【フェラーリ アマルフィ海外試乗記】ローマの喧騒を抜け地中海へと向かった、 イタリア製ベルリネッタの巡礼 第237回東京車日記

  • 写真&文:青木雄介
Share:
FB-1_PSX_20251205_161632-のコピー.jpg

アマルフィ海岸周辺の海の煌めきをイメージした専用色、ヴェルデ・コスティエラ。

フェラーリのV8ベルリネッタ最新作、「アマルフィ」に乗った。場所はポルトガル南端のアルガルヴェ地方。街には白壁にテラコッタ屋根の家々が重なり、郊外にはアーモンドやオレンジの低木が連なる。そして褐色の大地の向こうには大西洋の青が広がり、オフシーズンのリゾートの静けさに包まれている。絵画のようなその風景は、「アマルフィ」という物語の入り口のように思えた。

ローマからアマルフィへ、都会の緊張をほどく新章

FB-2_PSX_20251205_181619.jpg
物理スイッチを復活させ、さらに機能性を高めたデュアルコクピット。

アマルフィとは、イタリア南部に広がる海岸沿いの景勝地の名。先代モデル「ローマ」はフェデリコ・フェリーニの映画『甘い生活』に着想を得ており、主題には享楽とともに都市に生きる人間の空虚さや不安が含まれていた。「アマルフィ」はそんな「ローマ」が持っていた緊張感をほぐすように、走りの輪郭をやわらかく描き直している。ローマの喧騒を離れ、海岸線の美しさに心を奪われる……そんな情景が、この名に重なった。

FB-3_PSX_20251205_170045.jpg

エンジンはF154ファミリーの最新型。ターボ制御によりパワーとレスポンスを高めた。 

特筆すべきドライブモードは「コンフォート」。伸びやかさの中にクルマが持つキャラクターを決定づけている。アダプティブサスペンションは「ローマ」と同じだが、減衰力とEPS設定を見直した。さらに静音処理を施したうえで、新設計のサイレンサーと運転状況に応じて演出音を発するアクティブバイパスバルブを搭載。それにより、エンジンサウンドがアイドリングの低音から高回転域の咆哮まで、より広いレンジでエモーショナルに響くようになった。

解像度が上がったそのサウンドが、アルガルヴェの風景にシンクロする。その抒情は、まるでノイズリダクションヘッドフォンで聴く、スペインのグローバルアイコン、ロザリアのアルバム『LUX』のよう。聖性と罪深さ、そして祈りとあがない。バックミラー越しに遠ざかる歴史ある遺構と屈託のない日常の対比は、『甘い生活』のラストシーンを思わせた。

レースモードが解き放つ、V8の本性

FB-4_PSX_20251205_165705.jpg
前後重量配分は50:50。ブレーキ・バイ・ワイヤを搭載し車体制御が向上。

ワインディングでドライブモードを「レース」に入れると、「ローマ」と同様にステアリングの解像度が上がる。クルマは夢から醒めて本来の力を取り戻すように速くなっていく。「ローマ」で特徴的だったクイックなオーバーステアリングは影をひそめ、ハンドリングはタイヤと会話を取り戻すかのような自然なフラットへと変わった。3.9LのV8ツインターボは吸排気を刷新。足裏に吸い付くようなスロットルレスポンスを実現した。攻めても、進化を重ねてきたサイドスリップコントロールは盤石の構えで、胸のすくドライビングでカーブをクリアする。

FB-5_PSX_20251205_165851.jpg

やがてモンシケの峠を抜け、道は大西洋へと開いていく。「コンフォート」の伸びやかさと、その延長にある「レース」モードの力強さが連峰のように並び立ち、このクルマのスケールの大きさを感じさせる。驚いたようにこちらを見つめる羊と犬、そして羊飼い。崩れかかった白壁の村並みを過ぎると、潮の匂いがかすかに混じる。

アルジェズルの海岸線に向け走るほどに、初めての道がいつものドライブルートのように馴染んでくる。「アマルフィ」は自ら進み出て、風景に溶け込んでいこうとしているようだった。甘い生活に加えられた、祈りのような敬虔さ。

クルマは海へ向かっていた。自分の心も、還るべき場所へ静かに戻っていく気がした。

フェラーリ アマルフィ

全長×全幅×全高:4,660×1,974×1,301㎜
最高出力:640PS/7,500rpm
エンジン:V型8気筒ツインターボ
排気量:3,855cc
最大トルク:760Nm/3,000〜5,750rpm
駆動方式:FR(フロントエンジン後輪駆動)
車両価格:¥34,180,000〜

フェラーリジャパン
www.ferrari.com/ja-JP/auto/ferrari-amalfi