【批評家・伏見 瞬が語るドリカム】最新アルバムから感じた、吉田美和の詩に宿る“世代”のリアリティ

  • 編集&文:加藤一陽
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『THE BLACK ○ ALBUM』をいち早く試聴した批評家・伏見 瞬。YouTubeなどで国内外の最新音楽解説などを日々発信している彼の視点から、ドリカムが音楽シーンで果たした役割と、最新アルバムから読み解ける“現在地”を解説してもらう。

DREAMS COME TRUEが9年ぶりとなる待望の最新アルバム『THE BLACK ○ ALBUM』をリリースする。J-POP が新たな地平に立ついまだからこそ、ドリカムが鳴らす鐘に耳を澄ませ、その“引力”を存分に語り合おう。 

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アップデートされた、吉田美和の詩に宿る“世代”のリアリティ

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伏見 瞬●批評家、音楽系YouTuber。東京都生まれ。音楽、映画、文学など、表現文化全般に関する執筆活動を行う。そのかたわら、YouTubeチャンネル『てけしゅん音楽情報』では、国内外の最新音楽の解説などを日々発信している。著書に『スピッツ論 「分裂」するポップ・ミュージック』。

音楽系YouTubeチャンネル『てけしゅん音楽情報』などで、幅広い音楽情報を発信している評論家の伏見瞬。開口一番、「歌謡スターたちは、常に最先端のブラックミュージックを取り入れてきたんですよね」と切り出した。

「戦後にジャズをカバーしてきた江利チエミ、70年代にスティーヴィー・ワンダーなどからの影響を曲に反映させた松任谷(荒井)由実やサザン・オールスターズ、90年代に時代を牽引した宇多田ヒカル。最近では、星野源や藤井風。このようなJ-POPのスターたちがそうでした。そして90年代にR&Bやニュー・ジャック・スウィングを取り込んだドリカムは、その代表格です。同時に、『L OVE LOVE LOVE』でも『サンキュ.』でも、“イントロ→Aメロ→Bメロ→サビ”のような一般的なJ-POPの構造ではない。いわゆる洋楽への愛がある。明確な“サビ”がわかりにくい曲をシングルにして大ヒットを量産していたのは、当時でもいまでも異例なことだと思います」

そんなふうにドリカムの“洋楽感”に着目する伏見は、新アルバムの全体的な感想についても「プリンス&ザ・レヴォリューションの『パープル・レイン』を思い出しました」というから興味深い。

「SEの印象もありますが、宇宙空間に放り投げられ、宇宙船から51分にわたりさまざまな風景を見るような体験でした。その中でエキゾティックなサウンドが突然織り込まれたり、濃いめの曲の合間に『カンパイマーン♪』のようなユルめの曲が挿入されたりして、バラバラに発表された曲やサウンドたちが流れの中で強度を持ったひとつの作品として昇華されている。そこにプリンスとの共通点を見出したのかもしれません」

吉田の詩に着目することも、本作を味わい尽くすポイントだ。

「ドリカムが人気である理由のひとつは、吉田さんの詩のリアリティ。20代で書かれた『うれしはずかし朝帰り』『決戦は金曜日』、30代の『朝がまた来る』、40代の『何度でも』など、その時々の社会の空気感を自然に取り込んで、ご自身の年齢に即した人々の恋愛観、生活観、人生観を描き共感を生んできました。本作の曲の詩も『決戦は金曜日』の時代に恋に生き、『何度でも』の時代に敗北の苦さを知った、現在は孫がいるほどの年に差しかかった世代の感覚が描かれていると感じられます。その上で詩を追っていくと、たとえば『YES AND NO』からは、社会に対する違和感を持ちながらも『で、自分はどうするの?』と自問する大人の姿が表現されているようです。“吉田さんの年代のリアル”を感じさせる詩が、作品の随所に見受けられます」

“CDファースト”企画へのインプレッションも訊いた。

「CDのみならず、オフラインのリスニング環境は1枚で作品が完結するので、アルバムとしての表現との親和性は高い。他方、ストリーミングでもアルバムの魅力を表現しているアーティストはいます。それを考えると、この施策はアルバムとしてのトータリティを手掛かりに、CDというメディアの魅力を表現したいという思いが強いのではないかと感じます。そもそも、ドリカムがその魅力を再提案するということ自体が興味深い。彼らはアナログではなく、CDのみをリリースし始めた第一世代です。主要メディアが転換するタイミングでデビューし、CDの全盛期をつくり上げてきた申し子のような存在。だからこそ、彼らがCDの価値を再定義しようとすることは理に適っているし、説得力がありますよね」

読者に薦めたい、ドリカム作品

『The Swinging Star』

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日本で初めて300万枚超を売り上げたアルバムとなった、1992年リリース作。伏見が薦める理由は、アルバムとしての完成度と収録曲の時代性にある。なかでも「決戦は金曜日」の“華やかな東京感”は、「当時を象徴する風景」と振り返る。「感情を過剰に押し出さず、抑制を利かせながらエモーションを立ち上げるボーカルも聴きどころ。バカラック調の『晴れたらいいね』をはじめ、知らない曲がないほど高強度の楽曲が並ぶ一枚」だと語る。

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