クルマのなかで最もハッとさせられるデザインとはなんだろう。それは「プロトタイプ」かもしれない。自動車メーカーは時として、自動車ショーなどで、プロトタイプ、つまり試作を一般人の私たちに公開することがある。

プロトタイプを見せる目的はいくつかある。ひとつは、その先に発表予定の新車が受け入れてもらえるかの”さぐり針”。この目的のために、新車のデザインが決定してからプロトタイプとして発表する場合がある。
もうひとつの目的は、新車開発の方針決定のためのもの。メーカーに多少の迷いがある場合、プロトタイプの評判をパラメターとして活用する。

おもしろかったのは日産自動車の「Be-1」だ。小型車「マーチ」のモデルチェンジが遅れたため、「つなぎ」のショーカーとしてつくったところ、大評判で量産化することになった。ただし例外。
新車の開発はもっと慎重だ。方向性が決まると、パワートレインやシャシーなど使うパーツも固定される。内外装ともに素材メーカーからの提案もデザイナーのパレットに載せられる。

同時に、ユーザーターゲットが策定される。そこから、新車のプロジェクトは進む。
過去のマーケティングデータ、サンプルユーザーを呼んで現在のモデルの評価と未来のモデルへの期待など聞くクリニック、コンサルティング会社の意見なども聞く。
データや外部の声に比重を置きすぎると、つまらないデザインになったりする。

「名車」と長く評価されるモデルは、(おそらく)あまりマーケティングデータに頼らないでつくられている。
たとえば、フィアット「ヌオーバ500」(1957年)、フェラーリ「365GT4デイトナ」(68年)や同「206GTディーノ」(67年)、ジャガー「Eタイプ」(61年)、アストンマーティン「DB4GTザガート」(60年)、「ランドローバー」(47年)、ポルシェ「911」(63年)、それにシトロエン「DS」(55年)や同「SM」(70年)……枚挙にいとまがない。
90年代になって自動車産業がグローバル化し、ひとつのモデルで多くの市場をカバーする方針が打ち出されると、メーカーは慎重になる。
「一台コケたら企業の浮沈にかかわる」などとも言われるようになったのだ。

おもしろいのは、そこで保守的なデザインを選択するメーカーもある一方、あえて勝負に出るメーカーがあることだ。
昨今のBMWは好例。万人が納得する審美性をあえて避けているきらいがある。好きか嫌い、意見がわかれるデザインこそ、プレミアムブランドにふさわしい、と考えているのだろう。

そこが私(たち)が自動車デザインの魅力にとりつかれる理由だと思う。
かつてはピニンファリーナ一択だったフェラーリだが、12年の「F12ベルリネッタ」を最後に、社内のチェントロスティーレ(デザインセンター)がデザインを担当することになった。
実際は、おおっぴらにされてはいないが、外部のデザインスタジオが各社に協力しているケースは多い。
本社スタジオ数チーム、(メーカー自身の)海外スタジオ、社外スタジオ、フリーのデザイナーが、デザインを決定する社内コンペに参加していたりする。

その成果は、プロトタイプのかたちで、私たちに(うれしい)驚きをもたらしてくれたりする。
私たちは、プロトタイプと、そのあと実車との間にあるギャップに一喜一憂してきたのも事実。プロトタイプと新車、自動車メーカーは私たちを二度楽しませてくれるのだ。
MINI × デウス・エクス・マキナ


シトロエン AMI


トヨタ RAV4


ホンダ エレメント


ポルシェ パナメーラ



