漆黒の外装に金の輝きが浮かぶ腕時計が、静かに時を刻んでいる。カンパノラが25周年を迎え、「星響(ほしのひびき)」と名付けられた限定モデル3本を発表した。星々が響き合う宇宙をテーマに、ブランド初となるデュラテクトDLCを施したオールブラックのケースとバンドを採用。宙空の神秘を手首に宿す姿は、ブランドが掲げてきた精神そのものだ。2000年の誕生以来、「雄大な宙に想いを馳せ、今という時を愉しむ」という理念を軸に歩んできたカンパノラにとって、その思想がひとつのかたちになったと言える。
腕に漂う、静かな星の余韻
その宇宙観を最も繊細に体現しているのが、メカニカルモデルだ。会津漆の伝統工芸士・儀同哲夫が手掛けた螺鈿細工の文字板を備える一本で、貝殻の破片を一つひとつ手作業で散りばめた文字板は、見る角度によって無数の表情を映し出す。同じものはふたつとして存在しない。艶やかなブラックのケースとバンドに、ゴールドのインデックスと針が描く情景は、まさに“日常に降りた宇宙”。ケース径42㎜、厚さ14㎜という控えめなサイズが袖口に心地よく収まり、静かだが確かな存在感を放っている。
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伝統工芸士の手が生む、唯一無二の輝き
文字板に施された螺鈿細工は、光の当たり方で青、緑、紫へと色が揺らぎ、幾層もの表情を生み出す。儀同による「暈響(かさねきょう)」の技法——漆地に貝片をていねいに磨き重ねていく過程から生まれる光の層が、その奥行きを支えている。同氏は瑞宝単光章を受章した匠であり、その技の確かさは言うまでもない。見返しリングに施されたプラチナ粉の蒔絵表現は、星々の軌跡を想起させる意匠だ。手首を傾けるたびに表情を変える螺鈿の光は、デュラテクトDLCによる艶やかな黒と呼応し、より鮮やかに浮かび上がる。
ガラス越しにのぞく文字板は、「無限の宇宙を閉じ込めた」という表現すら過剰ではない。多層構造の文字板とデュアル球面サファイアガラスが奥行きを生み、腕にほんのわずかな宇宙空間を現出させる設計だ。光を受けた螺鈿のきらめきは、遠い星雲のように揺らめき続ける。ゴールドの針は漆黒の空間をすべるように動き、静かな時間の流れを描き出す。カンパノラが掲げる「宙空の美」の哲学は、この一本に凝縮されている。手に取るたびに新たな表情に出合う感覚——それこそが螺鈿の醍醐味だ。クラリティ・コーティングを施したデュアル球面サファイアガラスが反射を抑え、文字板の美を鮮やかに引き立ててくれる。
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裏蓋越しにのぞく、機械式の鼓動

時計を外し、裏蓋のシースルーバックからムーブメントを眺めるひととき。それは静かな瞑想にも似た時間だ。波紋のように広がるコート・ド・ジュネーブや、細やかに噛み合う歯車、テンプが刻む律動——ラ・ジュー・ペレ社製のムーブメント「Cal.Y513」の動きは、どこか生命の営みを思わせる。25石が摩擦を抑え、手巻きの確かな手応えと自動巻きのなめらかな回転が共存する構造は、眺めるほどに深い魅力を宿していく。こうして時計と向き合う時間が、日常にほのかな余白をもたらしてくれる。
「Cal.Y513」は毎秒8振動=毎時28,800振動という高精度のリズムで約42時間の持続時間を支える。その残量は前面のパワーリザーブ表示でひと目にわかる。また、文字板上部に設けられたビッグデイト表示には、「今日という一日を大切に」というカンパノラの時間哲学が息づく。秒針停止機能や日付早修正機能など、使い手を支える機能も揃い、日常の相棒として不足はない。ケース外装にはデュラテクトDLCが施され、ビッカース硬度1,000〜1,400HVという高い耐傷性を誇る。美しい艶を保ちながら、小傷へも強さを見せる仕上がりだ。内側の精緻な鼓動と外側の強靭さが響き合い、ひとつの“時を宿す器”として静かに完結していく。
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音、機能、静寂。三様の美が語る物語
「星響」コレクションは、メカニカル、ミニッツリピーター、グランドコンプリケーションの3本で構成される。いずれも漆黒と金を基調とし、「響き合う星」の世界観を共有しながら、異なる表現で時を奏でる存在だ。ミニッツリピーターは音で時を告げ、その響きを電鋳パターンやゴールドカラーのリングで視覚化。グランドコンプリケーションは4大複雑機構を搭載し、機能美が重層的に立ち上がる一本だ。対してメカニカルは、静寂の中に潜む美しさを体現し、螺鈿とムーブメントの調和が25年の歩みを象徴する存在となる。三者三様の魅力が重なり合い、カンパノラが描いてきた多層的な世界観を一段と深めていく。その響きは、25年を経たいまもなお新たな光を帯び、これからの時間へと静かに連なっていく。
シチズンお客様時計相談室(カンパノラ)
TEL:0120-78-4807
https://campanola.jp
