スポーツカー、スーパースポーツカー、そしてその上をいくのが“ハイパースポーツカー”だ。2026年3月に乗った、アストンマーティン「ヴァルハラ」はまさにそれ。

レースでの活躍も視野に入れたヴァルハラは、プラグインハイブリッドのパワーユニットをミドシップした、4輪駆動。
「ハイパーカーの市場はこの先大きく拡大はせず、各メーカー間のシェア争いが熾烈になるかもしれない」
そう語るのは、アストンマーティン・ラゴンダ社(正式名称)で、ヘッド・オブ・プロダクトマネージメントを務めるニール・ヒューズ氏。
ヴァルハラのテストドライブが行われたスペイン・バスク地方のナバラサーキット。そこで、「それ故に、全力投球でヴァルハラを開発したのです」と、ヒューズ氏は胸をはって語る。
4リッターV8エンジンを使ったシステムのトータル出力は793kW(1079馬力)。最大トルクは1100Nm。
ミドシップのエンジンにモーターが組み合わせてあり、前輪はモーター駆動だ。エンジンと8段デュアルクラッチ変速機のあいだにもモーターが組み込まれ、バッテリー走行もできる。
レッドブルレーシングと共同で開発し、「F1から多くのインスピレーションを受けている」という。
「2019年にジュネーブで開催された自動車ショーで発表されたプロトタイプは3リッターV6でしたが、そこからより上級マーケットを狙ったモデルへと方針変更され、シャシーからすべてやり直しました」
チーフエンジニアを務めたアンドリュー・ケイ氏は言う。
ヴァルハラは「スーパーラグジュアリーブランドの未来像」と語るのは、アストンマーティンを率いるエイドリアン・ホールマークCEOだ。
ホールマークCEOの定義にのっとって、スピードとラグジュアリー性ともにとことん追求したヴァルハラが、ほぼゼロから再開発されたのだ。
私が乗ったのは、サーキットと、一般公道。ヘミングウェイの小説「日はまた昇る」でも知られるパンプローナとの間のカントリーロード(といっても舗装はよい)を走り回った。
驚くほどの加速性とともに、するどいハンドリングと、制動力をもったクルマだ。
ドライブモードには「EV」をはじめ「スポーツ」「スポーツ+」それに「レース」が任意で選べる。
ナバラサーキットのコース長3.9mで、コーナーの数は15。わりとシンプルな設計だが、最終コーナーでスピードに乗せるのが、慣れていないと、なかなか困難。
それでもホームストレッチで、ステアリングホイールをまっすぐにして、アクセルペダルを踏み込むと、まさに矢のようにふっとんでいく。

印象的だったのは、アクセルペダルのトラベル(踏み込み量)がたっぷりとられていること。それ故、速度調整がやりやすい。フォーミュラマシンのようだ。
基本的には「スポーツ+」とマニュアルシフトで走った。ひとことでその感覚を説明するとしたら、超ナチュラル。ほぼかんぺきに思いどおりに走れる。
途中、降雨があり、赤と白に塗り分けられた縁石に車輪が載った際、グリップを失い、一瞬挙動が不安定になった。が、一瞬後に左右輪の駆動が制御され、矢のような直進性を取り戻したのだった。
「レース」モードに入れると、アクティブエアロが作動する。これもヴァルハラならではの特徴。
なんとか一度はと思い、ホームストレッチで速度が乗ったところで試してみた。アクティブエアロ始動。

リアビューミラーを見ていると、するするっとリアスポイラーが持ち上がった。強いダウンフォースで車体を押しつけ、後輪の接地性を高め、駆動力を確保する。
第1コーナー手前でブレーキングすると、ウイングが角度を変えたのがわかった(見るの必死)。エアブレーキの働きをするのだ。
同時にフロントのノーズ内でも整流フラップが動き、空気の動きをコントロール。高速用のダウンフォースを生む。これは視認不可能。
アストンマーティンにとって、いろいろな「最初」があるのがヴァルハラの特徴だ。
最初の量産型ミドシップ、最初のプラグインハイブリッド、最初の高性能V8エンジン、そして最初の8段デュアルクラッチ変速機という具合。

「ボディの造型はやりがいがありました」。プラハ出身の担当デザイナー、オンドレイ・イレツ(Ondrej Jirec)氏は、ヴァルハラの車体を回りながら語る。
「すべての要素が、空力的に重要で、機能と審美性を両立させるのが、私たちデザイナーの仕事でした」

たとえばーーと、キャビン背後から煙突のように突き出している2本の排気管を指す。
「排気効率は車体の空力に影響されがちなので、ルーフの空気が排気管の周囲を回って流れるよう、造型に気をつかいました」
ヘッドランプからリアエンドにいたるまで、すべて、デザイナーと空力担当とパーツの設計担当との共同作業だったという。

「こんなすごい仕事は一生に一度だろうから、大変だったけれど、実にエキサイティングでした」
さきのアクティブエアロをはじめ、F1マシンのようなボーテクスジェネレーター(渦流生成器)を車体側面に設けたり、と凝りに凝っている。
視覚的にすぐそれとわかる機能とともに、可視化されない細部にいたるまで徹底的につくり込まれたのが、アストンマーティンのハイパースポーツカー、ヴァルハラなのだ。
Aston Martin Valhalla
全長×全幅×全高:4727×2208×1161mm
最低地上高:110mm
ホイールベース:2760mm
エンジン:3982ccV型8気筒ターボPHEV 全輪駆動
最高出力:793kW(システム)
最大トルク:1100Nm
最高速度:310km/h
0-100km/h加速:2.5秒
EV走行距離:12km
価格:¥128,900,000









