【インタビュー】マーク ジェイコブス40周年記念のコラボコレクションに、ストリートアート界の巨匠・フューチュラが登場

  • 写真:河内 彩
  • 文:佐野慎悟
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ドーバー ストリート マーケット ギンザ 6階で展開されている、ポップアップストアに姿を現したフューチュラ。コラボコレクションには、マーク・ジェイコブスとフューチュラのタギングが融合したロゴが使用された。

マーク ジェイコブスのブランド設立40周年を記念して、9月からアーティストのフューチュラとコラボレートした、限定のカプセルコレクション「フューチュラ × マーク ジェイコブス」を9月にローンチした。ドーバー ストリート マーケット ギンザで開催されたローンチイベントに姿を現したフューチュラに、コラボレーションのきっかけ、ものづくりについて話を訊いた。

数十年経てもなお衰えを知らない、クリエイティブの源泉

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5年前に原宿で開催した個展以来の来日となったフューチュラ。このインタビューの前日には、90年代から親交のある、東京ストリートカルチャーの中心人物たちとの再会を祝い、食事に出かけたそうだ。

このコラボレーションは、マーク・ジェイコブスの友人であるコラボレーターたちが、それぞれ思い入れのあるアイテムを新たな視点で再解釈する、1年にわたるスペシャル・プロジェクトの第8弾として実現したもの。このプロジェクトには、他にもファレル・ウィリアムス、村上隆、NIGO®、アナ・スイなどが参加しており、アニバーサリー・イヤーを祝うコラボコレクションが年間を通して発表されている。

1970年代にニューヨークのサブウェイでグラフィティアートを始め、キャリアを通して世界的な活躍を見せたフューチュラは、68歳になったいまも、以前とまったく変わらぬペースと規模で創作活動を続けている。マーク・ジェイコブスとは同じニューヨーク生まれだが、このコラボレーションはどのような経緯で始まったのだろうか。

「マークのことは、それこそ1984年に彼がブランドを立ち上げたころから知っていました。でも、ちゃんと出会ったのは4年前。それまでは、アートエキシビションのレセプションパーティなどで見かける程度で、直接的な接点はなかったんです。友人からマークを紹介された私は、自分のアトリエに彼を招待して、昔のことから現在のことまで、色々な話をしました。その出合いが、今回のコラボレーションの直接的なきっかけになっています」

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カプセルコレクションの中で特に気に入っているアイテムを聞くと、シルクスクリーンプリントのTシャツを挙げたフューチュラ。「30年前にも同じようなTシャツを着ていました。かなりオールドスクールなデザインで、クリエイティブなエネルギーに溢れています」

フューチュラが手がけたカプセルコレクションには、頭の先が尖った宇宙人のキャラクター「ポイントマン」や、原子を表す円形のモチーフ「アトム」など、フューチュラの作品を代表するアイコンが用いられており、古くからのファンも心躍るデザインが数多く揃う。

「もう何十年も同じモチーフを描き続けていますが、自分の中では描くたびに革新があって、何度描いても、常にクリエイティブなエネルギーを感じることができます。それは一種の才能なのかもしれません。私は自分一人の力で作品を作っているわけではなく、今回であればマークという友人の40周年を祝うために、マークがハッピーになるものを、マークとマークのチームと一緒に作りあげていく作業です。私は誰かと仕事をする時に、たとえば選択肢が3つ必要であれば6つの選択肢を提案し、その中から、みんながベストと思えるものを選んでいけるようにしています。そういった作業の中で、自分でも気づかなかった新しい魅力に気づいたり、新しいチームや生産ラインで仕事をすることでプロダクトのクオリティが上がっていったりと、自然な革新が起こります」

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カプセルコレクションは、マーク ジェイコブスを代表する“ザ トート バッグ”や“ザ スナップショット”をはじめ、ユニセックスのデニムや、パーカ、アクセサリーなどをベースにデザインされた。 左:「FUTURA X MARC JACOBS ポイントマン ザ スナップショット」¥51,700、右:「FUTURA X MARC JACOBS ザ レザー トート バッグ ラージ」¥102,300/ともにマーク ジェイコブス

 他者との関わりあいに重きを置くフューチュラの制作スタイルは、キャリアの初期から変わらない。彼を取り巻く人間関係の中でクリエイティブなコミュニティが生まれ、それがやがてシーンとなり、ブームという大きな波を起こしてきた。

「80年代には、キース・ヘリング、バスキア、ケニー・シャーフらとともに活動する中で、ニューヨークのストリートアートが注目されて行きました。90年代には、NIGO®、アンダーカバーの高橋盾、スケシン、ヒステリックグラマーの北村信彦さんたちと、ストリートファッションのムーブメントを盛り上げました。このように、私はお金のために作品をつくってきたのではなく、同じ価値観を持って共感できる人たちと繋がり、アイデアや情報を交換しながら、共に働き、クリエイティブなグローバルコミュニティを築き上げていくことを目指していました」

その人と人との繋がりを、フューチュラは“サテライト”と呼ぶ。彼はインターネットやeメールが生まれる前から、世界中のどこにいてもクリエイター同士が繋がり、情報を共有しながら新しいものを生み出していく姿を理想としてきた。

「いまはSNSがあるから情報のやり取りはもっとクイックになっていますが、反対に人と人とのコミュニケーションは希薄になっていると思います。私たちはいまだに、世界中の仲間と実際に会ったり、郵送されたものを手に取って確かめたりしながら、オールドスクールなものづくりを大事にしています。今回のコラボアイテムもそんなプロセスで生み出された結果、30年前のリアルなバイブスが反映された、オールドスクールなデザインに仕上がったと思います」

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「これまでいろんなデザイナーやブランドとコラボしてきましたが、マークは何よりもこちらの自由と独立性を尊重してくれて、とても仕事がやりやすいデザイナーでした」と語るフューチュラ。そのリスペクトに対して、自身でもリスペクトで返す、フューチュラの懐の広さが垣間見えたコラボレーションだ。

さらにフューチュラは、自分自身やマーク・ジェイコブスのように、自分らしさを崩さずに、何十年も活動を続けていくための秘訣を語った。

「とにかく自分のやるべきことに集中して、外から入ってくる雑音に、自分の人生を左右させないこと。そして、狭い常識に囚われず、自分の部屋を出て、コミュニティを出て、街を出て、国を出て、違う価値観を持った人たちと出合い、可能な限り大きなビジョンを描くこと。まだ理解できなくてもいいから、自分が想像できる限界のさらに向こうまで、自分の可能性を広げていくこと。私はそうやって、ロンドンにいたパンクバンドのザ・クラッシュや、東京にいたNIGO®のような仲間たちと出合い、自分たちにしかできないことをやってきました」 

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日本のファンに向けて、ピースサインを送ったフューチュラ。彼のクリエイティブはもちろん、仕事のスタンスや人との関わり方は、後世に多大なインスピレーションを与え続けている。

フューチュラとマーク ジェイコブスのコラボコレクションは、10月8日まで渋谷パルコ、また10日までドーバー ストリート マーケット ギンザのポップアップストアで販売されるほか、マーク ジェイコブスの表参道店、渋谷パルコ店、阪急うめだ店、公式オンラインショップなどで展開されている。いまなおみなぎるレジェンドたちのクリエイティブなエネルギーを、自分の手で感じてみてはいかがだろうか。

マーク ジェイコブス カスタマーセンター

TEL:03-4335-1711

www.marcjacobs.jp