ランボルギーニはなぜ美しいのか。まるでSF、「ムルシエラゴ・スパイダー」から紐解くデザインの魅力

  • 文:小川フミオ
  • 写真:Automobili Lamborghini
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ランボルギーニのよさは、プロトタイプのようなデザインと、実際にそれを走らせられるところにある。自分がSF映画の中に入り込んだような気分になれる。あるいは夢に乗れるというか。 

ランボルギーニ ムルシエラゴ スパイダー
いまの眼にも魅力たっぷりに見える個性的なデザインのスパイダー。写真:筆者

最新モデルに限った話ではない。2026年5月に私がイタリアで乗ったのは、「ムルシエラゴ LP650-4 ロードスター」。

ランボルギーニが2009年に世界限定50台で発売した当時は、デザイン性の高さに驚かされた記憶がある。いまも魅力は健在だ。

当時アウトモービリ・ランボルギーニでヘッドオブデザインを務めていたベルギー人、ルク・ドンカーヴォルケの下でデザインされた。

ドンカーヴォルケは、1998年から2005年までランボルギーニのデザインを指揮し、そののち、グループのアドバンストデザインの責任者などを務めていた。

現在は韓国の高級車ブランド「ジェネシス」のプレジデント兼チーフクリエイティブオフィサーの職に就いている。 

ルク・ドンカーヴォルケ
アウトモービリ・ランボルギーニでヘッドオブデザインを務めていたルク・ドンカーヴォルケ。

ムルシエラゴは2001年に新生(アウディ傘下)ランボルギーニとして初めて送り出したモデルだ。

実は筆者も、シチリア島でのお披露目に参加したことがある。

あるとき、「○月×日(忘却)の深夜、エトナで会いましょう」とだけ英語で書かれた真っ黒い郵便物が、ランボルギーニ本社から届いた。

タオルミナのホテルから、その夜、指定された場所へ到着すると、暗い空を背景に煙が上がっているのが見えた。

ヨーロッパ最大の活火山であるエトナ山からの煙だ。ギリシア神話の舞台にもなっていて、すごい舞台装置と私はそこで感心。

時計が深夜を指すと、離れたところから豪快なエンジン音と排気音が聞こえてきて、自走してきたムルシエラゴが初めてメディアの前に姿を現したのだった。

照明などほとんどない。ムルシエラゴのシルエットとサウンドだけが、雰囲気を支配していた。

ランボルギーニ ムルシエラゴ スパイダー
新生ランボルギーニを象徴する、かたまり感の強いボディデザインを持つムルシエラゴ。

ムルシエラゴは“かたまり感”というのか、金属のかたまりから削りだしたような、凝縮感の強いボディデザインを特徴としていた。

ミドシップの2人乗りスーパースポーツで、6.2リッター12気筒エンジンのパワーは常に前後輪に最適配分され、性能は、たとえば静止から時速100kmまで加速するのに3.8秒とされていた。

それでも、端正さが際立つボディデザインで、姉妹ブランドともいえるアウディと、どこかで通じるものを感じさせた。

ルーフを取り去ったオープンボディのロードスターが追加された際、デザインは“進化”した。

ランボルギーニのデザインセンターは、自分たちの提供価値とはなにかについて、より明確なビジョンを持っているように感じられたものだ。

ランボルギーニ ムルシエラゴ スパイダー
乗員に対してずいぶん大柄なボディに見えるけれど全長は4.6mに抑えられている。

私が乗ったLP650-4ロードスターの発表は2009年。ムルシエラゴは2010年までつくられたのでほぼ末期。自動車界ではこういうとき“熟成の極み”といったりする。

実際にムルシエラゴ・ロードスターは、その証明のようなクルマだ。

最高出力は車名のとおり650馬力(478kW)に達し、最大トルクは660Nm。静止から時速100kmまでに要する時間は、空気抵抗が大きくなりがちなオープンボディだが3.4秒しかかからなかった。 

ランボルギーニ ムルシエラゴ スパイダー
リアビューでは12気筒エンジンが見える大胆なデザインになっている。

車体色は、グリジオテレスト(灰色)がメインで、アランチョ(オレンジ)をスポイラーなどのアクセントに使っている。車体色は当時これ一択。いま見ても結構な迫力だ。 

ランボルギーニ ムルシエラゴ スパイダー インテリア
オレンジが効果的に使われていてエレガンスも感じさせるインテリアデザイン。写真:筆者

内装もグレーに統一されている。シートの形状もなんだかSF映画的。セイフティベルトのアッパーアンカーは普通ドア側に設けられているが、このクルマでは、中央にあるのもユニークだ。 

ランボルギーニ ムルシエラゴ スパイダー
シート表皮は速度を出してもからだが滑りにくい人工スエードが使われている。写真:筆者

センタートンネルのギアセレクターと、ステアリングホイールのコラムから生えているギアチェンジ用のパドルという、走りに重要な機能をもつ部分はオレンジ。シートのステッチもオレンジ。

走りの印象は期待通り、猛烈なパワーを感じさせた。ランボルギーニのクラシックカー部門「ポロ・ストリコ」が入念に手を入れただけあって、エンジンはよどみなく回る。

いや、上のほうの回転まで回すと、低いギアのままあっという間に時速150kmを超え、その上を勢いよく目指す。ムルシエラゴのようなスーパースポーツに乗るのに必要なものは、厚い財布と自制心という言葉を思い出した。

ランボルギーニ ムルシエラゴ スパイダー リア
クーペとしてデザインされたムルシエラゴをみごとにスパイダーに“変身”させている。

どこまでも加速していきそうなパワー感だが、一方で、低回転域でのトルクが太く、軽く踏んだけで、思いのままに加速する。ゆっくり走るときも速度コントロールがしやすい。

ステアリングホイールのパワーアシストもしっかり効いていて、昔の大出力スポーツカーのように、うっかりするとタイトコーナーで操舵が遅れて外側に膨らむようなこともなかった。 

ランボルギーニ ムルシエラゴ スパイダー
オレンジの挿し色が効果的なボディのカラースキームも特徴的。

私はこのモデルに、以前にも乗ったことがある。でも乗るたびに強烈なドライブ体験が、印象を上書きしてくれる。そこがすごい。

速度を上げていくと、リアウイング(ウイング=フェンダー)スポイラーなどとも呼ばれる、キャビン背後のクォーターパネル内蔵のスポイラーが電動で展開する。

後輪が浮かないようダウンフォースを生むのが、蝶が翅(はね)を展開するように作動するリアウイングスポイラーの役目だろう。

ランボルギーニ ムルシエラゴ スパイダー
写真はLP650-4ではないが速度が上がると左右のクォーターパネルからスポイラーが展開する機能は共通。

後ろからの眺めでは、キャビン背後の12気筒エンジンのヘッドも見えるし、超高速ジェット機の後退翼を思わせるスポイラーが拡がるしと、視覚的な効果もばつぐんだ。

「クルマのデザインはシトロエンDS(1955年)で頂点を極めた」とかつて語ってくれたのは、デザイナーのワルター・デ・シルバだった。

ランボルギーニも属しているフォルクスワーゲングループのデザイン統括の立場に、2007年から15年まで就いていた人だ。先述のドンカーヴォルケの上司だった時代もある。

もちろん、自動車デザイナーの審美観とは別に、衝突安全性など外的要件が出てきて、頂点と思ったデザインがあっても、長いあいだ続けるわけにはいかないのが現状だ。

それにアーティストという職業がなくならないように、世の審美観は変化する。

ランボルギーニ ムルシエラゴ スパイダー
LP650-4ロードスターに乗ったのは、26年5月の「ランボルギーニ・アレーナ2026」なので、周囲は新旧ランボルギーニ車。

ムルシエラゴLP650-4ロードスターを含めて、ランボルギーニのデザインを見ていると、デザインのパワーの継続性を感じさせるのだ。

Lamborghini Murcielago LP650-4 Roadster

全長×全幅×全高:4610×2057×1135mm
ホイールベース:2664mm
車重:1690kg
6496cc V12 ミドシップ 全輪駆動
最高出力:650ps(478kW)
最大トルク:660Nm
乗車定員:2名
最高速:330kph
www.lamborghini.com/jp-en

小川フミオ

モータージャーナリスト

自動車を中心に活躍するジャーナリスト/ライター。自動車誌やグルメ誌の編集長を務めた後、フリーランスとして活動。新車の試乗記をはじめ、グルメ、ホテル、人物インタビューなど、多岐にわたるジャンルの記事を独自の視点で執筆し、雑誌やウェブメディアを中心に寄稿している。

小川フミオ

モータージャーナリスト

自動車を中心に活躍するジャーナリスト/ライター。自動車誌やグルメ誌の編集長を務めた後、フリーランスとして活動。新車の試乗記をはじめ、グルメ、ホテル、人物インタビューなど、多岐にわたるジャンルの記事を独自の視点で執筆し、雑誌やウェブメディアを中心に寄稿している。