた存在に感じていたからこそ、聞きたくても聞けないような人たちが聞きやすいような形づくりを結構考えてきたので。うちのギャラリーに来るお客さんから、初めてアート買いましたとか、興味あるんですけどいう声を聞いたりしているので、気軽に見に来て、知りたいことがあれば気軽に聞いてもらえたらと思います。アートってなんなのか、アートって何がどう面白いのかという説明もいっぱいしたいと思っているので、日本の美術教育だけではないアートの可能性や、こんなにアートって面白いんだよ、それを買うことってこんなに価値があるんだ、ということを感じてもらえたら嬉しいです。自分に合った、好きなアーティストを見つけにくる感覚で、来てもらえたらいいなと思います」

アート業界、アーティストたちの新たな可能性を切り開く姿に注目だ。

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WATOWA GALLERY / THE BOX TOKYO

住所:東京都台東区今戸1-2-10 3F
休館日:火
https://watowagallery.com/

藤元明個展「海のバベル」

会期:〜9月30日(金) ※火曜定休
時間:12時~19時 
観覧料:ドネーション制(500円〜)
※台東区在住の方、芸術大学在校生は無料(顔写真付き証明書提出)
事前予約制、詳細は公式HPにて。