歴史とロマンに満ちた、 兵庫を発見する旅へ

  • photographs by © HYOGO TOURISM BUREAU

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姫路市にある、池に浮かぶかのような須濱神社。SNS映えするスポットとしても有名。祀られているのは水の神、子どもの守護神とされる市杵島姫神(いちきしまひめのかみ)。約400年前、ため池の水が枯れないようにという想いを込めて藩主が祀ったとされる。

但馬牛や山田錦、国生み神話の島など、日本の食材や文化のルーツに出合えるのが「兵庫テロワール旅」。唯一無二の体験が待っている。

日本海、瀬戸内海に中国山地と、海・山の恵みあふれる兵庫県。但馬・播磨・淡路・摂津・丹波の「五国」が育んだ、その土地ならではの魅力を味わってほしい――そんな思いから、県では「兵庫テロワール旅」と銘打ったキャンペーンを展開している。

一般に、「テロワール」とはワインの個性を生む土壌や気候といった風土・環境を指す。そこから、土地に根付く伝統や文化=テロワールを味わう旅という意味を込めての命名となった。

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「兵庫テロワール旅」のブランディングサイト(上奥)とロゴ(上)。お薦めのモデルコースやイベント情報が検索できるほか、兵庫の魅力を写真や動画で紹介するページもあり、見ごたえ満点。
https://hyogo-tourism.jp/terroir/

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より深く兵庫を知り、地元の人の想いに触れる

伝えたい思いは4つだ。まずは「ルーツや背景を伝える」ことと「地域性(ローカル)の追求」。ここでしか味わえない食や体験を通じ、より深く知りたいと感じてもらうことだ。たとえば、但馬牛。日本の黒毛和種のルーツをたどれば、その99.99%が一頭の但馬牛に行き着くという。他にも、酒米の王者・山田錦、伊弉諾(いざなぎ)、伊弉冉(いざなみ)の神々が日本列島の中で最初につくったとされる淡路島など、日本文化のルーツを感じられるポイントが兵庫には数多くある。

次に、「人の想いや技の継承」。豊かな風土や文化の恵みを活かすのは、人の手だ。サイトでは「テロワールな人」というページで、次世代へと伝統をつなぐ地元の人々を紹介する。中には、コウノトリの繁殖や野生復帰に力を注ぐ飼育員の動画もある。

それは、ブランドの謳う「持続可能性へのこだわり」にも通じるもの。地産地消、ハイキングやサイクリングを活用する旅のプランの提案もある。

2023年初頭からは話題の写真家ヨシダナギが撮り下ろした迫力あるビジュアルも展開予定。「楽しい」「おいしい」にとどまらない、兵庫テロワール旅の奥深さと地元の人々の気概を感じさせる写真が目を奪う。

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個性あふれる「ひょうご五国」

但馬(たじま)

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「天空の城」竹田城跡をはじめ、絶景が目白押しな但馬。豊かな自然が彩る季節ごとの美が味わえ、160万年前の火山活動が生んだ天然記念物「玄武洞」(上奥)や、ヨシダナギが撮影を行った、紅葉で知られる安國寺も必見だ。但馬牛、香住ガニ(上)などグルメ垂涎の地でもある。

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播磨(はりま)

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日本で初めてユネスコの世界文化遺産に登録された国宝・姫路城を抱く播磨。弥生時代から古墳時代にかけての遺跡や忠臣蔵の舞台・赤穂など、歴史散策スポットには事欠かない。皮革産業や播州織で知られ、酒米・山田錦や素麺「揖保乃糸」の産地でもある。

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淡路(あわじ)

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国生み神話の息づく淡路島。伊弉諾と伊弉冉が降り立ったオノコロ島は、絵島(上奥)とも、ヨシダナギが撮影の舞台に選んだ沼島(ぬしま)ともいわれる。鳴門のうず潮(上)や淡路人形浄瑠璃など見どころは豊富。四季折々の花が楽しめるほか、鱧、玉ネギ、線香など名産品も多彩だ。

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摂津(せっつ)

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神戸エリアと阪神エリアに二分される摂津。建築好きなら、芦屋にあるフランク・ロイド・ライト設計の重要文化財「ヨドコウ迎賓館(旧山邑家住宅)」(上奥)へ。また、清酒発祥の地・伊丹には、ヨシダナギの撮影でモデルとなった木村恭子さんが館長を務める武道場、修武館(上)がある。

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丹波(たんば)

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山盆地の広がる丹波。昼夜の寒暖差が大きいことを活かした黒大豆や小豆、栗などはブランドとして全国に名を馳せる。里山の美に魅せられる人々に支持されているのが、丹波立杭焼(上)。日本六古窯のひとつで、登り窯(上奥)を使って高温で焼く焼締めが特徴だ。

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ヨシダナギが撮り下ろした、兵庫のテロワールな人と地域

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上が沼島、下が但馬安國寺で撮影されたビジュアル。中央に立つのが修武館館長の木村恭子さんだ。ヨシダナギは言う。「私は四六時中、撮るタイプではないので撮影は特別な体験。撮影場所は私にとって新たなゆかりの地となり、また還ってこようと思います」 photographs by Nagi Yoshida

ヨシダナギが撮影を行ったのは、伊弉諾と伊弉冉の二柱の神が日本列島より先につくったオノコロ島とも伝えられる沼島(淡路エリア)と、紅葉で知られる安國寺(但馬エリア)。モデルとなったのは伊丹にある武道場、修武館の館長にして天道流第17代宗家の木村恭子さんとその門弟の皆さんだ。剣道・なぎなた・居合道を教える修武館で、なぎなたの師範として活動する木村さん。酒造りの町・伊丹では昔から、訪れた剣客が酒を酌み交わし、町の武道場を守っていた。そんなおもてなしの心、酒造りや武道の文化を象徴する存在として今回、木村さんに白羽の矢が立った。

「沼島という神話が息づく島と、山の匂いに包まれて幽玄の美が立ちのぼる安國寺。その2カ所に、凛とした気構えのある木村さんたちに立ってもらいたいと考えたのです」と、ヨシダナギは語る。

土地のスピリットを纏い、すっくと立つ木村さんたちの姿は、ここを訪れれば日本文化の神髄を感じられることを約束するかのよう。「誇りをもって自分の夢を持ち続けることに命を懸ける人を、私は撮り続けたい」――ヨシダナギの語るように、木村さんたちのような伝統文化を守り育てる「テロワールな人」が旅人を温かく迎えてくれる。その精神をも堪能することこそ、兵庫テロワール旅の醍醐味なのだ。

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「モデルさんには『胸を張って、背筋を伸ばして』とお願いすることが多いのですが、木村さんたちにはその必要がありませんでした」とヨシダナギ。機材協力:Profoto®

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ヨシダナギ
Nagi Yoshida

フォトグラファー。1986年生まれ。独学で写真を学び、2009年より単身アフリカへ。以来、アフリカをはじめとする世界中の少数民族を撮影、発表。唯一無二の色彩と直感的な生き方が評価され、17年、日経ビジネス誌で「次代を創る100人」へ選出。また同年、講談社出版文化賞写真賞を受賞。

問い合わせ先/ひょうご観光本部
TEL:078-361-7661
https://hyogo-tourism.jp/terroir/