ChatGPTが普及し、生成AIによる画像がSNS上で盛んに投稿されるなど、2023年はAI元年とも言える年だった。なかでも衝撃的だったのが、エポックメイキングな広告を多数発表してきたパルコから、背景からモデル、洋服、小物まで...すべてがAIで製作された広告が出てきたことだろう。手掛けたのは、クリエイティブ・ディレクターの木之村美穂だった。
Pen最新号は『いまここにある、SFが描いた未来』。SF作家たちは想像力の翼を広げ、夢のようなテクノロジーに囲まれた未来を思い描いてきた。突飛と思われたその発想も、気づけばいま次々に現実となりつつある。今特集では人類の夢を叶える最新テクノロジーにフォーカス。SFが夢見た世界が、ここにある。
『いまここにある、SFが描いた未来』
Pen 2024年6月号 ¥880(税込)
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「渋谷パルコは23年6月に開業50周年を迎えました。50年経ったパルコとして、次の時代に向けて新しい取り組みをしたい。そんな要望もあり、AIで制作してはと提案しました」
今回の制作でとくに苦労したのがAIに入力する、呪文と呼ばれるプロンプトの選定だ。
「たとえば具体的なブランド名を入れてしまうとブランドの類似性として問題になってしまう可能性があります。ですから服の生地や細かいディティール刺繍の種類、ヘアメイクであれば肌の質感などの細かなプロンプトを入力する必要がありました」
木之村は以前、ファッション・デザイナーとして活動しており、現在もファッションや化粧品業界の広告制作を手掛けている。つくるのはAIであっても、それを使いこなすにはやはり専門知識がないと難しい。だからクリエイター選びが非常に大切だったという。
木之村はNFTが登場しはじめた2021年頃からデジタルの世界に注目してきた。海外ではデジタルクリエイターたちがAIを使い始めており、今回の広告を担当したAIエディトリアルのクリスチャン・グアルネーリも同じファッション業界出身だ。
ファッション業界で新しい潮流が生まれはじめているとはいえ、普及するにはまだ課題が残る。
「いまでもスマートフォンで画像生成はできますが、プロのクオリティには追いついていない。今回のパルコの広告のようなレベルのものを、となればものすごく大きなデータを扱わなければならず、特別なパソコンで制作しています」
制作の現場がすぐにAIに置き換わるということはなさそうだが、AIのクリエイションには可能性があるという。通常は撮影できないような場所をつくれたり、ファンタジーな世界観をつくるアプローチでは、人間の想像を超えたものが生まれるという。
「いま、リアル世界とデジタル世界を融合させる『フィジタル』が注目されています。一時期NFTが盛り上がりましたが、みな目に見えないものを所有することに疑問を感じている。現実の価値が見直され、AIでつくった服を実際に着るといったデジタルにとどまらないアプローチが盛んになるはず。デザイナーは積極的にAIを使ってほしいですね」
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