リアルかつ透明感ある音で、感動を伝える名スピーカー「ELAC ELEGANT BS 312.2」【麻倉怜士が選ぶ今月の家電】

  • 文:麻倉怜士
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〈スピーカー〉
ELAC ELEGANT BS 312.2(エラック エレガント BS 312.2)

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メタルメッシュグリルや、ブラックとグレーの2色から選べるデザイングリルも用意されている。音質を追求したい人には、フロントグリルなしがお薦めだ。¥385,000

ドイツの名門、エラックの最新コンパクトスピーカー「エレガント BS 311.2」は最近、私を最も感動させたスピーカーだ。高さ208㎜×幅123㎜×奥行282㎜という、6.5㎜厚のアルミ押し出し材の小さなキャビネットは高級感にあふれ、確固とした存在感を持つ。

なにより音が素晴らしい。紙とアルミの複合振動板のウーハーと、JET6ツイーターによる2ウェイ・バスレフから奏でられる音は響きが美しく、豊かな潤い。JET6ツイーターはジャバラ型の折り畳んだ薄膜フィルムを横方向に伸縮させ、空気を圧縮・放出させて発音する。広帯域でひずみの少ない音は美質だ。「6」とは、その元祖、1990年代に抜群の音質で高い評価を得た初代スピーカーから数えて6代目を表す。JET5から約10年ぶりのリニューアルとなったJET6は、振動板の畳み幅を複雑に組み合わせ、質量分布を変化させた。共振と歪みの低減、高域の直線性の改善に著効したという。

確かにワイドレンジかつ透明感のある音だ。小さなユニットだから反応が素早く、また点音源に近いから、音像定位が正確だ。情家みえが歌う「チーク・トゥ・チーク」(UAレコード)では空間感がリアル。音場が透明で、空気が澄んでいる様子がありありと伝わってくる。アコースティック・ベースのピチカートはキレが尖鋭。ボーカルは、輪郭の屹立感と中味の凝縮感が高い。ボーカル、ベース、ピアノという音像要素が強固に存在し、互いに密度の高いアンサンブルを成している。ソロピアノはタッチの強靱さと、そこにこもる感情の発露が印象的。組み合わせるアンプが高性能であればあるほど、感動的な音を聴かせてくれる名スピーカーだ。

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オプションとして、設置場所の選択肢が広がるスピーカー・スタンドも。高さ調整機能付きで、フット部の床設置面はスパイクとラバーのどちらかを選択することが可能。

麻倉怜士

デジタルメディア評論家。デジタルシーン全般の動向を常に見据える。著書に『高音質保証! 麻倉式PCオーディオ』(アスキー新書)、『パナソニックの3D大戦略』(日経BP社)などがある。

問い合わせ先/ユキム
TEL:03-5743-6202

※この記事はPen 2025年5月号より再編集した記事です。