クルマは機械である。故にその面白さは、ちょっとした部品の差し替えで、がらりとキャラが変わることもあるところ。
トヨタの多機能ワゴン「ハイエース」のために、カヤバが開発して2026年1月に発売したサスペンションシステム「ActRide(アクトライド)」は最新の好例だ。

ハイエースって、いわゆる”現場”でたいへん重宝されているクルマだ。最近では売れすぎてタマ不足といわれているほど。
乗車定員や駆動方式、それに車型も多様で、機能性の高さ故、キャンパー(寝泊まりができるクルマ)として買う人もいる。中型犬や大型犬の飼い主だって、ケージそのまま入れておけるハイエースの利便性に注目している。
ただ問題もある。最大積載量が1トンを超える半面、乗り心地が硬めなことだ。空荷の状態だと速度が上がると、けっこう跳ねる。そこはファミリーユースで二の足を踏んでしまう部分だ。
カヤバが、ハイエース・オーナーのために開発した「アクトライド」は、ハイエースにさらなる多様性をもたらした。 別の言い方をすると、悩み多きドッグオーナーやファミリーでも、乗用ミニバンのようにハイエースを楽しむことを提案する。

カヤバのダンパーは、ハイエース/レジアスエースをはじめ、多くのクルマに純正品として採用されている。ラリー競技などで「KYB」のロゴを見たことがある人も結構いるのでは。
筆者は今年4月に「アクトライド」を体験した。システムは大きく3つの要素で構成されている。前後左右の4本のダンパー(ショックアブソーバー)、コントロールユニット、それにスマホ用専用アプリ。

従来のダンパーとの交換は、腕におぼえがある人なら、自力で出来てしまうほどだとか。
スマホのアプリで、ダンパーの”減衰力”を調節する。
画面には「スポーツ」から「ノーマル」を経由して「コンフォート」にいたるスライドバーがある。それを指で操作して、ほぼ無段階でダンパーの減衰力を調節。
私が乗ったハイエース・スーパーGLは、ノーマルではやっぱり硬めの足まわりなのだけれど、「アクトライド」で大きく変わった。
「スポーツ」は今回は未体験だが、硬いながらしっかりした乗り味になり、高速道路での走行安定性が大きく向上するそうだ。
その対極にある「コンフォート」では車体が跳ねることなくふわりふわりと動く。「これ、ハイエース?」と驚いた。
一緒に後席に座ったひとの感想では「ノーマル」の上下動がいちばん快適だったそうだ。ほぼ無段階に減衰力を変えていけるため、いいところを探すとよい。

もうひとつの特徴は「オートモード」。
乗り心地制御の「ライドコントロール」、操縦性制御の「ハンドリングコントロール」、車速と連携して減衰力を調節する「スピードアダプト」が使えて、統合制御される。
コントローラーが車体の動きを6つの軸で検知していて、つねに最適の制御を行っている。
基本的には「スカイフック制御」といって、空の一点で車体が吊り下げられているような、フラットな走行姿勢が目指されている。

これなら、愛犬を後部空間のケージに入れてキャンプとか別荘に出かけていくときも、後ろめたい気分にならないと思う。
「子どもの安眠だってさまたげません」と、カヤバの技術担当者に言われた。
「アクトライド」が用意されているのは、現行のハイエース/レジアスエース(200系)のみ。価格は、後輪駆動仕様、4WD仕様ともに、26万9500円だ。
この先「ほかの車種にも拡大していけたら」とは、カヤバの言。

よくよく考えると、カヤバの選択は正しくて、「アクトライド」の恩恵をもっとも大きく受けられるのは、ハイエース・オーナーなのかもしれない。「大きな荷室が欲しい、けれど足まわりが硬い……」とか、そういう悩みを抱えた人たちだ。その悩みは、絶対に解決される。
私がハイエースに乗っていたら、迷わず「アクトライド」を装着する。

