【Penが選ぶ今月の音楽】グラミー賞で脚光を浴びた、 新星オリヴィア・ディーンによる独自のネオ・ソウル

  • 文:文:山澤健治(エディター)
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【Penが選んだ、今月の音楽】
オリヴィア・ディーン『ジ・アート・オブ・ラヴィング』

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1999年、イギリス・ロンドンのハーリンゲイ区でジャマイカ系ガイアナ人の母とイギリス人の父の間に生まれる。15歳で名門ブリット・スクールに進学し、曲づくりを開始。2023年に『Messy』でデビュー。2作目の本作で世界的スターの座へと上り詰め、第68回グラミー賞では最優秀新人賞に輝く。

もはや世界は、生成AIなしには成立しないだろう。音楽の世界も例外ではなく、昨年11月、ザニア・モネがAIアーティストとして初のビルボード・チャート入りを果たし、ブレイキング・ラストがカントリー・デジタル・ソング・セールス・チャートでついに1位を獲得。以降、生成AIの有無を解析するアナライザーがあるとはいえ、技術の進化を性善説で捉えることに躊躇する自分と向き合い続けている。

ほぼ同じ時間軸で全英を制し、全米チャートをも席巻したオリヴィア・ディーンの「マン・アイ・ニード」は、そんな心のモヤモヤを吹き飛ばしてくれた1曲だった。UK発の新世代ネオ・ソウル・シンガー・ソングライターによるこのシャッフル・ナンバーは、昂揚感にあふれたコーラスと軽やかなテンポもさることながら、他のUKソウル勢とは一線を画す、優雅な人間味がなによりの魅力。続くスマッシュヒット、バート・バカラック調の小粋なボッサ・ソウル「ソー・イージー(トゥ・フォール・イン・ラヴ)」も同様で、ヒューマンな曲に多くの支持が集まる状況に深く勇気をもらえたものだった。

そんな2曲を含むセカンド・アルバム『ジ・アート・オブ・ラヴィング』が待望の国内盤でリリースされたのだが、優雅で温かなボーカルが響く、穏やかでエレガントな美曲が目白押し。それも、フリートウッド・マックやエイミー・ワインハウスを想起させるソフト・ロックやレトロ・ソウル、アレサ・フランクリン調の3連バラードなど、どの曲にも人肌のレトロ感があり、どこか懐かしくも新鮮な聴き心地が味わえるのだ。グラミー賞ソングライター・オブ・ザ・イヤーを2年連続で受賞したエイミー・アレンほか、脇を固める共作陣との化学反応も劇的に傑出している。

夜よりも朝が似合う、新感覚のネオ・ソウル作が幸せを運ぶ。

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